光魔法の使い方
また、1つ歳をとりました。8歳になっています。
日課のお祈りと治療見学をしたあとは、今日はフィナのところにきている。
フィナはプヨンがいても何をするでもなく、魔法の練習などをだまって見ていることが多い。最近は少なくとも言葉が通じないということはなくなっていた。多少の雑談とかもできる。
フィナは苗木だと聞いていたが、この数年であまり成長しているようには見えなかった。まぁ、でかい木だと、そんなみるみる成長することはないかもしれないが。
さらに、人ではないから意識してものを食べることはない。少なくとも食べているのを見たことはない。人の姿をしているから食べられるのかもしれないが、ふつうに考えると消化できるのかは疑問だ。
水はこのあたりには豊富にあるので、水を飲んで太陽をあびていればいいようで、生き物としては自分たちの視点では理解できないことも多かった。
旧世界でも植物はいわゆる光合成ができていたが、どうやらここも同じであるようだ。光を利用して、水から酸素を作り出す、そして二酸化炭素を分解して炭素系の物質を作る2段階の反応をさせることが、食事になるようだった。
「フィナも魔法って使えるのかい?」
フィナは見た目は人として振舞っているけど中身は違うこともあって、魔法というものがどう使えるのか気になった。
「それはねー、不思議に思うかもしれないけど、使えるんだよ」
「どんなことができるんだい?」
「まぁ、何でも作れるわけじゃないけど、太陽の光があれば、プヨンがいう酸素は作れるよ。木の実のような食べるものでも、自分たちがもともと作っている作物は多少時間がかかるけどできるかな。まぁ、魔法というよりは、ふつうに食事してるようなものだけどね」
そういうと指先に何やら赤いものを作り出す。時々でてくるおやつがわりの甘い木の実だ。
「あとは人が人を治せる人がいるように、怪我したところを直したりはできるよ。ただ人を治せるかはためしたことないかな。毒とかも全部じゃないけど、特定の毒を消す草があるように、特定の毒を消す魔法ならできると思うよ。なんでも、万能ってのは無理だし、ある程度、何かくらいはわからないと厳しいかも」
このあたりは植物の通常の体の機能といえるから、魔法じゃないかもしれないけど、それを意識的に加速したりできるようだ。
「もちろん、水をだしたり、水を操ったりもできるよ。あと、土もね。でも、火は嫌い」
「なるほど。でも、土?土って何ができるん?」
「土を動かしたり、盛り上げたりとか?あんまりやったことないけど、こんな感じだよ」
フィナが指さしたところの土が、うねうねと波打っている。小さな壁を作ったりもしてくれた。
「おぉ。どうなっているんだ」
(これは、まさにイメージが現象になっているってことなのか。ものを変化させているのとは別だよね。俺にはイメージできん。他の方法で土を動かすことはできるけど、土そのものが動いているのか?)
「さぁ?私にもよくわかんないよ」
「そ・・・そうか。まぁ、いいんじゃないの?」
それ以上深く考えるのは、やめておいた。
「あ、あと、光もね。もともと、太陽の光を集めることもできるんだけど、ある程度作ったりもできるよ。こんなふうに」
そう言うと、フィナは指先を光らせてくれた。さらに、その明るさを変化させる。
(なるほど、こんなこともできるんだな。もともと、光もマジノ粒子も重さがないから似たようなものだろうし、もしかしたら、変換できるのかもと思っていたが、やっぱりできるのか)
「フィナ、ちょっと見ててくれる?」
「え、うん、いいよ」
自分も試してみたくなったが、やっぱり見ててくれないと不安なのもあって聞いてみた。
ためしにフィナのやったことを自分なりにイメージし、マジノ粒子を指先あたりで光子に変換すると意識する。
すると自分の指先でもぼーっと白く光りだした。意識し続ける間は光が出続け、やめると光も止る。けっこう思ったようにできた気がする。
「お、おぉ、できた。白い光が出てくるんだな」
「へー、プヨンもできるんだね。一緒だねー」
フィナも純粋に喜んでくれる。
もともとマジノ粒子が物質のもとになるとわかっていたし、電子や光子にも近いと思っていた。
そのせいか思った以上に簡単だ。
多少試してみた感じではたいして疲れもなく、光らせているだけなら1時間や2時間は大丈夫だろう。
「ちょっと違うやり方でやってみていい?」
他にも光を出す方法を思いついて、試してみたくなる。
「え、他?別にいいんじゃないの?ダメな理由とかないよ」
そうだよねと思いつつ、いいよと言われたので試してみる。
単純に光そのものを作るのではなく、空気中の原子にエネルギーを与えて電子を励起させるイメージをする。その状態から光が取り出せないか試してみた。
すると今度は指先が青と赤がまざったのか赤紫のような色合いになった。
窒素あたりをうまく使って取り出せたようだ。
「お、こんな光の出し方もできるんだな・・・・これは勉強になるなぁ」
「色がついてる光なの?なんか、1人で納得しないでよ」
1人で言って1人で納得する。理解できないフィナがちょっとぷくっとしているが、続けて、
「じゃぁ、あとは、光の出す位置を移動させたりもできるんだな?」
そう言いながら、光の出す位置を指先から空中に移動させ、そのまま移動させてみる。光の軌跡が空中を移動していく。火魔法を移動させるのとそんなに変わらなかった。
「プ、プヨンも、すごいね。いろいろできるね」
フィナがほめてくれる。自分も思った以上に思い通りに動かすことができた。
(光がこんなに自由に出せるなら、他の電磁波とかも自由にだせそうな気がするな。今日は収穫が多かったなぁ)
その後しばらく光遊びをしていると、ふと気になった。
「そういえば、フィナはこのあたりから、どこか他のところに行ったことってあるの?」
「・・・ううん、ないよ。この町のまわりがせいぜい」
「そうなんだ。どっか行ってみたいとかあるの?そもそも、行けるんだっけ?」
「うん、すごい行ってみたい。けど、1人だと、ちょっと怖くて」
(それは、まぁ、そうか。言葉も不自由で1人だったら無理があるよね。どうやっていくんだろう本体とは別れていく?)
実際に行くとしたらどうするんだろうと悩む。
「ちょっと待ってね」
そういうとフィナは何やらうずくまりじっとしている。しばらくたつと、
「もういいよ。これで、歩けるよ」
そう言ってきた。特に外見は変わったように見えなかったけど、もとの木のあったところを見ると大きな穴が開いている。
(なるほど、木の本体も含めて、人化したってところなのかな?)
「じゃあ、歩き回れるの?ごはんとかは?」
「歩き回れるよ。ごはんってのは、人の食べ物ってこと?たぶん食べられると思うよ。別に食べなくてもいいし、食べても分解できるって感じ?」
「へー、フィナも食べることができるのか?じゃぁ、今度町中につれていってあげるね」
そういうと、フィナは目を輝かせて、
「えっ、ほんと?絶対だよ。約束だよ」
「いいよー、でも、いい子にしててね。いろいろ面倒なこともありそうだし」
「わかったー。やった」
すごいうれしそうにしていた。
「じゃぁ、今日は、このくらいでかえるー。今度一緒にどこかにいこう。またね」
「ほんと?楽しみにしてる。またねー」
あとから知ることになるが、フィナが歩き回るのはとてつもなく大変らしい。重さ的に。
そういうとフィナはもとの姿に戻り、自分も町に戻ることにした。




