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魔法の使い方教えます  作者: のろろん
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防御魔法の使い方


 勝手に再戦を誓うサラリスと別れた後は、プヨンは1人でブラブラ散策していた。


 本来の目的であるメサル護衛をしようかとも思ったが、メサルからはあまり構わなくてよいと言われていた。護衛と言いつつ、あまり拘束するつもりはないようだ。


 そもそもどこに行くかも聞いていないが、礼拝堂に行くようなことも言っていたので、邪魔をしないで適当に過ごす。


 護衛という名目ではあったが、校内にいる限りは、メサルやその関係者の認識では護衛はいらないとなっていた。


「あぁ、校内にいるときは、学校側の防衛機能があるらしいから、護衛といってもあんまり気にしなくていいよ。それにほんとに護衛をメインにさせるよりは、俺の研究対象に近いからな」

「学校側に?そんなものがあるのか。研究対象ってなんだそれ」


 メサルを護衛するとはいっても何から護衛すればいいのか詳しくは教えてもらえていない。

 

 ただ、メサルと以前そんな会話をしたことを覚えている。校内にいること自体が安全が確保されているとは聞いていた。


 サラリスが出られないということは、石像のようなものが他にもあるのだろう。

 入れなくすることもできるはずで、どういうことかわかってきた気がする。


 学校が外部からの侵入者をある程度排除することができるのは理解できた。



 サラリスの件で動いてお腹が減ったので、おやつがわりに軽食を摘む。


「ヒーティットアップ」


 超音波の応用で、周波数を高くしてマイクロ波にする。磁気が漏れないようにうまく工夫しながら、冷えた焼き魚と唐揚げを温めていた。小型の電子レンジのようなものだ。


 一般の生徒はほとんど火で温めるだけだったが、中には高温の水蒸気で蒸し焼きにしたり他の方法を使うものもいた。


「あーなんかいい匂いがする。いただき」


 ユコナに最後の一切れを奪われてしまった。食べるだけ食べた後、わざとらしく一礼をして切り出してくる。


「これはこれは、王子二ベロ様よりも高名で、偉大なる遅刻者の称号をお持ちのプヨン様ですね」

「順番が逆やろ。挨拶してから摘まむのでは?」

「まぁ、いいじゃないの? ずっと楽しみにしてたの」


 よほどプヨンの失敗談を聞きたかったのだろう。うずうずしているユコナがおかしな言い回しで話しかけてきた。見るからに嬉しそうに遅刻の経緯を聞いてくるので、正直に教えてやった。



「じゃあ結局メサルさんと同じで、メサルさんの妹に騙されてしまったのね。へたれすぎね」


「うん。2人とも根が素直だからね。闇の世界を支配する邪悪なものにやられてしまったよ。僕は完全な被害者だよ。今度礼拝堂に行ったら、メサルは妹の悪行を報告すると言っていた」


「ふふふ、しかし世間はそうはとらないわよ。目をつけられたプヨンが今後をどう乗り切るか楽しみだわ。お互い目立たずに頑張ろう」


「なんだそれ。なんか目立つようなことをしたのかい? やはり信じられるのは己だけだ」


 この前からも気になっていたが、どうやら最近のユコナは、あまり目立たずに生きるようにしているらしい。

 サラリスが王子に招待された頃から特にそう感じる。


「なぜに目立たずに生きるの?」

「ほら、私って奥ゆかしいから。一人で頑張る子より、頼ってくれる子のほうが守りたくなるでしょ。プヨンもメサルさんより目立っちゃダメよ。普段目立たないからこそ、警戒されずに護衛ができるのよ。鷹は爪をかくすべきなのよ」


(まだまだ、プリティッシュ作戦は継続中なのよ。気を抜いちゃダメだわ)


 ユコナは気もお腹も引き締めることを忘れない。


 一方でプヨンもユコナの言う事は一理あるかも知れないと思っていた。


 もとから目立つ気はさらさらなかったが、すでに遅刻の件で十分目立っているはずだ。

 これ以上悪目立ちしてもメリットはない。


 それにさっきのサラリスの脱出作戦もそうだが、いかに上手にサポートするかのほうが性格的にあっている気がする。何より面白そうだった。


 しばらくはユコナの言うようにしようかと大人しく従うことにしておいた。


 そのあとは、お互いの学校手続きや今後のカリキュラム、そして現場実習に派遣された高学年の噂話などをした。


 現場実習は状況次第では実戦の可能性もある。


 本来は遊びではないはずだが、みんながいるからか適度な緊張感のある修学旅行のようで、悲壮さや深刻さは見られなかったらしい。

 

 それでも全員が無傷の保証はないし、いくら後方担当とはいえ、きっと一部は大きな怪我をすることになるのだろうが。



 そのあとも学校の話題が続く。


 ユコナが言うには、初年度は基礎回復系が必修らしいので、ユコナは主に水系と回復中級を中心にカリキュラムを組んだそうだ。

 そして何を思ったのか、授業以外に対する意気込みを語りだした。


「私のとりあえずの目的は学校裏山の探検ね?」

「た、探検?」


 授業に対する抱負かと思えば、また突拍子もないことを言い出した。見当違いのことを言うように思うが、なぜにマジメに頑張ろうとしないのだろう。

 学校来て早々、サラリスもユコナも学校外に興味を持つのだろうかとプヨンは不思議で仕方なかった。


「新入生はしばらくは週末含めて学校外に外出できないんだけど、裏の山側に行く分には制限がないらしいわ。前に帰りに通ったの覚えてる? 例の森側も入るのよ。今度はフィナさん抜きで突破するわよ」


 先日フィナに頼まれて荷物運びをした時は、フィナがまわりに危険な生き物が寄ってこないよう、ずっと動物避けの音を鳴らしていたと聞いた。


 おかげで危険な獣などにもほぼ出くわさず、拍子抜けするくらいあっさりと通り抜けられた。


 その分面白くもなかったが、それでも遠目に空飛ぶ小鳥に火を吐く蛇を見たり、小動物を捕食しようとする植物などを見ることができた。


 また、そこに突撃するつもりらしい。


 普通ならあれを見たら近寄らないのがまっとうな生徒だろうが、ユコナは逆に興味を持ったようだった。


「いいね。でも目立たないように生きるんだろ? まぁ、俺ももっと奥の山の方にも行ってみたいのはわかるけれども」


「やっぱりプヨンも行きたいのね。何があるのか、まずは情報収集よ。もちろん目立たないようにこっそりだからね」


「わかった」


「じゃあ、明日は朝から最初の講座『防御術』を頑張りましょう。ちゃんと必要な魔力を貯めておきましょう。実地が伴う授業は怪我することも多いらしいわよ」

 

 ユコナはそういうとよくわからない曲を口ずさみながら立ち去ってしまった。


 教官にも言われたが、受け身が取れないと実践などできるはずがない。だから当面の授業は防御系が続くらしい。


 どんな感じになるのか、とても楽しみだった。


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