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魔法の使い方教えます  作者: のろろん
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学校生活の始め方 7


 ミハイルが戻った時には、すでに何があったか説明が終わっていた。


 アデルは顔見知りの隊商の取りまとめ役に、起こった事実のみたんたんと説明していた。


 実際威嚇行為らしきものはあったが、戦闘らしい戦闘はない。

 実害がない以上、また罪もないと言える。


 相手の出方にもよるが、規定通りに警備役人には引き渡すことになったようだ。そのあとは本人のこれまでの行い次第だ。


 札付きのお尋ね者なら当然身柄を拘束されるだろうが、逆に前科がなかったり一方的な加害でない場合などは、説明をきちんとすればお咎めなしで放免されることも多い。


 確かに今回は明確な害意は示していなかったから、穏便にすみそうな気もした。本人の怪我だけで、それも自爆に近い。


 プヨンもメサルに説明をする。


 アデル指揮のもとでちょっとしたトラブルを解決したが、メサルの見える範囲では巻き込まれたものもおらず、『そうか』ですんでしまった。


 面白そうなイベントに興味を持ったレアが、参加できなくてぐずった程度だ。


「私なら、大活躍で全員捕まえたのに」


 鼻息荒くいうレアが、メサルにたしなめられていた。



 隊商の休憩も終わり、出発の時間となる。隊列は再び進み出した。


 その後は何事もなく予定より少し遅くなったが、無事に目的の町に着いた。


「プヨン、お疲れだったな。また、頼むわ」


 町に到着すると、型通りにアデルがねぎらってくれた。


 アデルたちは、このあと別の隊商に同行する予定らしい。

 味方に対してではなかったが、とりあえず回復の役目も果たせ仕事はした気になれた。

 久しぶりにアデルに回復魔法も披露でき、プヨンもちょっと満足感があった。


「じゃあ俺はこいつを警備に引き渡してくるからな。気を付けていけよ」


 大男に殴られて意識を失った女性も、なんとか町の手前で意識を回復していた。


 ただ、一応の治療はしているが、完全に治すところまではしていないから痛みは感じているはずだ。アデルがロックした魔封じの指輪の効果で、大幅に魔法効果が落ちているから自力で治すことも難しいだろう。

 

 それに単純な組織コピーの治療魔法は、受ける者の体力や体の一部を使いながら傷を回復させるだけだ。

 思った以上に体力を消耗しているようで、歩けてはいるがふらふらしている。



 最初は魔法の訓練をしていただけだとごねていたらしいが、街についてからは特に抵抗するそぶりもみせず、大人しくアデルに連れて行かれた。



 一方でメサルもレアがついてこれるのはここまでと諭していた。


 レアは名目上、町の視察という形でここまでついてきている。

 当然、視察が終わったあとはレアはもとの町に戻らないといけない。そのためこの町のネタノ聖教の教会担当者に手配をお願いし、数日後にもとの町に帰ることになっていた。


 しばらくメサルとかレアは2人きりで話し込んでいる。

 最後の別れを惜しむというよりは、ひたすらメサルが説得しているかのようだったが。それもようやく終わりがきたようだ。


「わかりました。お兄様にご迷惑をおかけできません。レアは戻ります」

「わ、わかってくれたか」


 もともとレアは帰るしか選択肢はないのだが、ようやくレアがそれを受け入れて引き下がる。

 メサルは疲れていたが、ほっとした顔を見せた。


「それでは最後にお願いがあります。1つだけ、お兄様からいただきたいものがあります」

「お?おぉ、いいぞ。何がほしいのだ」


 なんだろう。何かメサルを思い出せるものでも欲しいのだろうか?そう思いながらプヨンが見守っていると、


「入学の案内の紙を見せていただけませんか?」

「紙? 今さらそんなものどうするのだ? 別にあるから見せてはやるが」


 プヨンも意図がわからず、メサルは案内の紙を取り出しレアに見せてやるのを見守る。


 レアはメサルから案内書を受け取った。


 案内書にある入学の日付が橙の5日、明日と書かれていることをあらためて確認する。


 すると、レアは、その日付のところを指でなぞりだした。


カリカリ、ペリッ


「げっ。おい、レア・・・」


 メサルの慌てぶりを見て、プヨンも何事と覗き込む。紙には4日、すなわち今日の日付が書かれていた。


「お、おい。これって、今日じゃないか。どうなっているんだ」

「ごめんなさい。お兄様には少しでも一緒にいてほしくて。この紙は回収します。きっと戻ってきてくださいね」

「ま、待てっ」


 そういうとレアはメサルの腕を払いのけ、全力で走り去ってしまった。


 それを見守るプヨン、そしてメサルも状況が理解できず、茫然としていた。



 そのあとは、何があったか覚えていない。


 紙の日付を再度確認し、今日が本当に入学の日だったことを確認したあとは、メサルとプヨンはひたすら走り回っていた気がする。


 いろいろと連絡を取ることに時間もかかり、なんとかその日のうちに学校の寮にたどり着いたときはすでに深夜だった。


 教師陣には軽くお小言を言われたが、今日はとりあえず寝ろと言われ少し気が楽になった。


 もともとメサルとプヨンは同部屋だったこともあり、今日は寝て体力を回復し明日みっちりお説教があるらしい。


幸先のいい学校スタートがはじまった。


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