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魔法の使い方教えます  作者: のろろん
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学校生活の始め方 3

 プヨンは荷物を取りに部屋に戻っていた。


 これで部屋があらかた片付いたはずだ。

 

 もともと合同の大部屋で生活していたから、個人管理の荷物もたいしてない。すっかりなくなったはずだが、ふと見ると窓際に植木鉢が置いてあった。


「なんだこれ?こんなのあったっけ」


 プヨンがそう思ってよく見ると、植木鉢のそばにメッセージカードが置いてある。


「プヨン宛の接木でーす。持っていってね。エサ(水)はいらないけど、日陰者がいいな。フィナ」

「おぉぉ」


 うっかり見落として出て行ったら、きっと枯れていただろう。優し目のフィナとはいえ、恐怖や怒りなどの言葉の意味を実体験付きで学ぶところだった。


 いつの間に置いて行ったのかは知らないが、よく見ると小さい木に接木がされている。

 

 どう使うつもりなのかわからないが、フィナがそばに置いて欲しいらしい。


 カードの意味を察すると、直射日光はきついから日陰において欲しいということだろうか。それとも、見つからないようにしろと言うことか。


(フィナも日焼けするのかな?)


 持っていく理由ではなく、生物的な興味として日焼けの方が気になった。

 今まで考えたことがなかったが疑問に思う。少し緑がかった白い肌しか見ていないから、茶色く日焼けしたフィナは想像できなかった。


 考えてもわからないので次回聞くことにして、持っていくことにした。まあそんなに邪魔にもならないただの鉢植えだ。

 もちろん持って行かないという選択肢はないのだが。


 

 

 皆に挨拶して教会を出た後、プヨンはメサルとの待ち合わせ場所に着いた。すでにメサルとレアが待っている。

 2人とも歩きやすい服装になっていて、徒歩でいくつもりのようだ。


「ここからは訓練も兼ねて、徒歩移動にすることにしたんだ。だから町間隊商の警護を引き受けたんだ。簡単な護衛と言われたよ」


 プヨンに相談もなく仕事を引き受けたのは腑に落ちないが、聞くとメサルは単独行動ができるようになってさっそく自由を満喫しているらしい。

 

 昨日レスル受付のヒルマが薦めてきたらしく、簡単な依頼を1度こなしておいたらどうかとの誘いに即応したようだ。


「ふふふ、俺はレスルの依頼受ける側を1度やってみたかったんだ。俺は自由だ」

「お兄様頑張りましょう。お金の問題ではありません。まずは経験です」


 メサルはご機嫌で、レアもワクワクしているのがわかる。2人とも真新しいレスルの登録証を見せてくれた。

 2人とも回復はAAが、それ以外にもストレージなどいくつかAがついている。ちゃんと試験も受けてきたようだ。


(なるほど。護衛任務ならまわりに護衛がいるから、なんかあっても対応できるってことか。護衛してるつもりが護衛されているとはな)


 ヒルマにうまく使われたようだ。


 この辺りは治安がいい。


 盗賊がいないというわけではないが、圧倒的に群狼や大型動物、サンダーバードのような危険生物に出くわすほうが多い。


 また、道の脇にそれた時などに弾丸ウサギに出くわすなど、怪我のリスクは常にある。


 そういう意味では、守備隊の必要性は高くないが回復役はいるに越したことはなかった。


 地位もあるメサルだからこれまで自由でなかった気持ちはわかるから、ヒルマが配慮したのだろう。こっそり護衛が手配されていて感心する。相手に自分が護衛されていることを感じさせない護衛方法だった。


 メサルは今回の護衛任務に裏の目的があるとは思っていないはずだ。


「普通なら束縛を嫌がるはずがな」


 ちょっと滑稽で笑えるが、自分もはめられないように気をつけようと思った。


 それでも護衛役は護衛役だ。


 本格的な戦闘になった場合は、全員無傷とはならないこともある。いくら治療役とはいえ、安全が保障されておらず、思い切った方法でもあった。

 プヨンはメサルが猪突しないよう、目を離さないようにしようと思った。



 プヨンたちは隊商の待ち合わせ場所に移動した。すでに準備ができているようだ。


「こらーお前が引き受けた回復役かーおっそいじゃねーかー」


ドッゴーン


「いってー」


 キョロキョロしていたプヨンは、突然、目の前に立った男に腹を殴られた。しかも力いっぱいだ。


 プヨンも多少は痛みを感じたが、いつもの癖で皮膚の炭素分を硬質化していたため、そこを全力で殴った相手も相当に痛そうだ。

 聞き覚えのある声、この声はアデルに違いなかった。あらためて顔を見ると久しぶりに見るアデルがいた。


 最近はあまり話すこともなくなったが、小さい頃はよく簡単な雑用について行ったり、剣術を教えてもらったりした。


「くっそ。ゆ、油断した。防具を着込んでいるとはな」

「人は変わっていくんだよ」


 アデルの不意うちを軽やかにかわせ、満足げにうなずくプヨン。それを見て、手の皮の剥けたところをさすりながら、アデルが引きつった笑顔でいる。ただ、皮膚の硬質化を鎧と勘違いしてしまっただけで、それに腹を立てているようではなかった。


「プヨン、知り合いなのかい?」


 びっくりしたメサルが聞いてくるので、お互いを紹介した。

 アデルに久しぶりに会えてプヨンも嬉しかった。知り合いがいると、気分的にも楽になる。


「最近、俺は近辺の隊商護衛をしているんだ。たいてい、こことキレイマスを往復している。まあ危険はまずないんだけどな、需要が多いから仕事が安定してるんだ」

「最近あんまり見ないと思ったら。害獣や盗賊退治はあまりやってないんだね」

「あぁ。仕事数が多くないし、やっぱり怪我が付き物だからな。もう腕試しもほどほどにしようと思ってな」


 アデルは簡単に近況を教えてくれ、そのあと護衛仲間の2人も紹介してくれた。


 ミハイルは男性の剣士見習いで、プヨンと見た目が同い年くらいに見える。

 ここ最近はアデルに弟子入りしているらしい。もう1人はクーベンと名乗った。彼女は、ツムラー、いわゆる自然薬の調合師だそうだ。


 魔法は怪我を治すことは得意だが、病気や毒などはあまり効果がないことが多い。プヨンの治療方法ではまわりの組織をコピー修復するため、全身にまわる毒のような場合は悪いところだけ取り除くことが苦手だからだ。


 さすがアデル。こういう多人数で長距離を移動する場合、誰かしら健康を損なうことも多い。薬剤に長けたものがいるのは理想的だった。


 馬車は荷物運搬用の幌馬車が5台、商人も護衛担当も適当にばらけて乗る。


 レアはメサルと乗りたがったこともあり、プヨンは顔見知りのアデルと先頭に乗ることにした。



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