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魔法の使い方教えます  作者: のろろん
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学校生活の始め方 2

 メサル一行はレスルに着いた。


 メサルがホイザー他主要役員達に型どおりの挨拶に行って戻ってくると、借りていた小部屋でしばらく話をすることになった。



「メサル達はこのあと、どうするのか決めてるのかい?」

「うん、前日の夜までは、見聞も兼ねて、このあたりをぶらぶるするつもりだよ。レアの希望の視察とやらになっているんだが、まぁ、このくらいはいいかなと思ってな」

「そうなのか。じゃぁ、入学式は、黄の4日だから、2日ほど旅行するんだな」


 黄色は4番目を意味する色だ。プヨンが以前に連絡のあったと記憶している日付を念のため確認すると、


「え?違うだろ。入学式は、5日だよ。3日後だ」

「え?そんなはずは・・・」


 まさか、自分の記憶違いかと思って慌てる。連絡の紙などプヨンはとっくにどこかになくしていたが、メサルはすぐに連絡文を取り出し、プヨンに見せてくれた。


 学校の定型の用紙だ。偽造防止のため、紙には花押が空押しされて凹凸がついているため本物と思われる。


「おいおい、頼むよ」

「い、いや、すまない。あやうく、早く着くところだった」


 レアのバカにするような視線が痛かった。幸い、予定日は一日前ではなく後だ。


「ふ。私が呼び出してあげなければ、大バカとして生きることになったのです。感謝しなさい」


 レアにののしられるなど、ありえない屈辱ではあったが、ここは黙って耐えるしかないプヨンだった。


 とりあえず日程を後ろにずらすことにする。何をしようか考えるが、


「じゃぁ、俺たちと一緒にこないか?」


 メサルが申し出てくる。拒む理由もないが、レアの視線が、キッっときつくなる。


『くるな!』


 言葉には出さないが、レアの意思が明確に伝わってくる。眼光鋭く、くるなオーラも半端ない。レアだから恐怖心は感じないが。


「いや、俺はいいよ。兄妹でのんびりしたほうがいいよ」

「そ、そうですわ。プヨンもたまにはまともなことを言いますね」


 しかし、メサルは意に介した風でもなく、


「まぁ、俺も1人でいろいろ行動することに慣れたい。プヨン、すでに仕事は始まっているのだ。そう言わずに付き合ってくれよ」

「いいけど、どっか用事でもあるの?」


 強引ともいえるメサルの主張だが、レアもしぶしぶ了承し、同行することとなった。


 翌朝移動でそのまま学校と同じ方向にある町、キレイマスまで同行することとなった。

 プヨンは1日勘違いしていたことになるが、もともとその予定を組んでいたから、結果的に問題はない。 

 そう決まると、メサルは別件もあるそうで、今日は解散することにした。


 3人は連れだってレスルの部屋を出ると、なぜか待ち構えていたホイザーが手招きしている。


「すまねぇ、プヨン、ちょっとあそこにいる子を助けるのを手伝ってくれないか。盗賊討伐にでていた回復役の子なんだが、火炎系の魔法で火傷したらしい。軽傷ではあるんだが、耐性が高くてなかなか治せないんだ」


 見ると、部屋の隅でひとりの女性が寝かされていた。どうも、腕から肩口にかけて、火傷をしているようだ。

 服もかなり焦げ、損傷を受けている。中に着ている回復用の服も深紅に染まって、余力がないことを示している。

 付き添いの者達が見守っているが、


「じゃぁ、ここは、わたしがやってみましょう」

「え、メサル様が直々にですか?おい。喜べ。高位司祭のメサル様が直々にしてくださるそうだ」


 ホイザーが女性の仲間たちに説明すると、全員の視線が一斉にメサルに集中した。


 ただ、メサルは簡単にやると言ったが、一般的に魔法の能力が高い子は耐性も高く、他人からの回復も体質的に受け入れにくい。いくら傷が浅くてもなかなか治らない。


 それを知らないメサルではないと思うが、そのわりには、メサルは気軽に引き受けているように見えた。


 準備ができると、メサルは女性の前に立ち、女性の体に向かって手のひらをかざした。

 皮膚の再生であればさして難易度は高くないが、面積が広く火傷も浅くはない。


「お。思ったほど簡単ではないか。耐性が高いだけはある」


 メサルはそう言いながらも、女性に向かって手をかざしつつ、手の位置をいろいろと変えている。


 ふつうは手のひらと傷口は可能な限り近づけ、距離による効果の減衰をさけるが、メサルは何かを試しているのか、わざと手のひらを離しているようだ。


「お、おぉ、傷口全体が一斉になおっていくぞ、すごいな」


 見ていた仲間の男が、目を丸くして実況してくれる。通常は指先のまわりが治っていくが、広範囲を同時に回復させているようだ。遠距離からだからか、浅く広く治っていく。


「ふふふ、プヨン、俺も少しレベルアップしたんだ。やるだろ」

「お、おぉ」


 しかも、自慢する余裕があるようだ。メサルのやり方は珍しく感じた。この方法なら、うまくやれば、2人同時でも治せそうな気がする。

 プヨンは頭の中で、いろいろと試算していた。


「おぉ、やっぱり、このくらいになると、5分近くかかるか・・・ふぅ」


 メサルの予測よりは時間がかかったようだが、立ったままの距離で治療を終えたメサルだった。


 皆の感謝の視線を集めながらも、「いいからいいから。これはメダカだから。神に対するご奉仕ですから」と神に対する奉仕だ、礼など不要と手で遮り、さっさとレスルから立ち去ってしまった。


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