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魔法の使い方教えます  作者: のろろん
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学校生活の始め方

 プヨンは町を出たところで待ち合わせをしていた。


今日はいよいよレスルの仕事の護衛対象、メサルがやってくる。

 別にレスルの待機所で待っていればいいのだが、わざわざ事前に町はずれで待てと連絡がきていた。

 5日ほど前レスルのマールス通信を利用した連絡文が、プヨン宛に届いていたからだ。


 メサルに最後に会ったのは半年以上前だ。ちょくちょくくるのかと思ったが、なかなかそうも行かないらしい。サラリスやユコナとは扱いが違うのか自由がなさそうだった。


 しかし、それ以上に期間があいているように感じていた。


 道の木陰で『ケンネル&タテネル』の遠隔操作の練習をしながらのんびりと待つ。

 まぁ、本気で戦術を練るわけではなく、適当にぶつけあって暇つぶしをしている程度だったけれど。



(しかし、遅いな。連絡された時間から、2時間以上経っているが)


 毎回、仮想敵剣士に対して、完璧に先読みができるプヨン兵なので、そろそろ飽きてきた。全戦全勝だ。


 いったんレスルに戻って何か連絡がきていないか確認しようかと思っていたところ、馬車が2台、こちらに走ってくるのが見えた。


 先頭の徽章付きキャリッジスタイルの馬車を見ると、ネタノ聖教の馬車に間違いないだろう。先日、プヨンが操縦したサスペンションなしのワゴン車に比べて格上の、最上級スタイルの馬車だった。


 やがて、プヨンの前を少し通り過ぎて止まった。


「どうしてこんなところで止めるんだ?」


 中からメサルの声が聞こえたが、扉が勢いよく開き、1人の女の子が顔を出した。


「プヨン、出迎えご苦労です。通り過ぎようかと思いましたが、特別に止まることにしました」

「呼び出したんだから当たり前だろ」


 にこやかな笑顔の奥に隠しようのない殺意を潜ませたレアに、馬車の上からお言葉をいただいた。


 超兄ラブのメサルの妹、レアだ。


 顔を見た瞬間、いろいろされた仕打ちが頭をよぎる。もちろん忘れられないものばかりだ。


「お?プヨン、わざわざこんなところにどうしたんだ?」


 レアの声を聞いて、メサルも顔をだした。


「いや、4日前にレスル宛に連絡して、ここにこいと言っていただろう。ずいぶん遅かったから心配していたけれど」

「え?そうなのか?こっちからは、何もしていないはずだが」


 プヨンはそう言いながらレスルに張り出されていた紙を取り出し、メサルに見せようとしたらそれをレアがひったくる。


「口惜しい、いつも教会のご奉仕で、祝福魔法を使って引き受けた数々の穢れを、今日はすべてこいつに食らわせてやりたい」


 小声で呟くレアの声が聞こえた。


(こいつがわざわざ呼び出したのか)


 まさか個人的に呼び出されるとは思わなかったが、何か一悶着ありそうな、不穏な気配がする。



「では、さっそく。プヨンは、そこに立ちなさい」


 レアはメサルの制止を振り切り、地面に降り立つとそう言った。


 レアが5mほど離れたところを指さし、プヨンは言われたままにそこに立つ。

 すると、レアは何やらぶつぶつと呟きだした。

 

 レアも魔法が使えるのだろう。何をしているのか気になったが黙ってみていると、どうやら地面の水分を絞り出しているようだ。

 たっぷり1分近くかかったが、やがてプヨンの前に小さな水たまりができていた。


「おい、レア、何をしているんだ?」


 不可解なレアの行動だが、何をしようとしているのか、プヨンとメサルが見ていると、


「とりゃ」


バシャン


「うっ、きったね」


 急に水たまりの水がはねた。おそらく、圧縮された空気弾でも打ち込んだのだろう。


 何かすると予測していたが、あまりに程度が低すぎて予想外だった。おかげで、プヨンの下半身に水ハネが飛ぶ。


「ふ。完璧に決まりましたわ。こんなのも避けられないで、何が護衛ですか。今からでも遅くないです。身の程をわきまえて、さっさと辞退してください」

「完璧に悪に染まったようだ。メサル、除霊したほうがいいんじゃないのか?」


 いまさら入学を辞退するはずもなく、ほぼ嫌がらせには違いない。

 しかし、プヨンもレアの扱いは慣れてきていた。めいっぱいののしるくらいでちょうどバランスがとれるようだ。


「こ、この、無礼者」


 いきり立つレアだが、付き添いの者達ですらやれやれという感じで見ている。メサルですらまともにとりなそうとしない。


 プヨンはこんなことのためにわざわざ町はずれに呼び出されたのかと、あきれながらさっさと服を乾燥させる。魔法を使って近くの草地に水を撒く。それに必要な水分は服のまわりからかき集め、結果的に服を乾かすことができた。


「ほら、見てくださいお兄様。これが硫酸弾だったら致命的ですよ。こんなモノでは役に立ちません。絶対ダメです。今からでも人選の見直しをして、私も護衛に加えてください」

「まだ言っているのか。もうそれは十分言い聞かせただろう。すまないな、プヨン。バカでもかわいい妹なのだ」


 レアの本音が出たが、またかという感じでメサルが突き放す。メサルにバカと言われたレアは、ぷーっと膨れっ面をする。


 確かにプヨンが一度は濡れたが、すぐに乾かしたためプヨンの服がすっかり乾いているのを見て、メサルは、


「見てごらん、どこも濡れていないよ。レアの申し出は却下」

「きゃっかー」

「うぅぅ」


 プヨンも声をかぶせて、『却下』をはもる。相乗効果でレアは不貞腐れて馬車にかけ戻っていった。


 レア基準の決闘を華麗にクリアしたが、結局ここに来る必要はなかったようだ。

 脱力したプヨンだったが、せっかく会ったのだからとメサルに誘われたこともあって、今後の予定を確認するため、そのままレスルに同行することにした。



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