表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔法の使い方教えます  作者: のろろん
17/441

放出系魔法の使い方2

 どや顔。まさに、サラリスはどや顔だった。


 プヨンは、サラリスが火の玉を打ち出し誇らしげにしているのを黙って見ていた。


 サラリスを誉め続けたのもあって、サラリスは得意げだった。気をよくしたのか、サラリスがどれだけすごいことをしたのか詳しく説明してくれる。


 とっても長かったサラリスの説明を簡単にまとめると、


 両手を広げることで自分の周囲に存在する魔法エネルギーに意識を集中し、自分に可能な限り広い範囲からかき集める。そして、それに向かって自分のイメージを重ね合わせ現実化させた。


 ということだった。


 すなわち、この場合炎を発生させたということだ。


 プヨンは、もう1人の女の子ユコナの方を見た。さもいつものことのようにサラリスを見ていたが、プヨンの視線に気が付いたユコナは、


「わ・・、私ですか。私は、放射型は苦手です。・・ですが、こういうのなら」


 そう言うと、ユコナはサラリスと同じように両手を広げた後、


「我、命ずる。この手の届く限りの水よ、集まりて凍てつく氷となれ。アイシクル」


 ユコナは氷を出そうとしたようだ。サラリスの時と似ているが、すぐそばに小さい球形の氷があらわれ、それが徐々に大きくなっていく。


 そして、テニスボールくらいの大きさになったところで、ドスッ、と地面に落ちた。ユコナから少し離れたところに落ちた氷の玉は、そのまま土手の坂を転げ落ちていった。


「お、おぉ・・・・。」


 プヨンはこれにも驚いた。


 今まではほとんど生活魔法だったこともあって、人が何か魔法を使ってものを出そうとすると、ほぼ指先などの体のすぐそばに出ていた。

 それが、ユコナはそこそこ距離が離れたところに出している。こうした離れたところでの発現を見るのは初めてだった。

 メイサが治療をしているときも、直接手指をあてたところが反応していたはずだ。


(たしかに、見慣れたものとはちょっと違うなぁ。さすが専門教育)


「ほら。私たち、素質あるのよ。すごいでしょ」


 サラリスは、あらためて優雅に微笑みながら言う。そして、


「あんたはどんなのできるの?みーせーてー」


 興味半分だが、できないでしょーみたいないじわるっぽいのも半分含んでいる。


「そ、そうは、言われても、ちょっと火を出せるくらいしかできないよ」

「別にそれでいいわよー」


(そういうのなら、まぁ、いいか。いつものやつでいいんだよなぁ)


「じゃ、じゃあ、いつもよくやるやつでいいよね」


 そう宣言すると、手のひらを上に向けてバレーボールくらいの火球をだす。そして、そのまま手のひらにだしたままの火球を、数歩歩いた距離のサラリスの前まで持っていってじっくりと見せつけてやった。


「え、え・・・・・」


 サラリスは茫然としながら何かつぶやいているし、ユコナも目を見開いたまま固まっている。しばらくしてサラリスがつぶやいた。


「は、はやい。わ、わけわかんない・・・・」

「わかんないって、何が?」


 火の球を手のひらの上でいじりながら質問する。


「え、えっと。いっぱいわかんないことがあって・・・、わかんない」


 数学とかであるあるのよく聞くセリフをサラリスが言う。もちろん、プヨンも何が言いたいのかわからない。


「そ、そう言われてもなぁ。一緒じゃないの?」


 と返すしかなかった。


「えっと・・・今、何も聞こえなかったのですが、キャ、キャスティングは?」


 ユコナが聞いてきた。それを聞いて、


「そ、そうよ。ギャザリングもなかったじゃない」


 と、サラリスも追加で聞いてきた。聞かれたことはほっておいて、


「なにそれ?聞いたことない、そんな言葉・・・」


 今までにおぼえのない専門用語を耳にして、プヨンは聞き返していた。


「そう言えば、さっきのサラリスは、火の球こんなふうに投げてたよね。こんな感じか?」


 手のひらの上でまわりの二酸化炭素を分解する。分解してできた酸素と炭素を再び過熱、結合させて燃やすが、その位置を徐々に手前から遠くのほうに移していくようなイメージをすると、火の球の位置もそれにあわせて移動していく。

 手のひらの上から徐々に遠くに。ゆっくりゆっくり1mほど移動させたところで、慣れてきたこともあって移動させる速さをあげ、


「えいっ」


 声を出して一気に遠くに移動させた。

 

 火の球は赤い炎をちらつかせながら、さらにスピードをあげて遠くに移動していく。そのまま、まっすぐ、遠くに、遠くに飛んでいく。

 常に意識を集中しているからか燃え尽きることもなく、ゆらめく炎小さくなっていくが、まわりが雨で薄暗いため、光っているのでよく見えている。


 やがて、消えもせず遠くのほうに見えていた林の上を飛び越して見えなくなってしまった。


「なっ・・・・」「えっ・・・・」


 2人は、つぶやいたあと火が飛んで行った方向をずっと見つめている。


「思ったよりはうまくいったな。あんな感じか」

 

 分単位で固まっていたが、プヨンの声でサラリスがようやく動き出した。


「せ・・・、説明して・・・・」

「え? なんだそれ。何を答えたらいいのかわからないよ。おーい無茶だよ」



 サラリスが要点がしぼれないまま話すことを聞くと、魔法を使うときは2つの基本動作があるらしい。


 最初に自分の周りの一定の範囲からエネルギーを少しずつ集めるギャザリングと、その集めたエネルギーで物質に影響をあたえ、形とするために言葉を紡ぐことをキャスティングだ。

 基本的に何か魔法を使うときには、この2つはセットで必ずついてくるそうで、それをしたように見えなかったかららしい。あまりに短時間に見えたので驚いたとのことだった。


「そうなんだ。小声だったんだよ。気にしなくてもいいんじゃないかな」


俺が適当に話を合わせてそう答えると、サラリスは、


「じゃ、じゃあ、あの後に火球を飛ばしたのはおかしくない?どこまで、飛んで行ったのよ。」


 と言ってきた。意味を聞くと、魔法を飛ばした場合は距離に応じて効果が減衰していくのが当たり前で、制御も不安定になっていくらしい。


 数mか、せいぜい10mも飛ばすとかなり威力が落ちるらしく、今のサラリスでは5m程度が限界らしい。実際そのくらいで消えていたし、雨で消えたのかと思っていたがちょっと違うようだった。そのままの意味で考えれば、制御できずに消えてしまったということになる。


 それがプヨンの場合ずっと遠くの林の上を、それもけっこうな速さで飛んでいったように見えていた。キャスティングがなかったこと以上に驚いたらしい。


「年いっしょのくせに、なんであんな遠くまで飛ばせるのよ・・・」


 と、サラリスに睨まれたけれど、そう言われてもなんでかといわれて理由なんて思いつかない。


返事に詰まってしまった。ちょっと考え込んで、適当な言い訳を思いついた。


「じ、実は。か、神様に能力をもらったんだ・・・そんな気がする。嘘じゃないよ」


とってもどもりながら、思わず言ってしまった。


(そ、そういえば、これって嘘ではないのかな。確かに自称女神マジノは魔法を使いやすくしてやるみたいなこと言ってたし)


 プヨンは考えていた。どもりながらもあって、適当感満載となってしまったけれど。


「さすがに、うそっぽいですよ」


 ユコナは笑いながら言ってきた。サラリスは当然といえば当然だけど、怒ってこっちを睨みつけている。

 

「ほんと。その舌、引き抜いて差し上げるわ」

「い、いや、嘘じゃないよ。ほんとだって」

「じゃぁ、だったら、私たちにもその能力ちょうだいよ」


 サラリスにそう言われ反射的に、


「わ、わかったよ。じゃぁ、俺の魔法の能力をわけてあげるよ。ムムム。ユコナは優しそうだから、多めにあげよう」

「クッ、ば、ばかにして!」


 サラリス激怒モードに移行してしまった。

 ユコナは、相変わらず笑っているので釣られて笑ってしまう。


「あ、雨が上がってきたよ。そろそろ戻ろう」

「そうですね。サラリス、戻りましょう」


 ユコナは、空を見上げながらサラリスを促した。


「今日は、大目に見てあげるけど、今度きっちり聞くからね」


 サラリスはユコナと並んで歩きだし、プヨンは2人の後ろを少し距離をあけて歩く。


 他にもいろいろと話をしながら、3人は町に戻っていった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ