表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔法の使い方教えます  作者: のろろん
160/441

鉱物の取り方 3

 プヨンを先頭にして、少し遅れてユコナがついていく。慎重に2つの岩の1つに近づいて行く。


「ユ、ユコナ様、危ないです。お戻りください」


 デポンが慌ててユコナを引き留めようとした。しかし、声掛けしただけだった。本気で止める気はなさそうだ。


(え?それだけ?危ないんじゃないのか?力づくでは止めないのか?)


 デポンは、あわよくば、岩盤のようにうまくやってくれと考えてそうだ。プヨンは笑いそうになりながらも、デポンの意思を酌み取ることにした。


(さっきの話だと、弾き飛ばされるのかぁ。あとは、岩だよなぁ。石が飛んでくるとか?)


 プヨンは、さっきのデポンの説明を思い返しながら、起こりそうなことを予想する。


(とりあえず、万が一後ろに飛ばされそうになったら支えられるよう、自分の背中を支えておこう)


「リフティング」


 ものを持ち上げる魔法を応用し、背中を水平方向に支えられるように準備した。その時、


「ねぇ、プヨン、何か聞こえない?」

「え? 聞こえるって?」


 急に後ろからユコナに話しかけられた。音や声はしないので、どういうことかと問い返そうとすると、


『こちらにくるな』


 声がしたわけではない。突然、頭の中に意識が浮かび上がった。

 一瞬、自分でそう思ったのかと勘違いしたが、あわててユコナを見ると、ユコナもプヨンを見て頷いた。

 

「もう少し行くよ」


 気を取り直して、ユコナにそう言うと、より注意しながら、ゆっくりと近づいていった。


 2歩、3歩、進む。


 予測はしていたことだが、突然、プヨンは、体が軽くなり、浮き上がるように感じ、思わず声が出た。


「あ、あぶなっ」

 

 鉱夫達が弾き飛ばされたと言っていた件だと瞬間で理解した。


 (バターダウン)


 咄嗟のことで、声に出せず心の中で魔法をイメージし、プヨンとユコナの体が浮かないように地面に押さえつけた。


 「うわっ」「ひゃっ」


 しかし、ユコナの安全を優先したから、プヨン自身はおろそかになり、数m後方に飛ばされた。

 風圧ではなく、直接弾き飛ばされたようだ。体勢を整え、なんとか足から着地する。


 ユコナも、同じように飛ばされたのだろう。悲鳴をあげるが、少し後ずさりしただけで、立っていることができていた。


「プ、プヨンさん、身が軽いんですね。大丈夫ですか?飛ばされないように気を付けてくださいよ」

「え?あぁ、大丈夫」


 遠くから、見ていたデポンの声が聞こえ返事をした。

 身が軽いのところで、一瞬、ユコナがびくっとしたようだ。さっきの衝撃では、ユコナはほとんど動かなかったので、寂しそうにデポンを見つめていた。


 気を取り直したユコナに、


「飛ばされないように注意して、もう一度行こうか」


 と聞くと、ユコナが、


「私も、飛ばされそうになったんだけど、どうして、プヨンだけ、飛んだのかしら・・・?」


 と聞いてきた。


「あぁ、飛ばされないように、抑えつけていたんだけど、ユコナを優先したから、自分のが間に合わなくてね。どうして?」

「え? いえ、そうなのね。なんでもないわ。行きましょう」

 

 何か気にしていたものがスッキリしたのか、ユコナの表情は明るくなった。


 再び、ゆっくりと歩き出す。


『こちらにくるな』の意識は頭に浮かび、何度か、体に衝撃を感じたが、今度は十分に身構え、体を支えているためか、わずかに揺れる程度ですんでいた。


 あと、10mをきった。


 そこで、大岩の上に、うっすらと白い煙が立ちのぼっていることに気づいた。さっきまでは、そんなものはなかったはずだ。


 同時に、大岩のすぐそばの地面の石が数個、真っ赤になっていることに気づく。


 「ユコナ、気をつけろ」


 振り返って叫ぶと同時に、真っ赤にとけた石がゆっくりと浮かび上がっていく。

 溶けた石の一部がしずくのようにぽたっと垂れ落ちた。単なる火球と違って、実態のある灼熱の石だ。あれがあたると、溶けた鉄をあびるようなものだろう。 

 しかも、液体状になっているだけに、うかつに盾などでとめても飛び散るだけに思えた。


「プヨン・・・」


 ユコナも気づいたのか、名前を呼ばれただけだが、何を言いたいのかはよくわかった。


(あれがあたると非常にまずい気がする)


 予想通りだが、溶岩弾の1つが動き出し、先頭にいるプヨンに向かって飛んでくる。


「レピュテーション」

 

 プヨンより先にユコナが反応する。おそらく、あらかじめ備えていたのだろう。飛んでくる岩の前に氷板を出した。


「デルカタイ」


 やや遅れて、プヨンも溶岩弾を防ぐため、防壁を張った。

 空中の窒素分を集めて冷やし、液体状にし、厚さ50cm程度の窒素の水壁を作った。窒素が気体から液体にすることで、体積が大幅に減ったため、まわりの空気が吹き込んでくる。一方、ユコナとは違い液体なので、厚みを一定にするのに骨が折れた。


 溶岩弾が、まっすぐプヨンに向かって飛んできたが、ユコナが作った氷板にあたった。

 しかし、先ほど、岩盤を割るためにこのあたりの水を大量にかき集めたからか、それとも、疲労のためか、


パキン


 氷の厚みが薄く、溶岩弾があたった衝撃で割れた。


「えっ」


 ユコナが驚きの声をあげる。反応できず動きが固まるが、溶岩弾はいくぶん速度を落としながらも、プヨンが作った液体壁にぶつかった。


ドジュー


 溶岩弾の熱と液体窒素が反応し、白煙があがる。溶岩弾は液体の抵抗で急速に減速し、液体を突き抜ける手前で、ほぼ速度がなくなり、重さで下に落下していった。


 続けて、何発か同じような溶岩弾が放たれたが、どれも、白煙をあげたあと液体中で失速して、地面に落下していった。

 地面に落ちた石は、水圧でラグビーボールのような先のとがった形状になり、急激な温度変化の衝撃で多数の亀裂が入っていた。


「どりゃー」


 目についていた赤熱化した石がなくなり、プヨンは、壁代わりに支えていた液体壁を、大岩に向かって浴びせかけた。

 液体の窒素は大量の白煙を生じながら気化していくが、急速に冷やされた大岩は、頭からの湯気がでなくなっていた。


「どうする?」

 

 ユコナがおそるおそる聞いてくるが、プヨンとしても、どうしたらいいかわからない。


「どうしようか」


 プヨン・ユコナと、大岩は、お互い様子見をしながら、膠着状態になっていた。


すると、岩がブルブルと震えた。


「我は、ガンオーである。このあたりの岩場を長きに渡りまとめてきた。お前たちは、何者か」


 突然に頭に意思が浮かびあがる。ユコナを見ると、同じように感じたようだ。


 ユコナは、目で、返事してと訴えてきている。そして、プヨンも、ユコナを見つめ返す。


(どうやって、返事すればいいんだ)


 まさか、生き物以外と会話できるなど、思いもしていなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ