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魔法の使い方教えます  作者: のろろん
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鉱物の取り方 2

「それで、具体的にはどうするのですか?」


 プヨンが何か策があるのだろうと思ったユコナが期待を込めて聞いてくる。


「とりあえず、水をまけばいいと思うよ。それで、岩を柔らかくできるから。もちろん手伝うしさ」

「え?えぇ? 水を撒くだけでいいの? 雨だって降るでしょうに?」

「うーん、たぶんできると思うんだけどね。それで、ダメなら、違う方法もあるけど、まずはやってみよう」

「それは、かまわないけど。ほんとにいいのかなぁ?」


 ユコナと話がついたので、プヨンは、みんなに声をかけた。


「ユコナ様が、直々に対応してくださるそうなので、みなさん、ちょっと場所をあけてください」

「お、おぉ。何か策があるのですね」


 デポンは、嬉しそうに反応し、まわりの鉱夫達に指示をだし、皆を離れさせる。


「ユコナ、水を撒いてよ。なるべくたくさん」

「え、えぇ。わかったけど。でも、ここは乾燥してるから、たくさんは出せないかもよ」


 そうは言いながらも、ユコナは、集中力を高め、固い岩盤の中心に向かって水を撒いた。


 バシャバシャバシャッ


「お、おぉぉ」


 鉱夫達から、どよめきがあがる。もっとも、ユコナが何をしても歓声があがりそうだったが。


 どうやら、ユコナはかなりの水を出したようだ。人が入れるくらいの樽をひっくり返したように、数m四方が水浸しになっている。

 もともと、このあたりの空気は水分が少ないが、周囲の空気中、地中から、集められるだけの水を集めたようで、空気がカサカサになっていた。


 ふーっと大きな息をつき、ユコナは額の汗を拭う。普通ではまず出せない水の量、おそらく、火球数千発分はエネルギーを消費しているはずだ。かなり息が荒くなっていた。


「だしたわよ、それでどうするの」

「うん、じゃぁ、ちょっと待ってね。地面に染み込んでいくのを待ちたい」



 ユコナが聞いてきたので、少し待つように言う。ユコナの出した水は、岩盤にある無数の小さな割れ目から、徐々に岩盤に染み込んでいく。表面の水たまりがほぼなくなった頃合いを見計らって、


「じゃぁ、ユコナ、その岩盤の中央に立って、ゆっくり間隔をあけて、何度か飛び跳ねてみてよ」

「え? 何がしたいのか、さっぱりわからないよ?」


 そう言いながらも、ユコナは、水を撒いた中心あたりに移動して、


「じゃぁ、飛ぶけどいい?」

「うんうん。やっちゃって」


ピョン


 ユコナは飛び上がった。


「ヒートサイクル」


 プヨンは、小声で呟いた。まわり数mにわたって、岩盤と染み込んだ水を冷却する。


(水を凍らせるだけだから、そこまで冷やさなくてもいいよな。それでも、爆発魔法100回分くらいは魔力がいるか)


 凍らせる程度を考え、地表から1mくらいを瞬間的に冷却した。今、染み込んだ水は一気に凍りつき、氷となったようだ。地表から冷気を感じる。

 もちろん、ユコナが飛び跳ねることは一切関係がない。


ビシィ


「え?」


 ユコナの着地に合わせて、地面から大きな亀裂の入った音がした。ユコナが驚きの声をあげる。水が氷になって膨張した体積が、岩の亀裂を押し広げ岩盤が砕かれた音だ。そして、亀裂が入ったところで、今度は、氷を水にする。


「あと10回くらい飛んで」


ピョン、ビシィ、

ピョン、ビシィ


 再び、広がった亀裂にある水を再び凍らせる。それをユコナのジャンプにあわせて、10サイクル程度繰り返した。岩盤の亀裂は相当細かく入っているはずだ。


「じゃぁ、ちょっと掘ってみてください」

「お?おぉ? 確かに音がしたが、あんなのでいいのか?」


 鉱夫の1人が、つるはしをもって、ユコナの立っていたあたりにいき、力いっぱい振り下ろした。


ガツン


 つるはしは岩に突き刺さり、表面の岩盤が砕けた。


「お、おぉ。砕けた。すげぇ」

「さっきのジャンプの衝撃か?なんて威力なんだ」

「ユコナ様、すごいぞ。軽そうに見えていたのにな」


 鉱夫達は驚きの声をあげていた。そして、本当か疑いながらも、そっと、ユコナを見るのだった。


 ユコナは、なぜ岩が割れたのかはわからなかった。ただ、まわりが、ユコナがジャンプし、その衝撃で岩盤を割ったと思っているのは感じ取れた。


(どういうことよ。わ、私が割ったんじゃないでしょ。プヨンには、あとで、真相を確認してやる)


 ここで大騒ぎするとかえって目立ってしまう。ユコナは、だまって、わなわなと震えていた。


 岩盤の件があっさりと片付き、さらに上機嫌になったデポンがやってきた。


「さすが、ユコナ様です。あの固そうな岩盤をあっさり押し割ってしまうとは」

「お、押し割る・・・は、ははは」


 ユコナの引きつった笑顔をよそに、デポンは、続ける。


「ですが、本題は、あちらの大きな2つの岩の塊のほうなのです。少し前に、掘り出されたのですが、いつの間にか、あの丘のふもとに移動しまして。しかも、危険で近寄れなくなって、最近は遠回りしないと出入りできなくなっているのです」


 確かに、丘のふもとに人よりも大きい石が、10mちょっと離れて2つ並んでいる。ちょうど、鉱山から一直線で入ってくると目の前を通ることになりそうだ。


「危険って、どう危険なんですか?」


 ユコナが、当然のようにデポンに聞く。


「もう、そのままですよ。近づくと、怪我します。何人もそばを通ろうとして、弾き飛ばされたり、怪我したりしています。さっきこちらにくるときに遠回りをしたのも、そのためなんですよ」


 少し思案しているユコナだったが、ふと周りを見回した。どうも、ルフトはユコナに嫌われたからか、不貞腐れたようだ。今は、まわりから気配が完全に消えていた。


「とりあえず、どう危険なのか、確認してみましょう」


 ユコナが、プヨンに、ささやきかける。


「え?危ないんでしょ?それは、やめたほうがよくないの?」

「そう。危ないの。でもね、さっきは、私がプヨンの言う事聞いたでしょ。だから、次はプヨンがなんとかする番よ」

「うっ」


 プヨンは、体の重さを利用したとみせかけた件で、きっとユコナは何かやり返すつもりと受け取った。何か仕掛けてそうな気がして、警戒する。


 まぁ、どちらにしろ、ある程度は近づかないと、調べようもない。ユコナの言うとおりにして、ここは従うことにした。




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