かみの子の作り方 2-2
ユコナは、レオンに説明する。その表情は、とても緊張しているように見えた。
「実は、追われているのです。命の危険もあるかもしれません。なんとか、プヨンとここに逃げてきたのですが・・・」
サラに追われているという事を隠しながら、自分に身の危険があるということを伝える。レオンは、いきり立っていた。
「え?どういうことですか?ユコナ様に危害を加えようとするものがいるということですか? どこの者ですか?すぐに守備隊を率いて、捕縛いたしますが」
語気荒く、レオンがユコナを守ろうとする。
「え、いえいえ。ご心配には及びません。少し身を隠せば大丈夫のはずです・・・相手に悟られないようにうまく身を潜めるのです」
「そんな程度でよろしいのですか?本当に?」
「えぇ、本当です。少しの間、私が身を隠すところがあれば十分です・・・」
ユコナの発言では、私たちではなく、私になっていた。すでに、プヨンは、一緒に逃げる価値なしとみなされたのかもしれない。仕方がないので、
「そうです。レオンさん、こちらのユコナさんだけを連れて、すぐ逃げてください」
(さっするに身内がらみか)
プヨンは、ユコナの意図に気づき、とりわけ、『だけ』を強調しておいた。
第三者となろうとしたが、瞬時に、ユコナ得意の冷凍魔法の効果で、視線が絶対零度になっていた。
「この者は、ただの荷物持ちです。人としての権利が一部制限されています」
「ひど」
冷たく言い放たれてしまった。
レオンは、ここでユコナには深く立ち入れない事情があることを悟り、大人な対応を取ることにした。
「事情はわかりませんが、私もちょうど出かけるところでした。少し離れた町で、豊穣祈念の催しがあるので、護衛任務があり、行かねばなりません。ただ、当初3人でいく予定が、1人になってしまって困っていたんですよね。一緒にいきませんか?」
渡りに船だった。もちろん、ユコナはこの提案に飛びつき、雰囲気温度は一気に常温に戻る。
「もちろんです。是非、ついていきたいと思います」
そして、プヨンを見て、
「プヨン、すぐに出立ですよ」
プヨンにもすぐに指令がくだった。
レオンを先頭にユコナ、プヨンは、町を出た。
用意されていた馬車に乗って進んでいく。ユコナの希望で、ここからすぐに町を出て、外周を回りながら行きたいらしい。御者をしながら、レオンがいろいろ説明してくれた。
「村の豊穣祈念は、農作物を作る町や村では、どこでも暖かくなり始めた季節の変わり目で行われる一般的な行事なんですよ。で、だいたい、人が多くくるので、僕たちにも声をかけて、招待してくれるんです。なにかあったときの警護も兼ねてね。今日行くところは、ここの町を西に2時間ほど行ったところにあるユピテイル村なんですよ」
ユピテイル村は、先日、プヨンが試験を受けに行く途中にそばを通ったところだ。
食事も特にこれといった特徴がない、ただ、レオンが言うには、
「他のところもそうなんですけど、ユピテイル村は、雷神様を祭っているので有名なんですよ。なんでも、かつて、雷神様が現れて、作物の実りを約束してくれたことがあるそうで、雷神様が現れたところに、塚があるそうですよ」
そんな話を教えてくれた。
お祭り自体は、特に目新しいものがないらしい。みんなで飲んで食べたり、踊ったりする中で、雷神様へのお供えやお祈りがあるのが特徴くらいだ。
「へー、それって、ほんとなの?」
「さぁ、どうですかね。ただ、雷が落ちると、作物がよく育つらしいですよ」
ユコナの疑問に、レオンが答えていた。これは誰でも知っていることだ。
(なるほどね、雷が落ちると、窒素が分解されて、窒素酸化物ができて、それが植物の栄養になるっていうもんなぁ。落雷した年は豊作だったのかもな)
プヨンも、自分なりに解釈していた。
しばらく進んで、ふと、レオンがさっき提供してくれたスピン服の話題をふってきた。
「プヨンさん、さっきの服はどうですか?着心地いいですか?時間のあるときに、蓄積しておくと、いざというとき回復するので、便利ですよ」
プヨンが、自分の服を見ると、左胸のところに、親指の爪くらいの大きさの尖晶石がはめ込まれていた。
この石で自動治療をするのかもしれないが、心臓部分も守っているのかもしれない。石の色は、明るい青色をしていた。
「そうよ。その服があると、かなり安心よ。レオンもわたしも、今、青くなっているでしょ。こんな感じにしておいたらいいわよ」
ユコナも襟元をめくって、中のシャツの布地を見せてくれた。たしかに、明るい青になっている。
「ねぇ、どうやるの?」
「あぁ、服の色の変え方ですね。真ん中の石に向かって、魔力を注ぐようなイメージですね。回復魔法をかけるのが一番確実ですかね」
レオンが教えてくれた。なんとなくイメージができる。
(ふーん。まぁ、教会で回復薬用のお祈り捧げるようなものだろうか?石に回復魔法をかけるような?)
半信半疑ながらも、ためしに、胸が怪我をしたようなイメージをしながら、回復魔法をかけてみた。
徐々に服の色が白から水色、そして青色に変わっていく。
その後も、3人は、雑談しながら、馬車に揺られていった。
ユコナがサラリスのことを完全に忘れ、プヨンの服の色が青を通り越して、紫、それもかなり暗い紫になったころ、馬車は、ユピテイル村に到着した。




