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魔法の使い方教えます  作者: のろろん
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水の潜り方

 先日の、学校入学の試験は、無事終わった。

 ユコナと一緒にキレイマスまで戻って石を売った時点で、夕方になっていたが、そのままマックボードで、ユトリナまで戻った。

 往路と違って道もわかっているし、まわりの景色を楽しむのも、2度目だとそこまで時間もかからない。まっくらになる前には町にたどり着いていた。


 今日は、しばらくぶりに、回復薬用のミメモム草を獲りに来ていた。ちょうど川沿いを歩いていると、川の淵に女の子が立っていた。

(フィナ?フィナなのかな?何してるんだ?)


 よく見ると、何やら着ている服の袖やポケットなどに石を詰め込んでいる。


 少し様子を見たが、ふっと思いついた。慌ててかけよる。


「ダメだダメだ。飛び込んじゃダメだ―」


 急いでかけより、抱きとめる。


「え?えぇ?」


 やっぱり、フィナだった。


「プヨン、久しぶりかな? なんで飛び込んじゃダメなの?」

「え、だって、石を抱いて飛び込んだら死んじゃうじゃないの?」

 

 プヨンは、女の子、結果的にフィナだったが、入水でもするのかと思ったが、どうやら勘違いだったようだ。


「じゃぁ、いったい石を服に入れて何していたの?」

「え?ちょっとね。倉庫に行こうと思って」

「そ、倉庫?どこに?」

「うんうん。プヨン達が家があるように、私たちもそういうのがあるのよ。といっても、別に家やベッドがあるわけじゃないけどね。暇ならくる?」


 プヨンが驚き、とまどっているのを見て、フィナは笑っていた。


「で、どこに?」

 

 なんとなく、プヨンはわかっていた。石を入れていたんだから、川の中だろう。

(なるほど、フィナは、木で軽いから浮くんだな、重しがわりかぁ)

「もちろん、わかってるんでしょ?川の底よ。くる?」

「くるってどうやって? 水の中でしょ?」


 フィナは、ふふふっと笑いながら、


「まぁ、冗談よ。プヨン達は息ができないもんね。私たちは深くなければなんとかなるけどね」

 

 たしかに、フィナは植物由来だから、呼吸も陽の光があたっていれば、問題ないのだろう。しかし、プヨンは、急に思いついたことがあった。


「やっぱり、ボクもついていっていい?ちょっと試してみたいことができた」

「え?えぇ、いいけど、大丈夫なの?」

「うん、でも、ちょっと待ってね。練習しないと、うまくいくかわからない」


 そういうと、プヨンは、顔を水につけてみた。電気系魔法の応用だ。自分のほほの内側と外側で微量の電気を流してみた。


「ツーデン」

(うーん、呼吸は1分15回として、呼吸1回酸素で100ミリリットルくらいかなぁ。加減が・・・)


 電気量を調整し、ほほの両端に電気を流す。


「うごっ」


 ゴホッ、ゴホッ


 電極の+と-を間違えたようだ。思わず、むせそうになって、あわてて顔をあげた。もうちょっとで酸欠空気を吸うところだった。うかつに水素を口に含んで火がつくとか想像したくもない。


「だ、大丈夫?」

 

 フィナも心配そうにしてくれているが、おまぬけなことをしただけだったため、あわてて、遮る。


「うん、大丈夫。気にしないで」


 もう一度、電極の向きを反対にして同じことを繰り返し、呼吸できることを確認した。

 ほほの内側から、酸素がでてくるようになっている。ただ、酸素100%の空気だ。酸素中毒には気を付けないといけないから、とりあえず10m以上は潜らないようにしなければならなかった。

 

 水面から、顔をだして、フィナに言う。


「うん。大丈夫。いけそう。そんなに深くないよね?」

「うん、大丈夫よ。川底が見えているでしょ。すぐそこよ」


 プヨンとフィナは、水の中に入っていった。呼吸魔法は順調そうだ。激しく体を動かすと足りなくなるかもしれないが、中にいるだけなら、十分供給できそうだ。

 口の中には含んだ水から酸素が、ほほの外側からでている気泡が水素だろう。

 

 フィナは、石の重みのせいか、まっすぐ川底に向かって沈んでいき、底を歩いていた。しかし、浮力はプヨンにもあるので、ほっておくとすぐ体が浮いてしまう。


「ブルークリート」


 先日の移動のとき、マックボードで自分の体を押したが、それと同じことを水中でしてみる。底に向かって自分の体を押し、手足でバランスを取りながらゆっくりと水中に降下していく。


 ただ、一方向に押すのと違って、水中はどの方向にも進めないといけない。

 手や足でうまくバランスを取りながらだが、なかなか思ったところにはいけなかった。ちょっと重心がずれるとくるくると回転してしまう。

 水中を自由に移動できるのは、思ったより時間がかかりそうだった。


 それでも、なんとか、フィナのいる水底についた。


 フィナは、川底の石をどけて、アンカーのついた箱を出した。一抱えくらいある、ある意味宝箱だ。

 そこの鍵穴のところを指でなぞっていた。

 よく見ると、指輪のようなものをつけていた。


 あの指輪と箱の金具がカギになっているのだろうか、カチッと音がして、箱が開いた。


(水中じゃ、何も話せないな、何かを取りにきたんだな)


 話そうとしたが、ボコボコと気泡がでていくだけだ。


 フィナは、小箱を取り出すと、目で合図を送ってきた。上にあがるよということらしい。


 再び箱の鍵を閉めて、服の中の石をとりだした。石をとりだすと、フィナは軽い。そのまま浮力で水面に浮上していった。

 あわてて、プヨンも後を追う。


 水面から顔を出して、大きく息を吸いながら、地面に立った。


「シスターン ヴェポラッブ」


 呼吸はすぐに整ったが、潜っていたから、当然、服はずぶ濡れだ。だから、この魔法を利用して、水を相転移で気化させ、すぐに服を乾燥させた。


「プヨン、よく息が続いたわね。どうやったの?」


 水から上がったフィナが驚きながら、声をかけてきた。潜っていたのは、5分くらいだろうか。


「ま、まぁな。ちょっとそういうの試してみたかったんだよね」


 フィナは、感心しているようだった。


「フィナは、結局、何を取りに行ったの?」

「え、あぁ、ちょっとね、知り合いに渡さないといけないものがあってね。あそこに置いていたの」


 フィナは、それが何かは教えてくれなかったが、プヨンにとっては、水中行動をするいい機会になった。 

 まだまだ、練習が必要だが、長く潜れる可能性がわかった。


「フィナありがとう。ずっと試したかったことが試せて、勉強になったよ」


 フィナにそういうと、フィナと別れ、もとの目的の草取りに向かった。

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