石の売り方 2
「ねぇ、とりあえず、さっきの石が売れるのか聞いて見る?」
ユコナに言われるまでもないことだ。
早速、受付にいたマースに聞いて見ると、キレイマスのレスルでは、石の売買が多いので専用の買取場所があるらしい。
そこに行って、担当のボクスに相談するといいと教えてくれた。
教えられた通り、すぐに建物の2Fの買取所に行く。
時間帯なのか、人もあまりおらず、すぐにボクスに取り次いでもらえた。
「お前たちか? どんなものを持ってきたんだ」
そう言われ、プヨンはさっき取ってきた石を見せた。濃い黄色が4個と、赤色が7個だ。
どれも、そこまで大きくない。
ボクスはそれを受け取りいろいろと調べていた。光を当てたり、拡大レンズで中を見たりしていたが、一通り確認が終わると、ジロリとこちらを見て、
「これは、お前たちが手に入れたのか?どちらも特徴のある石なんだが、特に赤いほうだ。どこで手に入れたんだ?」
ボクスは、やたらとどこで手に入れたと聞いてくる。
プヨンとユコナは、あまりにボクスが聞いてくるので、思わず目をあわせてしまった。
プヨンとユコナは少しへんだと思ったが、特に隠すこともない。アイコンタクトで言ってもいいよねとお互い意思を確認しあったあと、学校からの帰りにそばにあった森を通って帰ってきたと伝えてみた。
それを聞いたボクスは、やけに驚いていた。
「あそこを通ったのか、お前たちだけでか?」
プヨンとユコナをジロジロ見ている。
ある程度、町間を移動する旅の恰好はしているが、特に武装などもしていない。
たしかにさっきの石を手に入れた経緯を考えると、不正な手段で手に入れた宝石を持ってきたと思われても仕方ないかもしれなかった。
ユコナは、もう1人いたことを伝えた。ボクスは、いぶかしがりながらも、
「ふー。なかなか悪くない石だった。黄色が1個200グラン、赤は500グランだ。赤はなかなか状態がいい」
「へぇ?じゃぁ、全部で、4300グラン? あれで、こんなになるんだね」
ユコナが簡単でしたと言わんばかりに、何気なくつぶやいた。
たしかに、あの場にいたときは、それなりの危険を感じたが、大きな怪我もなく、無事戻ってこれた。
ユコナやプヨンには、のほほんとした雰囲気があり、そこまで緊張感もなく、そう口にしたのだろう。
「な、なに?あの程度だと? けっこう危険だっただろうが?なんならもっと安くしてやってもいいんだが」
ボクスは、こんなやつらがと納得がいかないのか、語気が若干荒くなる。
「い、いえいえ。この値段でお願いします」
慌ててユコナが余計なことを言わないように口を塞ぎ、買取をお願いした。
「まぁ、いい。買取はしてやるから、ここの登録証を出せ」
ボクスは、レスルの登録証を出せといってきた。
そういえば、ここでは一度も登録していない。ユコナも手を横に振って、身振りでナイナイと伝えてきた。
ないことを伝えると、下に行って登録してきてくれと言われ、2人は大人しく階下に向かった。
登録に行く前、ユコナが話しかけてきた。
「プヨンも学校にくるんだっけ?」
「うーん、まぁなぁ、受かったららしいけど。たぶんなぁ」
「聞いていると、ほぼ、受かるらしいわよ。私もそのうち、ここには登録しておこうと思っていたのよね。何かと便利そうだし」
そういうと、ユコナは地元から離れたこの辺りで、誰に気兼ねすることもなく、いろいろやってみたいことがあるらしかった。
自由度がますからか、出歩いて見たり、今日やったような、石取りのような危険なことにも挑戦してみたいらしい。多少目立っても知らない人ばかりだし、ヘマをしてもその場だけ恥ずかしい思いをするだけだ。
ルフトは、さっきどこかに行ってしまったので、聞かれていないと思っているのか、ちょっと大胆なことを言っている。
簡単にいうと、しがらみのないメンバーと、レスルの一般斡旋の仕事、いわゆる野良仕事をいろいろしてみたいらしい。
「プヨン、一緒に組んでくれたりするよね?」
「あ、あぁ、いいよ」
ユコナの、なんとも言えない熱意が感じられる。そんな興味があったとは思わず、一歩後ずさって、声も上ずってしまった。
再びマースのところに戻ってきた。
「あんたたち、見ない顔だったしね。戻ってくると思ってたわ。これでしょ」
そういうと登録用紙を出してきた。もちろん、最初に言えよと思ったが、ニコニコ顔で受け取った。きっといろいろお世話になるはずだ。
「石を売りにくるってことは、けっこう他でやってたの?そんな風には見えなかったけど、もう1人いた人のお付きかな?」
ルフトがいたのを見ていたのだろうか、マースは、プヨン達を値踏みしていた。
(さっき、ボクスが、こいつらを見定めしろっていってきたのよね)
ユコナは、用紙を受け取り、いつもいる町のユトリナの資格通りに書いていたが、プヨンは、別に売るための登録だけだったので、適当に記載しておいた。
(うーん、なんでもいいだろうし、回復だけでいいか)
2人が書いている間、ボクスは、金額を計算して用意していたようだ。それを持ってきて、マースと何やら話をしていた。
マースは、2人の書類をチェックした。ユコナは、治療と氷がAAとついていて、その証明がわりに、ユトリナのプレートを見せていた。
プヨンは、面倒なので、回復Aだけだ。
それを、マースは、ボクスに見せながら何やら話をしていた。
「ボクス、こっちのユコナって子は、まだ少しできそうだけど、もう1人はおまけ程度じゃないの?学校帰りって行ってたけど、これじゃちょっと弱すぎない?関係者じゃないと思うなぁ」
「うーん、そうか。俺の見込み違いだったかな。定期的に、持ってきてくれそうに思ったから、レスルに登録させたんだがな。これだと、こっちの子は氷があるけれど、もう1人は何もないなぁ」
「もう1人いましたからね、そちらかもしれませんね」
そんな話を裏でされていると、ちょうどルフトも戻ってきていた。
「どうですか、ユコナ様。うまく売れましたか?」
「えぇ、売るのに登録がいると言われて、今、手続きを。それで、サラリスのほうはどうでした? 怒っていましたか?」
「いえ、特に問題はなさそうでしたよ」
「そうですか。じゃぁ、大丈夫そうですね」
ユコナとルフトの会話がプヨンにも聞こえてきた。その内容からすると、ユコナには帰りたくない事情があるようだった。わざわざサラリスと別で帰るところから不思議に思っていたが、その悩みも解決したようだ。
とりあえず、用紙を出し、資格証を受け取った。あわせて、さっきの石の代金ももらえた。
ルフトは遠慮していたが、ルフトも含めて3等分することにした。
ルフトからの情報のせいか、売上のせいか、ユコナの表情もあかるくなり、
「じゃぁ、プヨン、私たち、戻るからね。きっと試験は受かってると思うよー」
そう言って、ルフトとレスルを出て行った。




