表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔法の使い方教えます  作者: のろろん
129/441

入学試験の受け方 5

 プヨンは、割り当てられた部屋にいく。学生用の寮ではなく、訓練やイベントなどで団体客を受け入れる用の簡易の宿泊所とのことだった。部屋は、3人部屋とのことだった。


 食堂のある建物から、宿泊所まではそう遠くなかった。ただ、すでに陽が落ちて、周りは暗くなっている上、特に照明なども見当たらない。

 移動する人は、自分で小さな火球などで明かりを出すか、ルーメントと呼ばれる尖晶石を埋め込んだ燭台を使っているようだ。ルーメントは持ち主の魔力を吸い取って、明かりをともす一般的な道具の1つだ。

 残りの人たちは、疲れているのか明かりを出さず、窓の明かりなどを頼りに歩いていた。


 今日泊まるところは、外部者用の宿舎らしいが、それでも、建物にも簡単な仕掛けがあり、1階から2階にあがる階段がなくロープが垂れさがっているだけだったり、床が滑りやすくなっていたりした。


 無事、部屋に着く。ノックして入ると、すでに、他の2人は部屋にいたようだ。2人の視線がプヨンに向けられる。お互い、3人とも受験生ということはわかっているので、簡単な挨拶をした。


「プヨンです。よろしく」


 2人もそれを受けて、ベッドに寝転がっていた状態から起き上がり、挨拶を返してくれた。


「俺は、ヴァクストだ」

「僕は、マウラーだよ。よろしくな」


 定番といえば定番だが、自己紹介も兼ねて、経歴や学校を受ける目的などを語る。すでに、2人は一度話しているのか、話すときはプヨンだけを見ながら教えてくれた。


「魔法ってさ、威力とか攻撃主体が多いでしょ。でも、1つ間違うと、1発でやられちゃうから、もっと守ることを極めたいんだよね」

 マウラーは、魔法防御に興味があるらしい。いろいろな本を読んできたこと、特に、ユーカワンの書という魔法防御に詳しい書物がこの学校にあるらしく、それを研究したいのだと教えてくれた。


「俺は、家が道具屋なんだが、どうしても魔法を使うほうが好きでなー。親とけんかしても受験したかったんだ」

 ヴァクストは、ちょっと複雑だった。道具屋を継げと言われたが、親の反対を押し切って受験するらしい。落ちたら継ぐことを条件に、承諾してもらったとのことだった。


「だが、こう見えても、俺はそこそこ自信があるんだぜ」 プヨンも、もともとのメサルの依頼のこともあり、そこは伏せながらも、回復魔法に興味があるのだと動機を伝えた。安易だけど、定番だよなと返されてしまった。


 ただ、ここで学ぶ以上は、安全な町医者ではない。マウラーからは、

「わかるよ。ただ、治療するだけじゃない。ここでは、戦闘や災害などの緊急時の治療方法を学ぶ。なんというか、一刻を争ったり、不十分な環境で自分を試したいんだろう。お前も、回復マニアの類だな」

などと、少し、誤解されてしまったが。


 確かに、治療時も敵に襲われながらの治療など、不安定な環境下が想定される。自分の身を守りながらの治療を学びたいなど、どう考えても一般的ではない。そして、ここはそういう人が志望することが多いということなのだろう。


 単に好きだけじゃないアピールをしてくる。何が得意かは教えてくれなかったが、雰囲気からしても、それなりに使えるらしい。口調からしても自信のようなものが感じられた。


 その後もしばらく、お互いのことなどを話した。一通りのことを話し終えたが、明日もゆっくりはできないことは皆わかっている。3人とも、申し合わせたように会話を打ち切って、眠りにつくことになった。


 夜中に、プヨンの耳につけたスピンカム通信で、ユコナから「がんばって」とメッセージが届いたころには、プヨンは熟睡していた。


 翌朝、起きると、プヨンと同部屋の3人は、身支度をした。といっても荷物は大してないため、ちょっと着替えて荷物をまとめる程度で、すぐにそれぞれ部屋を出る。


 食堂では、さすがに調理された温かい食事が用意されていたが、昨日の夜に比べると、人が少ない気がする。半分とは言わないが、かなり減っているのは感じられた。昨日のいろいろな仕掛けなどで、脱落者がいるようだ。それでも、100人程度はいる。


 食事を終えて、食堂で待機していると、昨日と同じように教官が3人、入ってくるのが見えた。まわりのざわめきがなくなり、みな緊張しているのがわかる。教官が壇上に立つと説明が始まった。


バサッ


 目の前に、試験課題の紙が掲げられた。


試験課題:

・持久水

・エイミーアテマス

・簡易対戦


「よーし、じゃあ、今から会場に移動するぞー。こまかいことはそっちで説明するから、ちゃんとついてこい」


 教官の試験説明が始まろうとしていた。


 プヨンは、ふと大事なことを思い出していた。

(そういえば、合格定員が何人か、聞いたことがなかった・・・)


 内容もそうだが、どのくらい受かるのか聞いていなかった。上位から何人なのか、一定水準以上は全員合格なのかによっても難易度が違う気がする。

 試験課題の名前からは、対戦はかろうじて想像できるが、あとの2つはよくわからず不安になる。自分でも少し緊張してきているのがわかった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ