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魔法の使い方教えます  作者: のろろん
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校庭散策の仕方

 タダンが逃げ去ったあと、プヨン達は、小舟の中に残されていた。今更追いかける気はしないので、おとなしく船を出す。


 マックボードの応用だ。乗り込んだプヨンを、魔法の力で押すことで船は進みはじめた。見送るタダンは、オールも使わずに速度があがっていく小舟を不思議そうにみていたが、あっというまに小さくなっていった。


 ターナは、何をしているのかわかっているようだったが、思った以上に加速していたからか、驚きはしていた。


 岸から離れ、速度も一定となって、落ち着いてきた頃、


「ねぇ、プヨン。さっき動くときって、特に何も感じなかった?」

 

 ターナの嫌気性魔法での行動封じは、自分にも向けられているとプヨンは感じていたが、どうやら正解らしかった。ターナが、遠回しに聞いてくる。


「あれは、周り全体に影響があるから、あなたも例外じゃないんだけどね」

「・・・僕、もっと怖い女性を知ってるからかも。だれとは言わないけど?」

「へ? そうなの? なるほどね」


 適当に言ったつもりだったが、ターナなりになぜか納得してくれた。


 後ろが重いからとは絶対に言えないが、船首が持ち上がっているから、多少スピードを上げても波をうまくかき分けてくれる。もう湖のなかほどまできていた。対岸までもう1kmもない。


 「ひゃっ。つめたっ」

 

 プヨン、持ち上がっている側にいたから気づかなかったが、船尾側にずいぶん水がたまっていた。

 ターナのくるぶしあたりまで、水につかってる。 

 おそらく、その辺の廃船をあしらってくれたからだろう。放置されている船など、穴が開いていても不思議じゃなかった。


 「あ、あの男、私をぼろ船に乗せるとは、きっと計画的犯行に違いないわ。今度あったら、無期懲役にしてやる。使い倒してやるわ」

 「無期懲役でいいのかい? さっきは死刑と言っていたのに?」


 判決でも妄想しているのか、ターナの不気味な笑顔に、思わず聞き返すと、


 「クフフフ、私はアルフよ。わりと長生きするの。死んでも解放してやらないわ!」


 確かに永遠も怖いな。そうプヨンは思ったが、しょせんは他人事、船の方が気になった。

 

 そうこうする間に岸にも近づくが、沈没も近づく。すでに、バケツ2、3杯は水がたまっていた。ターナは足をあげているが、もう、座っているお尻の真下くらいまで水がきていた。船尾は水没しそうだ。


「プ、プヨン、対岸までつけるかしら?さぁ、水をかきだすわよ」


  まだ、かろうじて座っている横板までは水がきていない。ターナが必死で水をかきだし始めたが、


 「水にぬれないように、手足をあげて。リーベンブルンネン」

 

 ターナが水に触れていないことを確認して、船の中の水を凍らせた。これで、とりあえず、水の噴水は止めることができたようだ。これ以上沈むことはないだろう。

 

 「え? こ、これだけの水を瞬間凍結なの? や、やるわね。誉めてつかわす」


 ターナは氷の上に足を置きながら、横板に座りなおした。プヨンがその気になれば、水を気化させ、蒸発させることも可能だったが、氷にするほうが必要なエネルギーが2割以下ですむ。氷は残るので邪魔だけれど、無駄に疲れたくはなかった。


 それでも、水は30リットル以上はたまっていた。 

 火球1発を、直径10cm、1000℃の空気の塊とすると、それだけの水を凍らせるのに必要エネルギーは、火球1000発以上は必要だ。ターナが驚くのも無理はなかった。


 船が岸に近づいていく。桟橋が見えるが、船の着く時間ではないからか、人がいなかった。

 きっと、また次の船が着くだろうから、こんなぼろ船を止めておくと邪魔になりそうだ。


 「ちょっと脇に止めるよ」

 

 そう言って、桟橋のある場所から少し離れた砂浜に船をとめた。


 波打ち際にターナとプヨン、そしてツターナも立っていた。無事着いたことで、ほっと一息つけ、まわりを見渡す余裕ができた。


 「ドライアップ」


 船から降りるとき、けっこう濡れてしまったが、そこはターナもプヨンも即座に乾燥させていた。


 まわりを見ると、目の前に石造りの壁があり、それが、さらに砂浜の端まで続いていた。おそらく学校の壁なのだろうが、桟橋を囲んでいるだけなのか、もっと奥まで続いているのかは、ここからではわからなかった。


 桟橋の端にある門は威厳のある石造りで、上に学校の紋章かなにかがついている。大きくはないが、できてから時間も経っているのだろう、風格を感じた。

 門の扉自体はあいていた。門の真下に2人して立つと、妙に視線を感じた。周りをみても何もないが、ターナも同じように感じたのか、きょろきょろ周りを見回している。


 2人して門をくぐる。目の前には向き合った2体の石像が3組、どうやら、視線だと思ったのはこの像だったのか。6体すべて、門を見つめている。

 門からまっすぐ入ってきた者たちを迎えるよう、像は2体ずつ向かい合ってならんでいた。

 一番奥の像は、男性に見える剣士で、背が高く、2mくらいありそうだ。

 そして、こん棒を持った子供くらいの背丈のサルのような動物。背中に羽が生えている。

 そして門側が女神のような美しい女性。これも1.5mはあり、2体向き合って、顔だけが門を見ている。どれも精巧なつくりで、今すぐにも動きだしそうだ。


 ただ、妙に汚れているのが気になった。サル1体は、わりときれいだが、残りは、こけが生えていたり、ずっと掃除されておらず汚れているように見えた。


 さらに奥を見ると、今いるところから、まっすぐ500mくらい向こうに校舎らしきものが見える。また、左には、レスルにもあるような魔法の訓練場などがあり、右には、大型のドームのような建物が見えた。


 じっと周りを観察していると、ターナがこちらを見て、

「人がいないね。たまたまタイミングなのかなぁ。ここで、見ていてもなんだし、正面の建物に進もうか?きっと、なにか、手続きするところか案内がありそうだけど」


 そうターナに言われて進もうとすると、ふいに音もなく女神像の手が動いた。


「うぉっ」「ひゃっ」


 2人して、驚いて声をだしてしまった。視線を感じてはいたが、動くとは思わなかった。手だけだが、奥を指さしている。あっちにすすめということなのだろう。


 視線を感じながらも、道なりにまっすぐ歩くと、まもなく建物に着く。が、ふと気が付いたことがある。建物は、崖、といっても、2mくらいだが、高台の上にある。


「ねぇ、プヨン、これ、上に行くのって、階段がない?」


 そう。さっきから気になっていたが、階段も上り坂もない。完全に高台の上にあって、前は、ロッククライミングのような岩場になっていた。

 


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