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魔法の使い方教えます  作者: のろろん
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入学試験前日 5

「まぁ、そこに座れば?」

 

 ターナは、ものの10分ほどで、鳥を獲って、お昼ができたことに驚いたが、言われるままに座ろうと移動する。

 ターナは、少し離れたところにいき、何やらぶつぶつ呟いていた。すると、少量だが、空中に水が出る。手を洗っていたようだ。

 そして、戻ってきたターナと、先ほど肉を焼く時に鉄板がわりにつかった石を挟むように、プヨンとターナは向かい合って座った。


 プヨンは、ストレージから短剣を取り出した。先日、水熱合成で購入した水晶を加工し、鉄の剣の刃先だけ水晶に作り替えた剣だ。


「クォーツ」


 水晶の両端に電圧を加えることで、毎秒28800回振動するように、刃先の厚みを調節してある。いわゆる超音波カッターだ。

 小刻みに高速振動することで、自分より柔らかいものに対する切れ味を格段に向上させることができた。

 鉄などの金属は難しいが、さすがにモース硬度7の水晶だ。硬度1.5のカルシウム=骨くらいなら、なんなく切り裂くことができ、あっというまに、薄切り肉にすることができた。

 その肉を、適当な火球をだして、肉をあぶり、ほどよい焼き加減にした。


 あわせて、背負っていたカバンには、町を出る前に買ったパンと岩塩をとりだした。塩をつけたサンダーバードの焼肉でサンドイッチにして、お昼ご飯にした。


 わけてあげると、ターナは黙って受け取る。続いて、ツターナに渡そうとすると、

「あ、あ、あ、ありがとう。でも、ツターナは、食べ物はいらないの。これは、人間ではないから。これはフクワーンだから」

 あわてて、ターナが遮った。フクワーンというのは聞いたことはあった。たしか、魔力を用いて操作する自分の分身のようなものだ。

 見るのが初めてのプヨンとしては、興味は尽きないが、とりあえず2人は食べることにした。


 ターナもプヨンもお互い訊きたいことがたくさんあった。が、初対面ではなかなかお互い直球では聞きにくい。食べながらそれとなく話していく。最初に、プヨンは、なぜ自分に声をかけたのかを聞いた。


「そ、それは。その、そこのカバンの地図にキレイマスに印が付いているのが見えたから。私もそちらに行くので、そ、その、そこまで利用・・・仲良くさせていただこうと・・・」


 そう言われてカバンを見る。歩きながらでもチェックできるように、カバンの地図入れに地図を張り付けていた。

 キレイマスのところ赤線で囲み、道に印をつけている。一目で、行き先がわかるようになっていた。


「ここから、目的地に着くまでお世話になろうって?はぁ・・・」

「な、なによ。私がお願いすると、みんな優しく聞いてくれるのよ。それなのに、あなたは・・・」

 ターナは、自分が一生懸命(魔法で)お願いすると、みんな優しく言う事を叶えてくれること、そして、プヨンはターナのような困っている(自称)かわいい子を助けないといけないということを懇切丁寧に教えてくれた。


 ご飯を食べながら、プヨンは、横にいるツターナを観察していた。

 今は、ターナの操作が切れているからなのだろう、目を閉じてうつむき、じっと座っているだけだ。微動だにしない。

 フクワーンという魔法操作での人形は遠目に見かけたことはあったが、ここまで目の前で見るのは初めてだった。滑らかに動かしていたところを見ただけでも、おそらく、ターナは相当、魔力での操作が得意なのだろう。

 さらに上級者になると、なんらかの精神体を植えつけて、単純な動作なら自分で判断して動作させられるものもあるそうだ。


「なに?ツターナに興味があるの?とってもスタイルがいいでしょう。その辺の適当に作った人形とは違うのよ。人と見分けがつかないでしょ。見てよ、この腰のところとか。自信作なのよ」


 ターナのいう自信がどこらへんなのかはわからないが、プヨンが、人形側、すなわち、ツターナを見てばかりいるのでターナが得意げに説明してくれる。

 男なら誰でも、このような外見の秀でた女性に頼まれたら、叶えてあげたくなると思われた。当然、ターナも最大限に好意を引き出すために、女性には頼まないだろう・・・。


 しかし、プヨンはターナがおかしな目つきで見ているのに気づいていた。

 何か聞きたいことがあるのはわかるが、口に出すことをためらっているようだ。チラ見しては、もじもじしたりしている。

 プヨンは、この子がなぜ、このような魔法操作系を習熟しているのか、この精巧にできたツターナをどうやって作った、または、手に入れたのか気になっていた。


 ツターナは大人の女性ほどの背丈がある。ターナがツターナを操作できるということは、この小さな女の子は、ふつうの女の子の2倍以上の魔力があることを示していた。。


一方で、ターナもプヨンのことが気になっていた。トイレついでで、たまたま街道を離れたときにプヨンを見かけた。背中に見えた大きな地図で、一目で自分の目的地と同じ、キレイマスに向かうことがわかった。これ幸いと、そのまま現地まで、そうでなくても、少なくとも次の町までお世話になるつもりだった。


「ハイネス ブリック」


 ターナが小声でつぶやく。好意の視線を送ることで、ターナを助けてあげたいという義務感を植えつけようとする。そして、


「ねぇ、プヨン、その剣、すごい切れるね。ちょうだい?」

「え?そ、それは、ちょっとダメかなぁ。そんなにわけられるほど本数もないし、それに、けっこうお金かかっているしなぁ」


 やっぱり、ターナの好意魔法は効いていないことを確認する。プヨンは逡巡することなく、あっさりと拒否されてしまった。

 ふつうなら即OKとなるはずなのに、ターナはいたくプライドが傷つく。なんとか理由を探り出したかった。


 その後もいろいろ、雑談に織り交ぜて聞き出そうとしてみたが、結局わかったことは、ターナと同じキレイマスに行くこと。それが、どうやらレスル絡みの仕事のためというくらいだった。


 そうこうするうちに2人は食事が終わった。

 2人とも先を急ぐ身、あまりのんびりともしていられない。ターナは、プヨンから好意を引き出せなかったことが、とても気になってはいたが、ターナ自身もキレイマスに行くため、少なくとも今日中には次の町にたどり着く必要があった。

 ターナとしては、プヨンからは譲歩が引き出せないことがわかったため、これ以上プヨンと一緒にいるメリットは感じられない。プヨンと敵対しているわけではないが、また、違う誰かに「お願い」するほうがよいと考えていた。

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