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魔法の使い方教えます  作者: のろろん
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回復魔法の使い方

 ずいぶん言葉が達者になってきた上、あっちこっち歩き回れるようになってきた。今までは見るしかできなかったことが、質問ができるようになってきていた。


 ただ、相変わらず祈りと治療の関係に興味津々ではあるけれど、どうやり方を聞けばいいのかわからない。


 怪我の治療などは人の体に関することでもあり、安易に試させてもらうわけもいかない。実際にする機会がないまま、ほぼ見てるだけの毎日が続いている。


 今日はメイサの担当日だった。プヨンがすぐそばで治療の様子を見ていたところ、ちょうど患者の列が途切れたのかメイサが話しかけてきた。


「プヨンはいつもリパリーの様子を見ているわね。よほど好きなのね」


「リパリ―って?」


 耳慣れない言葉を聞いた。いつも忙しそうなメイサが話しかけてきたのでいろいろと聞いてみる。


「プヨンがいつも見ている、怪我をなおしたり、病気の症状を和らげたりすることを、ここではリパリ―って言っているのよ」


「へー。うん、すっごい興味ある。どうして、そんなことができるんだろうって。どうやったらできるの?」


「どうって言われると難しいけど・・・。怪我する前のもとの状態に戻れって強く念じて、治った時の姿を思い描いてつぶやくと、元にもどるの」


「じゃぁ、あのつぶやいているのは、どうやって元に戻すかをつぶやいているの?」


「私はどこを直してほしいか、こういう状態になおしてくださいって神様にお伝えしてるのよ」


 言っていることはわかるけど抽象的な説明だ。なぜそうなるのかについては、メイサ自身はお願いしたら聞いてもらえるというような返事をしてきた。


 本人もよくわかっていないのか、それとも子供向けに簡単に言っているのかもしれない。


「どうやってできるようになったの?もともとできるの?」


「もともとはできなかったよ。いろんな人に教えてもらったり、学校でも習ったり、いっぱい練習もしたよ。」


(へー、学校で教えてもらえるというのは驚きだけど、いろんな科目の1つだったりするのかな?)


 と考えていると、メイサは続けて、


「でも誰でもといわれると誰でもできるわけじゃないかなぁ。台所で火をつけたりするのを見たことあるでしょ?」


 たしかに教会では燭台に火をつけるときも、みな指先だけでつけている。


「あれだってこの教会にいる人はほとんどできるけど、町の人だとできない人もけっこういるよ。強く念じて現象を思い描くことができると、それができるようになるわ。でも、うまく思い描けない人もいるし、何がどこまでできるかは人それぞれなのかなぁ」


「へー。僕にもできるのかな?」


 プヨンは1番聞いてみたかったことを聞いてみた。


「プヨン?うーん、どうなんだろう。火のつけ方を台所で見てるでしょ?あとで試してみたらどう?」


 そう言われてハッと思った。そういえばそうだ。いつも治療が不思議過ぎてそればっかり見ていたが、すぐに立ち上がって台所にいってみようと思った。




 台所に入るとバザリアと他に女性が2人、何か料理をつくるため食材を切っているところだった。


 バザリアが火をつけようとしていたので、さっそく聞いてみることにした。バザリアのところにいき、


「ねーねー、バザリア。バザリアは火をつけることができるでしょ?」


「おや、プヨン。火をつけるって、魔法で火をつけることかい?」


「そうそう。ご飯をつくったりするとき、指で火をつけているでしょ。それ」


「へー、なんで、そんなこと急に気になったんだい?」


 そういいながら、バザリアは人差し指をだして、


「きたれ赤き炎よ、わが指先にとどまりて燃え盛れ」


 と声にだした。


 すると、バザリアの指先は赤く輝き小指くらいの炎が指先で燃え始めた。特に燃料などがなくても燃えるようだ。そして数秒間燃えたあと、徐々に弱まり消えてしまった。


「これって、指は熱いの?どうやって燃えてるの?バザリアは熱くないの?」


 ちょっと興奮して矢継ぎ早に質問した。


 バザリアはもう1度火をつけてくれたが、返事をしようとすると集中が途切れたのか、すぐ火は消えてしまった。


「どうやったらっていうと、木が燃えているのみたことあるだろ?見たことあるから、頭の中で燃えているって状態を想像しながら、それを言葉にして表現してやるんだよ。そしたらできるんだよ」


 イメージ重視なのだろうか。そうするとその原理はどうなのだろう。言っていることはわかるが、理屈がよくわからなかった。説明が続く。 


「他の人は私の出した炎に触れたらもちろん熱いからね。私も指先はちょっと熱さを感じるくらいだけど、顔とか離れたところだと、下手するとやけどするよ。」


「イメージできる、かぁ。見たことあるとかが重要なのかな。自分の出した炎は熱くないんだ。自分のものだから?熱いと感じないんかな?」


(本人は熱さを感じにくいのも不思議だけど、この炎は何が燃えてるんだろう。マジノ粒子が直接燃えてる?)


 聞きながらさらにいろいろと考えてみる。


「ねー、ねー、僕もやってみたいけど、いい?」


「うーん、できるのかい?やってみたら?今やったの見てたろ?火よでろーっていうのをなるべく詳しくお願いして、そこのかまどに向かって火を出す練習してごらんよ」


 そう言うと、バザリアは他の用事をするためにあっちにいってしまった。



 プヨンはせっかく言われたこともあって、火をだしてみようと思う。


(うーん、やっぱり燃えるってことは、何かが燃えてるんだろうかなぁ。それとも直接、炎だけでている? エネルギーを出すっていっても、思っただけだとピンとこないなぁ。ふつうに考えたら、加熱させて木が酸素とむすびついて燃えるようなイメージか?)


 昔、ろうそくの炎に酸素を吹き付けて火を大きくしたことを思い出すが、加減もよくわからずけっこうびくびくしながらも声をだしてみた。


「火でろー」


 かまどの中にソフトボールくらいの火がでてきたが、1秒もしないうちに消えてしまった。


(おぉ、1回で出た。1回でできちゃったとこから、思ったほど難しくないし、みんなもできるのがわかるな。けっこう出るもんなんだな)


 何度か火をだしてみて練習してみた。強く意識すると火が出てすぐ消えるのを繰り返す。


(火が出たことはでたけど、これじゃ長く燃やせないよな。やっぱり燃えるものと空気が結びつくって考えたほうがいいのかなぁ。木の炭素と酸素が燃えるような感じか)


 そのあたりを意識しながら、もう一度試してみた。


「火よ出ろ」


 積み重ねてあった木切れから、けっこうな勢いで炎が噴き出してきた。それも一斉にだ。一部かまどの端から外に漏れてしまっている。


「おわっ」


 予想外に大きな火がでてしまったため、慌てて飛びのいてしまった。木は火が燃え移ったのか、そのまま燃え続けている。


(具体的にイメージしたほうがいいんだな。こんなに一気に火が噴き出るとは。バザリアはちっさい炎を出していたし、上手に加減していたなー。でもうまく火がついたってことは、俺もできたのは上出来だ)


なんとなくできなかったらどうしようと思っていたけどホッとした。


(このまま燃やしていてもなー。今度は消してみようか。空気を与えると燃えるなら、二酸化炭素で包んだら消えるんかな?)


 ろうそくにコップをかぶせて、火を消した実験を思い出していた。


「火よ消えろ」


 かまどの中の木切れ全体が燃えていたが、すぐに火が小さくなり消えてしまった。


(こ、こんなに簡単につけたり消したりできるとは、なんて便利なんだ・・・。寝言で火がついたりしないのか。意識していることが重要だったら、夢でも意識してたりはないのかな?)


 ちょっと脱線したりもしながら、しばらく火をつけたり消したりして遊んぶ。そのうち口に出して「消えろ」などというのが面倒になり、頭の中で思うだけにしてみたところ、それでもしっかり意識していれば、変わらず火をつけたり消したりできた。




 もっと効率よく燃やす何かいい仕組みがないか考えた。


 エネルギーをいきなり熱にするのと、一度分解して燃やすのとどっちがいいんだろうか。そう考えると、二酸化炭素を酸素と炭素に分解しつづけ、それを燃やす。分解してまた燃やすみたいな永久機関もありそうだ。



 ふつうに考えたら逆反応はありえなさそうだけど、イメージでエネルギを供給できるのならそんなこともできるんだろうか。試しみようと思った。



 火よ出ろと指先に手のひらくらいの大きさの火をイメージ。火といっても炎を直接作り出しているわけではない。プラズマ化した気体、酸素と二酸化炭素が循環して燃え続けるようイメージしてみた。



 するとイメージ通り掌の上にソフトボール程度の大きさの火の玉があらわれ、そのまま炎が揺らぎながら燃えている。

 


 二酸化炭素分解を分解、分解……、通常は熱を供給し続けるんだろうがプヨンは逆だ。そうイメージしても火はそのまま燃え続けている。




 さっき火をつけたときはここまで考えなかったのでちっさい火がでただけだ。


 直接、炎=プラズマを発生させるのは極端に効率が悪い気がする。そして、すぐ消えてしまった。



 それよりは、周りにある物質を利用するようなイメージの方が簡単に燃え続けるみたいだ。


「純粋にエネルギーとして使っちゃうよりは、分子を分解する触媒みたいな使い方のほうが効率もいいみたい」



 人々の夢、永久機関がこんなに簡単にできるとは感慨深い。



 不思議で面白くてにこにこしてしまう。つい時間を忘れてしまう。


 結局、意識し続けている限りエネルギーは供給され続けるようだ。特に変わらず炎は燃え続けていたので、そのまま5分ほど燃やし続けてみた。


 途中から循環させる酸素の量を変化させ、それにあわせて炎の大きさを変化させることもできた。酸素増えろーで火の大きさがバレーボールくらいになったり、小さくするときは小指の爪くらいにしたりもできる。イメージして集中はしたけど、それほど疲れも感じなかった。



ブワーン


「うぎゃ。水はダメか」


 しかし水蒸気を分解して燃やすのはダメだ。もう爆発だ。適度に燃やすのと爆発は方法が違う。なかなか奥が深かった。



 続けているうちに気が付いたら数時間経っていた。ちょうどバザリアが戻ってきて、


「どうだい、できたかい?」


 と聞いてきたので、


「うん、できたできた。火の大きさも変えたりできるし、すごい便利だね。僕もできるんだね。」


 バザリアは半信半疑のような顔をしている。


「おー、ほんとかい。火がつけられるって、なかなかすぐはできないよ。すごいね。」


 と言ったが火のついていないかまどを見ると、やれやれと言いたげな顔でまたどこかに行ってしまった。




 プヨンはマジノ粒子の可能性を改めて認識していた。



(きっといろいろできるんだろうなぁ。一番大きいのはエネルギーの移動か。特に逆作用。触媒がわりで結合を切るのも大したエネルギーを使わないでできたし、うまく物質に働きかけさせたら効率よくいろいろできそうだなあぁ)



 今後試したいことがいっぱいだ。今日はかなり興奮して眠れなくなりそうだった。

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