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魔法の使い方教えます  作者: のろろん
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訳あり依頼の受け方 3

 レアに剣での一撃を受けて倒れこんでしまったが、反射的にレアの胸を突き飛ばして、立ち上がった。

 剣があたった腕の痛みはあるが、硬質化のおかげで特に怪我などはないことを確認する。


「ふふふ、所詮、この程度。こんな未熟なものにお兄様が守れるはずがありません。何か言う事はありますか?」

(ひんじゃくひんじゃくぅ~)

「たしかに、未熟なサイズでした・・・」


 プヨンは、それとなく大きさを手で示し、感触を再現するように返事をした。

「サイズ??? まぁ、いいでしょう。理解したのであれば治療してあげましょう。手をお出しなさい」


 レアには、うまく伝わらなかったようだが、ここでことを荒立てる気はない。

 こっそりとだが、少しは言い返したのでプヨンは満足していた。


 素直に手を出そうとしたが、すぐ、レアにサクッととどめを刺されるシーンが頭に浮かんだ。治療の必要もなく、どうしたものかと少しためらっていると、


「大丈夫ですよ?勝負はつきました。これ以上は何もしません。さぁ、腕を治療しますよ」

「ほんと?よかったよ。まぁ、神に仕えるものが嘘ついたりはしないよね・・・。でも、治療はいらないよ。大丈夫だと思うし」


 プヨンは、いらないいらないと手を振ったが、その手を掴まれてしまった。

「遠慮などせず・・・あれ?今、剣の当たったところはどこですか?あれ?あれ?」

 レアに腕を取られて引き寄せられたが、腕は剣のあたったところがわずかに赤い筋になってはいるが、ほとんど怪我らしい怪我はなかった。


 レアは、プヨンの腕と自分の剣を見比べている。切った感触もあった。それなのに剣の刃先が当たって無傷なのはおかしい。そこを確かめようとしたレアが、すぐに小刻みに震えだした。

「ど、どうしたの?なんかあった?」


 斬られた方のプヨンが言うのもおかしいが、心配して、レアの見つめる先を見る。剣の中ほど、ちょうどプヨンの手のところが当たったところだ。刃先にくぼみがあった。


「か、欠けている・・・」

 レアの剣を見たプヨンから思わずつぶやきが出た。レアの金属の剣の切先の一部がくぼんでいる。


 先ほど打ち込んだ時、プヨンの硬質化した部分に当たったからか、部分的に親指くらいの大きさがなくなっていた。足元の砂の上をみると、欠けたほうの金属のかたまりが、大きさの刃先が落ちている。それを拾いあげて、レアに渡した。


「うわーーーー。ゆるせなーいー」

 突然、レアが大声で剣を振り回しはじめた。プヨンは、あわてて飛びのく。

「お兄様にいただいた、私の剣が―。なおせー。すぐになおせー」

「ま、待って。落ち着け。なおすから、落ち着けって」


 ブンブンブン


 剣の風切り音が聞こえる。かなり大振りだから避け易いが、万が一にも当たるわけにはいかない。

「うわー、なおせるわけないでしょー、命でつぐなえー」

(ど、どうしようか。これ、おさまるのか? 思い切ってもう一回やられとくかぁ)

 

 プヨンが場を収めるためには、ここは、おとなしく軽く一回やられるのがいいかなと考えた。


「ジーピーエス」


 プヨンは、体内の魔力の流れを増加させ、回復魔法の一種、常時ピーリングシステムを発生させる。皮膚や筋肉組織を活性化し常時回復状態、言い換えると、組織の自動コピー修復状態になった。

 

 もし、一撃を受けて大けがをしても、完全に切り落とされない限り、即座に修復に入るはずだ。そうしてから、わざとレアの剣の一撃を受けてみた。

 もちろん、軽傷になるように、レアの剣の動きにあわせて上手に手を出し、剣先で浅く斬られるようにする。もちろん、身体の硬質化も部分的に解除しておいた。


「とりゃー」


 声だけかわいらしいレアが本気で切り込んでくる。プヨンは足がもつれたふりをする。


ズバッ


 プヨンは、肘から手首に向かって派手に斬られていた。そのまま、傷をかばいながら地面に倒れこむ。

 プヨンの左腕は肘から手首に向けてきれいに斬られ、縦にぱっくりとわかれていた。が、同時に回復がはじまる。血はほとんど出ず、切断面の表面にわずかに付着しただけだった。

 その切れ筋もすぐに埋まり始める。痛みはもちろんあったが、これも痛覚をコントロールできるようになってきているからか、我慢できない痛みではなかった。


 斬られた瞬間にチクッと感じたが、すでにそれもちょっとひりひりする程度で、すでにマヒしてきている。

 20秒もすると、ジーピーエスの常時回復魔法により、ほぼ元通りになっていた。


「あっ」

 レアの声は、勝ち誇るというよりは、やりすぎてしまったというように聞こえた。さすがに、怒りに身を任せていても、人を傷つけた結果、冷静さを取り戻したのだろう。

(よし、これだけやられたら、レアも遠慮するだろう)


「うわー、いってーー」

 ここは、うまく穏便にすませるべく、血がほとんど出ていないことを悟られないように、大げさに痛がりうずくまっていた。が、プヨンは、ふと気づく。

(あ、もしかして、これは、今、後ろからやられたら、終わるのでは?)


 レアが、やけになって、とどめを刺してこない保証はないが、いまさら派手に動いて元気ですアピールもできない。動くと、また、火に油になりそうだ。プヨンは、うかつに動くことができず、震えていた。


 レアがこちらにゆっくりと近づいてくる。そして、目の前で立ち止まったのは、横目で確認できた。

(サクッとはしないで、とどめはいや・・・。これは、なんか介錯してやろうに見える。一応、硬質化だけしておこう・・・)


 うかつにしゃがんでしまったのも浅はかだった。逃げ去るか、このままいるか、プヨンは思案していた。


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