音響魔法の使い方 3
プヨンは、レスルでヒルマに頼まれた手紙の返事を待っていた。
「プヨン、わたし、ちょっとレオンに用事があるの。帰りは1人か、レオンに送ってもらうわ」
「わかったー。さっきの件もあるから、気を付けてね」
約20分、ユコナと雑談しながら待っていると、サラリスとユコナの知り合いで以前一緒に狩りにいったレオンがやってきて手紙を渡してくれた。
手紙を受け取ったあと、すぐに、きた道を帰っていく。
陽が沈み、薄暗くなってきていた。人通りもほとんどなくなっていた。道から外れ、いつもの空き地をつかったショートカットをしようとしたとき、
「そこの少年、お待ちなさい」
呼び止められた。が、この声は聞き覚えがある。そう、行きに呼び止められた2人の女性だ。
(あ、あれだ。待てと言われて待つやつはいないってことで・・・)
スピードをあげて空き地を駆け抜けようとしたところで、向かいにも女性がいる。空き地の真ん中で挟まれてしまった。
プヨンは、しかたなく立ち止まったが、2人の間に挟まれてしまうかたちになった。
「はじめましてね」
話しかけられた。さっき会ったことはなかったことになっているらしい。
プヨンはもちろん見覚えがなかったが、相手も間違えてルフトを追いかけて行ったくらいだから、プヨンのことはよく知らないようだった。
「えーっと、すいません、どちら様でしたっけ?な、何か御用ですか?」
「あなたがプヨンですよね。この間、メサルの護衛をしていたわよね?さっきは、よくもだましてくれたわね」
こちらの質問には答えず、一方的に糾弾される。やはり、ハリーと絡むのはメサルの護衛しかない。ハリーが怪我をしたのは、どうやら、この2人に関係があるのだろう。だからといって、あからさまに身構えるとかえって危険かもしれない。
しばらく、沈黙が続いたが、おそるおそる、
「そ、そんなつもりはまったくありませんでしたが・・・」
「なんてしらじらしい。聞いていた姿と違っていたからおかしいとは思ったけれど」
「すいません。あんなにうまくいくとは思わなかったもので」
「くっ。確かに聞いていた情報とは全然違うほうをわざわざ追いかけてしまったのは失敗だったわ。しかも、結局取り逃がすし」
ということは、ルフトはなんとか逃げ切ったようだ。さすがに、ルフトがやられることはないとは思っていたが、無事が確定した。もし大けがでもされると、気分がよくないところだったので、これで一安心だった。
(襲うなら襲うでいいんだけど、どこ絡みなのかをわざわざ教えていいのか?)
せっかくなので、もう少し情報収集をしてみることにした。
「メサルの件といえば、ボイラーさん関連ですか?」
誰かわからないので、とりあえずかまをかけてみた。
「そうよ、よく知ってるじゃないの。あいつが失敗したって聞いたから、どんなやつか見てやろうと思ったの」
「え?ボイラーってだれ?ニードネンでは?」
「ルファ、あんた、バカなの?」
「え?え?おねえさま、なんで?」
(ニードネンというのが正解か。真の敵は味方ってやつかな?)
あまりにあっさり確定できてしまったので、プヨンは、拍子抜けしていたが、どこつながりか、貴重な情報が手に入った。もちろん、何食わぬ顔をしている。
相手はそのことには気づいていないようで、何やら小声で言い合いをしているようだった。
言い合いというよりは一方的なお叱りがはじまり、すでに2分はたったはずだ。ルファと呼ばれた方は、ちょっと涙目になってきていた。
プヨンは、かやの外だったので、
「そろそろ帰っていいですか?・・・いいよ」
自分で聞いて自分で返事したプヨンが、少しずつ距離をとっていく。もう少ししたらダッシュしよう。そうして、そそくさと帰ろうとしたところ、
「ちょーっとまったー」
やはり、お声がかかってしまった。いやいや振り返る。
「だまって立ち去るとはどういうつもり?あなたには知り合いが、少しお世話になったそうだから、お話ししたいのだけど」
「そ、そんな。ちゃんといいよって言われましたよ。ルファさん、いじめないでください」
「いじめはしないわよ。ふふふ。私たちがつよいって確認できればいいの・・・って、なんで、私達の名前を知ってるのよ!」
「みんな、同レベルってことですね、ねえさん」
妹側のルファは、姉のほうを向き、涙目から、勝ち誇ったような笑顔になっていた。
 




