入学式、そして実技試験
今日はいよいよ入学式だ。
学園はどうやら優秀な成績を収めたものから卒業できるらしい。
過去最短は2年だとか...ってしおりらしきものに書いてあった。
新調した制服に着替え、リディアと共に宿を出る。
制服は全体的に黒を基調にしたものだ。
なかなかかっこいい。
女子の制服はそれとは逆で、白を基調にした制服だ。
リディアの銀髪と合わさると神秘的だ。
思わず見惚れていると視線に気づいたリディアが小さく微笑む。
100人中100人が絶対に惚れるであろうその姿は道行く人の足を止めていた。
顔が少し赤くなるのを感じながら歩を進めるハルト。
リディアもそれに合わせて歩を進めるのであった。
◇◇◇◇◇
「おぉ..」
「美しい...」
学園に着くたび、道行く貴族の坊ちゃんたちにそう声を掛けられるリディア。
そして俺はというとその坊ちゃんたちにめっちゃ睨まれていた。
「気持ち悪い目つきしやがって...」
とか言われる。
いきなりコンプレックスを指摘されまくって肩を落としている俺にリディアは「私はハルトの目、好きだよ」と言ってくれた。
思わず出そうになる涙を堪えながらリディアに「ありがとな」と言いながら頭に手を置き髪を軽く梳く。
気持ちよさそうにリディアが目を細めると、一部のお嬢様の間では黄色の悲鳴が起き、一部の坊ちゃんたちの間では俺への暴言大会が始まっていた。
ひどいもんだぜ、まったく。
◇◇◇◇◇
今俺たちはグラウンドのようなところにいる。
どうやらそこで入学式を行い、その後に実技のほうに入るようだ。
ざっと見て100人近くいる貴族が並んでいるのはなかなかシュールなものだ。
俺はリディアとは少し離れたところにいる。
貴族たちがものすごい勢いでリディアに群がっているがリディアはどこ吹く風ですべてあしらっている。
時節、こちらに向けて笑みをこぼすので、それに勘違いした貴族がリディアにもうアピールを仕掛けているが、リディアはガン無視している。
感の良い貴族は俺に気づいたようでちらっと見ると去っていった。
その中で年の割にはダンディな貴族がこちらにサムズアップしてきたがなんかイラついたので無視しといた。
10分ほどすると入学式が始まるみたいで、教師たちが貴族に静かにするように言っていた。
入学式はいたって平凡だった。
挨拶から始まり、祝辞、学園長の挨拶、などだ。
学園長の名前は"ラーラ・カートライト"という金髪の女性で、魔法の腕は世界でも5本指に入るらしい。
魔法が使えるようになるまでが楽しみだ。
クラス分けはそれぞれD、C、B、A、Sで分かれてるらしい。
ほとんどがA、Bあたりらしく、Sに行く人はほとんどいないらしい。
D、Cもほとんど人がいないらしい。
行くとしても平民だけだとか。
◇◇◇◇◇
今はグランドの一角にある施設に来ている。
どうやらそこで実技をやるようだ。
自分の番になるまで待っていると、たまに貴族の坊ちゃんたちが「平民のくせにリディア様と婚約とは生意気だ!」とか喚いていたが全力でスルーした。
別に俺が決めたわけじゃないし....。
お、次はリディアの番だな。
実はリディアの魔法はまだ見たことがない。
だからめっちゃ楽しみだ。
「次!リディア・ルシアーノ、適性は....ほぉ、闇と風か。2属性を扱うとはなかなかの才能だ。よし、そこの的に向かって全力で魔法を撃つんだ」
指の先にあるのは王城で見たフルミスリルとまではいかないが、かなりの魔法耐性がある的だ。
「分かりました。【シャドウウルフ】」
リディアの目の前にダークホールのようなものが現れ、そこから出てきたのは真っ黒いオオカミだ。
大きさは4mほどあり、人なら丸呑みできそうだ。
シャドウウルフは目前の的をとらえると、走り出してあと少しでぶつかるというところで前脚を大きく振り上げた。
振り下ろすと同時に的が大きく切り裂けた。
さすがに木端微塵とまではいかないがあと少しで半分に折れるというところのダメージだ。
それを見た教師や周りの貴族は「おぉ...」「さすがリディア様だ...」など感心しているような声を出している。
これは俺も負けられないな。
「詠唱破棄か...なるほど...よし!リディア・ルシアーノはSクラスとする!」
再び周りから「Sクラス...!」「これで5人目か...!」などと声がした。
「よし次!...で最後だな。ハルト・ミョーインジ!」
いよいよ俺の番か。
緊張は...してないな。いつも通りだ。
「属性は...雷?そんな属性は聞いたことがないが...よし、あそこの的に向かって魔法を全力で打つんだ」
そう言って指すのは木でできた的。
おいおい嘘だろ....あんなの魔衝撃だけで壊れるだろ。
【魔衝撃】は、魔力を思いっきり噴出させると出る時の衝撃のことだ。
「え、あれですか?」
「そうだ。わざわざ平民のために魔鉄製の的を出すわけにはいかんからな」
周りから「あの的も壊せないのか?」「リディア様の護衛も役立たずだな」などの声がする。
それにリディアが不満な顔をしているが、さすがにここで言うわけにはいかないのか黙っている。
「はぁ...分かりました。でもあの的を木端微塵にしたら魔鉄製の的を使わせてもらってもいいですか?」
俺は先ほどリディアが使っていた的のことを言う。
ミスリルほどではないがやけに魔法耐性が高いと思ったら魔鉄って言うのか。
「木端微塵?無理だろ...」「平民のくせに生意気な...」などと聞こえるが全部無視だ無視。
こういうのは実力を見せたほうが良いの。
「面白いことを言うな...よし!わかった。できるとは思わんができたら出してやろう」
「言いましたね?言質とりましたからね?」
「わかったわかった。さっさとやれ」
教師は笑いながら早くやるように促す。
「分かりました」
俺は無言で【高圧電流】を作り出す。
使い勝手もよろしく、俺にとっては最も魔力消費が少ない爆散させるのにちょうどいい魔術だ。
周りから「無詠唱だと?!」「あり得ない...」など聞こえるが知らん知らん。
無詠唱とか俺だと当たり前だしな。
腕を前方に出すと、青白い球体が一瞬でいなくなる。
次の瞬間には的が爆散した。
しかし塵の一つも出さずにだ。
呆気にとられる教師陣たち。
口を開けたまま譫言のように「あり得ない」とつぶやいている貴族たち。
なぜかドヤ顔のリディア。
俺はいまだに動かない先ほどの教師に声をかける。
「速く魔鉄製の的を出してください。」
「あ、あぁ...あれが全力なのか?まだ余裕があるように感じたが」
腐っても教師だな。
それくらいは気づくか。
「まさか...全力出します?ここら辺の地形変わりますけど」
俺は口の橋を吊り上げながら教師に言う。
「い、いや..遠慮しておく」
教師が頬を引きつらせながら言う。
「そうですか」
そうこう話していると魔鉄製の的が運び出されたようだ。
俺は先ほどと同じ魔術を使い、魔鉄製の的を塵も残さず爆散させた。
その光景に頬を引きつらせる教師陣と貴族。
そしてドヤ顔のリディア。
なんでお前がドヤ顔なんだと思いながら判定を待っていると学園長自らやってきた。
「教師陣がこのありさまだから私が直接来させてもらった。君の魔法――いや、魔術は実に素晴らしいね」
今、なんていった?
魔術だと?俺は学園長に教えたことなんてないんだが。
俺が警戒をあらわにしていると、学園長が苦笑しながら「安心しろ」といった。
「私が知っているのはルシアーノ王国の国王に聞いたからだよ」
「...あぁ、なるほど」
前に国王権限で何とかって言ってたもんな。
恐らくその時か。
てか何人の個人情報を勝手に荒らしてくれてるんですかねぇ....。
「君のクラスはSだ。おめでとう」
S、か。
リディアと同じだな。
こうして実技試験と入学式は無事?終了したのだった。
ちなみにまだ教師陣と貴族共は何もしゃべらないまま固まっている。