人類vs神の人形
無事(?)40部行きました~!
50部行けるように頑張ります!
【リディア】
ハルトがあの空間に残ってから2日が経った。
この2日で私たちは、ルシアーノ王国、ルーゲノン帝国、そして帝国の次に面積が大きいスフィナリア大王国と同盟を組むことに成功した。
あと一つ、神聖国があるがあの神託が聞こえていたらしく入ることも出ることも禁じられていて国に入ること自体が不可能だった。
同盟を組むのに一時はいざこざがあったが、神獣であるフェルニやヴェル、ドーラの3人の協力で無事に同盟を組むことができた。
同盟を組んだことで兵の数は優に5万を超え、前衛が帝国とクラルスと私とティアとドーラとフェルニと勇者組の攻撃職、中衛がルシアーノ王国と勇者組の魔法職とヴェル、そして後衛がスフィナリア大王国と香織と勇者組の非戦闘職だ。
この大軍隊で編成を組み、ダンジョン近くの平原で陣を構え迎え撃つ作戦だ。
どうしてこの平原に人形が来るか分かったのかというと、ハルトの奴隷を名乗る天族がやってきて、兵たちに使い捨ての錠剤と進行してくる場所を教えてくれたのだ。
最初は疑ったがハルト製の隷属の首輪が嵌められてる点から本当だと判断した。
「リディアさん、後3時間ですね」
ティアが若干緊張じみた声で言う。
「...ん。でも大丈夫、ハルトがいるから」
「ですよね!それに今回はドーラさんもフェルニさんもヴェルさんもいますし!」
「ティア、リディア、怪我したら遠慮なく私のところに来るんだよ?もし来なかったら怒るからね!」
「はい!怪我をしないようにも頑張りますが、怪我をしたらすぐにいきます!」
「...ん、香織も気を付けて」
「うん!」
あと3時間。
これが戦いの幕が開けるまでのタイムリミット。
同時に、ハルトが時間を稼げる最後の数時間でもある。
兵士たちの中には緊張が見られるが、各国のハンターたちはパーティごとに集まり、作戦会議やら何やらをしている。
「...ハルト、死なないでね」
◇◇◇◇◇
「時間だ!全員位置に着けぇ!」
軍隊の総指揮官である私のお父様――アルベルト・ルシアーノがそう叫ぶ。
その号令と共に兵士とハンターが武器を構える。
「敵は強大、気を抜けばすぐに死ぬだろう。だが我々は屈強な戦士!幾多もの争いを乗り越え生き残った戦士だ!敵に屈することはない!進め!それだけだ!...そして――」
一泊間が開いてアルベルトが大きく息を吸い込む。
「絶対に生きて帰るぞ!!」
「「「「おおおおおおおおおおおお!!!!!!!!」」」」
そう言い放つと同時に大地を揺るがすような雄たけびが上がる。
あるものは拳を上げ、あるものは武器を上げる。
「人類に勝利を!悪しき女神に制裁を!」
「「「「人類に勝利を!悪しき女神に制裁を!!!!!」」」」
鼓膜がピリピリと震えるような轟音を出しながら士気を高めていく兵士たち。
その間に3時間が過ぎたのか、空間に切れ目が入る。
この切れ目は...。
「来るぞ!恐れることは何もない!突撃せよ!!」
「「「「おおおおおおおおおお!!!!!!」」」」
神の人形が出ると同時に突撃する兵士たち。
ある兵士は一人の人形を取り囲み、切りかかり、あるものは魔法で攻撃していく。
クラルスは気配を消して近づき、確実に首を狩って死体を量産していく。
「...シッ!」
「うらぁぁぁぁ!!」
気合の声と共に巨大な鎌と剣が一閃される。
それだけで3体の人形は斜めに切断され、動かなくなってしまった。
「リディアさん!右です!」
「...ん!」
右に振り向きざまに鎌を一閃。
人形は2本の大剣で防御するもその剣ごと切断する。
「...ティア!後ろ!」
「はいですぅ!」
しゃがんで大剣の攻撃を回避した後に振り向きながら斜めに振り下ろす。
それだけで人形の上半身はずりずりとずり落ち、上半身と下半身がお別れしてしまう。
「ぬおおあぁぁぁ!!」
腹に響く雄たけびを上げながら5mはあるんじゃないかと思う大剣を縦に振り下ろし、人形を頭から真っ二つにするでかい男――アルベルト。
「がっはっは!まだまだぬるいわい!ぬおおあぁぁぁ!!」
【解体能力】があるにも関わらずこうして相手どれているのはハルトのチートアイテムである"ドーピング剤"があるからだろう。
ステータスは通常の4倍まで引き延ばされ、知覚能力が大幅に上がる。
そんな薬を既に強者レベルの者に飲ませたらどうなるかなど目に見えてわかる。
「ボスのために命を掛けろォ!」
そんなことを口走りながら人形の首を狩り落したのはクラルスの長――カルヴェだ。
カルヴェの声に周りのクラルスも反応し、次々と人形が死んでいく。
クラルスだがハルは武器が遠距離特化なので後衛の部隊に配属している。
シュパッ!
人形の頭にまた一つ風穴ができる。
シュパッ!
今度は心臓を綺麗に撃ち抜かれ、人形は事切れる。
いわずもがな、ハルの狙撃である。
ハルト特製の音が無くなるけど物凄い威力が上がるサプレッサーをプレゼントしたのだが、ハルはそれを使って見事に狙撃を決めているのだ。
「ヒャッハァ!汚物は狙撃じゃあ!」
リナは黒と水色の2本のバスターソードを振り回しながら口に不敵な笑みを浮かべている。
その姿は狂気とも捉えられ、戦を楽しむ歴戦の戦士にも捉えられる。
2本の剣を扱う姿が某フルダイビングVR系主人公に見えるのは気のせいだろう。
「うふふふふ、私の剣の錆になりたいのはどこの誰かしら?」
パァンパァン!
2発の弾丸が人形の頭を捕らえ、見事に撃ち抜く。
「ボスの邪魔をする害虫は片っ端から殺してやらァ!」
そんな物騒なことを言っているのはアスである。
超改造されたハンドガンをガン=カタのように扱い、敵を撃ち殺していく。
警戒して近づいてこない敵には自ら接近し、ほぼゼロ距離で射撃する。
人形の脳汁がぶちまけられ、アスは狂気的な笑みを浮かべる。
『フハハハハ!マスターの邪魔は許さんぞ!』
『ご主人様のために死ね!抗うまでもなく死ね!』
狂ったように暴れまわる巨大な蛇と狼。
もちろん、フェルニとドーラである。
フェルニは雷を纏って高速で動き回り、牙と爪で敵を切り刻んでいく。
ドーラはその蛇の体を生かして、尻尾で叩き潰したり牙から出る毒を浴びせたりして戦っている。
『雑魚どもめが!我が主に仇を成そうとは反吐が出るわ!』
そんなことを言いながら蒼炎を辺りにまき散らしているのはヴェルだ。
上空から人形を捉え、蒼炎の塊や蒼炎のレーザーを当てている。
蒼炎に当たった人形は一瞬で灰になり、どんどん数を減らしていく。
「怪我人はここに運んでくださーい!魔力回復のポーションはあちらに置いてありますよー!」
忙しなく動きまわってるのは治癒師である香織だ。
先ほどから運ばれてくる怪我人を魔法で治しながら、ポーションの位置を知らせたりしている。
その姿はまるで子犬のようで、どこかほっこりさせてしまう。
勇者たちも兵士たちもハンターもみな頑張っている。
神の人形相手にも引けを取らないほど。
◇◇◇◇◇
【ハルト】
「そろそろ開戦か、っと。どこに次元の裂け目ができるかだな。そこから地上に戻って合流しないと」
大天使レベルが普通に出てくるようになってから既に1日が経過している。
大天使以上はたまに下級神が出るくらいで、敵もそんなに強くない。
適当に掴んだ大天使の顔を握りつぶして核を取り出しパイソンで撃ち抜く。
若干、大天使側が恐怖しているように見えるのは気のせいじゃないだろう。
ピキ...ピキピキ...
そんな音と共に次元に裂け目ができ始める。
ピキピキ....パリィン!
遂に裂けてしまった。
俺は兵器と眷属をしまいながら急いで合流するために駆け抜ける。
「地上の奴らは人形の能力相手に少し分が悪いから急いで眷属を増援に回すとしよう」
裂けめに飛び込みながらハルトが呟いたその言葉を聞いたものは誰もいなかった。
部屋には無数の死体と薬莢が転がっており、すでに意識のある者はいない。
死神の大進撃はまだ続く――――――――――。
次回はまたハルト目線に戻ります!
今回の最後もハルト目線でしたが....




