国王、そして学園①
「して、ハルトよ」
国王がハルトを見ながら口を開く。
「ん?なんだ?」
すっかりため語になれたハルトが問う。
「先ほどから儂もピラールも【魅了】をかけているのだが....どうして効果がないのじゃ?」
「【魅了】をかけてたのか....だからさっきから違和感が...」
納得顔で一人頷くハルト。
それを見ている国王一家。
「あー、なぜ効いてないかだったな。俺に【魅了】が効かないのは魔力障壁でレジストしてるからだな」
「なに?魔力障壁だと?リディアが言ってた話は本当だったのか...」
え?リディア話してたの?
思わずリディアを見る。
そしてリディアと目が合う。
じー........。
リディアと目が合ったままリディアが話し始める。
「ん。話した」
「そっか。」
「ごめんなさい」
「いいよいいよ。別に知られても困らない情報だしね」
俺は苦笑しながらしょぼんとなったリディアを慰める。
そんな俺たちの会話を聞いて国王が「ふむ...それほどの情報を聞かれても困らないと申すか...」と一人で呟いている。
何かを考えるしぐさを見せた後、国王が口を開いた。
「ハルトよ、リディアは来週から学園に通うことになったのじゃ」
「学園、ですか?」
「そうじゃ。学園の授業内容として、魔法、体術、座学を教えておる。座学と言っても魔法陣やら魔法をどうすれば構築できるかやらだがな」
「魔法ですか...」
魔法は興味あるな。
イメージと魔法陣だけで起動できるとかどんなチートだよ。
でも魔術は魔法陣とかいらないから魔術のほうがいいのか...?
まぁいいか。
「そうじゃ。そして学園にはリディアのほかにあと一人ほど護衛役として入学してもらう予定だったのだが、それをだれにしようかと悩んでいるときにハルトが来たのじゃ」
へぇ、護衛とかもつけるのか。
まぁ、お姫様だし当たり前か。
「話によるとドラゴンを"魔術"とやらで倒したらしいな。恐ろしいほどの威力をもった”魔術”とやらでな」
俺の頬に冷や汗が流れる。
なんかものすごい嫌な予感がしてきたよ...。
ノリでいきなり来た男に娘を出す国王だから何するかわからないんだよな...怖すぎる。
「しかも年齢も大体リディアと同じくらい。護衛として学園に行かせるのは誰が反対するかのぉ?」
やばい、大体話が見えてきたぞ...。
てかリディアが同じぐらいの年って...ヴァンパイアって長寿みたいな感じのイメージがあるんだよな...。
実は100歳越えとか...?
ふと視線を感じてリディアを見る。
ジト目のリディアが俺を睨んでいた。先ほどの冷や汗とは違う冷や汗が流れる。
じょ、冗談ですよ....
「リディアは今年で16だぞ」
同い年だったのか...。
じゃあ国王たちもそれなりの年齢って事か..?
「ちなみに儂が356歳でピラールがにひゃくゴフゥッ!!」
あ、笑顔のピラールさんに殴られて沈んだ...。
「何も聞いてませんよね?」
「え?」
「聞いてませんよね?」
「あっはい」
ピラールさんの圧力で強制的に頷かされてしまった...。
てか国王大丈夫なのか?
「儂、復活」
しぶといなコイツ。
台所に居る黒光りした虫並みにしぶといんじゃないか?
「まぁそういうことじゃ。リディアと一緒に学園に行ってこい」
デスヨネー。
まぁわかってたよ?でも異世界の学園とかトラブルの予感しかないんだよなぁ...。
しかもリディアと俺って婚約結んでるわけじゃん?
自慢じゃないけどリディアってかなりの美少女なのよ。その美少女が目つきの悪い男と婚約してるって知った男たちはどうすると思う?
妬みとかでやばいことになるぞ。
「えっ、でも筆記試験とかあるんじゃ...」
王族が通う学園なんだ。テストもそれなりに難しいはずじゃ...。
「あ、それは国王権限でパスできるぞ。まぁ実技のほうは受けてもらうがな」
権力の乱用.....
まぁ魔法のことを学べるなら別にいいかな...。
「はぁ...断わっても無駄なんですよね?」
「あたりまえじゃ」
「分かりました、俺も男です。腹をくくりましょう」
「おお!ハルトならそう言ってくれると思ったぞ!」
ほぼ強制なんですがね...。
そんな感じでほぼ強制的に学園に入学することになった...。
てかこの世界の学園って17からなんだね。