神族vs死神
投稿遅くなって申し訳ありません...。
ネタを考えてたら時間がかかってしまいまして...。
「む?誰かと思えば人間の小僧か。その様子だと中級神のアルバーレを退けたようだな」
一つの檻のを前に首だけこちらに向かせながらそう言う年寄り――上級神オーディン。
檻の中には二人の少女が入っている。
「リディア、ティア、助けに来たぞ」
「...ん、信じてた」
「ハルトさぁん!待ってましたぁ!」
周りにも檻があり、その中には地球のクラスメイト達が入っている。
全員がハルトに助けを求めるような目線をしているが、ハルトは最低でもリディアとティアが助かればいいと思っていたので勇者たちには見向きもしない。
相手は神の中でも上級。
決して油断できる相手ではない。
「助けに来たじゃと?ほっほっほ、笑わせてくれるわい。いくら中級神を退けたといっても所詮その程度。上級神である儂には勝てんのじゃよ」
余裕綽々、といった表情でまた檻に視線を戻すオーディン。
「おい、背中を向けてもいいのか?殺し合いはもう始まってるぞ」
神殺を付与した弾丸をオーディンの頭に向けて放つ。
それをオーディンは鬱陶しそうに手で弾こうとするが、その弾丸が自分を手を貫き頭に当たりそうなったときに慌てて首を傾ける。
レールガンモードではないとはいえ、弾丸を視認してからよけたのはさすが神といったところだろうか。
だがうちにも視認してからよけられそうな"バグネコ"がいるからそう大して驚くわけでもないが...。
リディアとティアに当たらないように調整してるから流れ弾が当たる心配はない。
「ほう。人の世に儂を傷つけさせる武器があったのか。だがこの程度の傷ならすぐに....ぬぅ?!」
すぐに再生しようと試みるが一向に塞がらない傷を見て驚愕に目を見開くオーディン。
この世界に死神という者は本来は存在しないのだろうか?だから神相手にもこれほど有効なのだろうか。
「どうした?さっさと再生してみろよ」
その疑問を顔に出さないように口元に笑みを浮かべながら問いただす。
オーディンは俺を睨むように見て――いや、完全に殺気を出しているな。
自分が傷つけられたことがそんなにも嫌だったのか?
「小僧、何をした?儂が再生できぬ傷などないはずだ。例え【エクスカリバー】で合っても時間を掛ければ再生可能なはずなのじゃ。なのになぜこの傷は再生しない?!」
「お前が余裕こいた結果がそれだ。お前の頭に風穴開けられないように次は頑張って避けるんだな」
パイソンを立て続けに発砲し、徐々に自分の背後にリディアとティアが来るように位置を調整する。
だがオーディンもそれには気づいているようで、頑なにそこからは移動しない。
腕や足に風穴を作りながらも頭や心臓を完全に守り抜いているオーディンは実に険しそうな表情だ。
さすがにこれ以上は自分の身を持たないと感じたのか、その場から横に動くように移動する。
俺はすぐさまリディアとティアの檻を背後にし、誰もいないところに移動したオーディンに向かって神殺を付与した無人特攻機や眷属たち、そしてセントリー先輩を配置する。
眷属たちや特攻機はゴーレムなので、影響はないと判断しデーモンコアをオーディンと眷属たちとの間に投げ入れる。
オーディンと眷属たちを囲むように展開した魔力障壁の内側では、目が焼けるかと思うほど猛烈な光が発していて、オーディンの苦しそうなうめき声が聞こえる。
デーモンコアにも神殺を付与しているのでオーディンでも無傷じゃいられないだろう。
俺はその隙にリディアとティアの檻を錬成でこじ開け、リディアたちについている手錠を【鉱物鑑定】で鑑定する。
「魔力封じとステータスをレベル1の状態まで戻す効果がつけられてるのか...すぐに壊すからな」
俺は錬成を発動させ、青白い魔力のスパークを迸らせながら外れるようにモデリングする。
「ガァァァァァ?!」
形が変わったと思ったら体中に凄まじい痛みが走り、思わず錬成を止めてしまう。
「ハルト?!」
「ハルトさん?!」
普段痛みに絶叫を上げないハルトが絶叫を上げた。
それだけでこの二人を混乱させるのには十分だった。
「お、俺は大丈夫だから落ち着け。おそらく鑑定でも認識できない呪いのようなものがかかっているのだろう」
「ぐ、ぐふっ...そうじゃ。その手錠を貴様のようなヒューマンの小僧が壊せるわけがない!その娘の命が惜しければ今すぐ――」
全身をボロボロにしながらも眷属たちを見事退けたオーディンが必死の表情で脅そうとする。
だが――。
バチバチバチッ!!!
オーディンはまた驚愕に目を見開く。
なぜなら雷が辺りに走ったと思ったら手錠を外された猫人族の少女とヴァンパイアの少女がいたのだから。
「こ、小僧!いったい何をしたんだ?!」
「雷で一時的に苦痛を無くして無理やり手錠を壊した。脳に負担がかかるからなるべくやりたくなかったんだがな」
思わず絶句するオーディン。
儂ですら解除に苦悩する手錠を一瞬で解除しただと?ありえない。
人族の小僧如きがそんなことができるわけがない!
そんなことができるのは主神ミルクーレ様だけじゃ!
「さて、見事眷属たちを退けたが結局俺に殺されるお前に冥途の土産をやろう」
「...なんじゃと?」
儂を殺す?
それは不可能じゃ。
例え神殺しの剣であっても儂は必ず蘇る。
ミルクーレ様の加護がある限り。
「俺は【死神】だ。お前を殺すぐらいなら簡単にできる」
「...はったりか?死神なんぞ、この世には存在しない。ミルクーレ様がそうされたのだから!」
「またミルクーレか。まぁ死ぬやつをどうこう言っても意味ないからな。じゃあ死ね」
「じゃから儂は死な――」
ドパァン!
オーディンの頭に一発の風穴ができる。
そして核のようなものを残し、砂となって飛んで行くオーディン。
最後の弾丸にも【神殺】を付与しておいたからこれで完全に死んだはずだ。
「よし、帰るか」
「...ん」
「はい!」
「ちょ、ちょっと待ってくれないかな?!ハルト君?!」
ゲートで帰ろうとするハルトたちを必死にひきとめる香織。
「あ?どうしたんだ?」
「私たちも開放してくれないかな?手錠はないけどさすがにこの檻から脱出するのは無理があるよ!」
「脱出ぐらいできるだろ?ほら、勇者の筋力にものを言わせて無理やり曲げたりさ」
「できないよ?!さすがに勇者でも子供一抱え分ぐらいある鉄骨を筋力で曲げることなんてできないからね?!」
「はぁ?できるだろ?ほら...ふんぬっ!!」
俺は力を入れる掛け声と共に香織の入っている檻の鉄骨を片手でぐにゃりと曲げる。
「...ハルト君、本当に人間なのかな?」
「人間....ではないかもしれん。ステータス測ったら種族が変わってそうだし」
「あはは....やっぱりハルト君はすごいや」
「何だよ急に...」
「別に....。ねぇ、ハルト君?」
「あ?」
「君は中学校の時から目つきが悪いからって何度も呼び出されたり、先輩に殴られたりしてたよね」
「あー、そんなこともあったな。てか本当にどうした」
「それなのに君はクラスメイトからも先輩からも蔑まれていたのに愚痴の一つも零さずに毎日学校に来てたよね」
「...」
あれは相談する相手がいなかったとか、愚痴をこぼして先輩に聞かれたらどうしよう、とか思ってたわけじゃないんだからね!
....うそです。実はめっちゃ怖くて何も言えませんでした。
「あれは中学2年生の秋だったかな。ハルト君はガラの悪い高校生に絡まれていた親子を助けたことがあったね」
あれか。あれは足を踏んだとか踏んでないとかで言い争いになってたところを通りかかったらなぜか「眼を付けた」とか言われた強制的に親子の前に引っ張られたんだよなぁ。
「君は高校生相手にも怖がらずに必死に親子を許してあげてくれるように頼みこんでいたよね」
実際は自分も早く帰りたかったのでとにかく平謝りしてたんだったな。
「最後には人前なのに土下座までして、最終的には許してもらえたんだよね...」
あれはいつまでたっても終わらなそうだから強硬手段に出ただけだったな。
土下座するほうもそうなんだが、土下座されるほうも案外恥ずかしいものだ。
それを人前でずっとやられてたら相手もさすがに嫌になるだろう。
「...んで?」
「私はその時からだったかな。弱くてもほかの人を守れる君が私は――」
――大好きでした。
...薄々感づいてはいたが正面から言われるとなかなか恥ずかしいものだな。
「...そうか」
「あはは。私、何言ってるのかな。ごめんね、急に変なこと言って」
目の端に涙を溜めながら言う香織。
今にも泣きそうなのを我慢してるのがバレバレだ。
「...まぁ別に俺は香織のことが嫌いなわけじゃない。そして別にそういう関係になることも嫌と思ってるわけじゃない」
「...え?」
「それに、なによりリディアたちが一番それを望んでいるからな」
リディアとティアをちらっと見ながら苦笑する。
リディアとティアは「そうしてくれないと許さない」といわんばかりの視線をハルトにぶつけている。
同時に香織にはどこか見守るような、そんな優しい眼差しが送られている。
「...いいの?」
「構わんよ。...なんだ、その、これからよろしくな、香織」
「...うん!」
バッと抱き着いてくる香織を優しく受け止める。
その光景を見ていたクラスメイトからは生暖かい眼差しが向けられていた。
「くぅ~!ついに香織ちゃんまでものにしやがったか!」
「やっぱりこいつ魔王だよ!死神じゃなくて魔王だよ!」
と、野村と尾田。
俺はその二人を見ながら「死神だよ」と苦笑気味に返す。
「やっとくっついたわね。ずっとくっ付かなかったからモヤモヤしてたのよね」
「まったくだぜ。脳筋の俺ですら気づけたのによ」
やれやれ、といった様子で首を振る一ノ瀬と甚太。
甚太、お前にやられると無性に腹が立つぞ。
「おめでとう。その一言だけを言っておく」
言葉だけだと辛辣に聞こえるが、その表情は照れて赤くなっているのが分かる。
やはり一度ライバル――勝手にそう思われてただけだが、その相手に素直に祝福を送るのは恥ずかしいのだろう。
「ああ、ありが――」
『人間たちよ。此度の屈辱、我が神族の主神である私、女神ミルクーレが晴らしてくれよう』
突如頭の中に女の声が響く。
この女はミルクーレと名乗ったからこいつが主神なのは間違いないようだ。
辺りのクラスメイトは突然声が聞こえたことに対してわずかに動揺しているも、静かに耳を澄ましている。
『今から1時間後、神の人形がお前たちの国を、家族を、恋人をも襲うだろう。精々、震えているがよい』
「こいつ本当に女神かよ。言動が完全に"ヤ"のお方なんだが」
『反逆者よ。貴様はこの世界にとって異物。この世界にいてはならないものだ。貴様には真の絶望を教えてやろう』
「自分の身を案じて姿を現さない奴に言われても怖くもなんともないんだが」
『...その余裕、いつまで保っていられるか。すぐにその表情は絶望へと変わるだろう』
それ以降、女の声は聞こえなかった。
「さてお前ら、作戦会議だ」
「...ん」
「神だろうが人形だろうが全部ぶった切ってやりますよ!」
「いい意気込みだが命を大事にな。まず今から1時間後に襲撃をするということだが、その期間を3日に伸ばす」
「「「はぁ?!」」」
勇者たちとリディアたちの声が重なる。
俺はそれを「まあ落ち着け」と制す。
「期間を延ばす方法だが、それは俺がどこかに開かれるであろう次元の裂け目に飛び込む。そしてそこで3日間暴れまわる」
「...無茶はダメ...!」
「そうですよ!いくら不死身だといっても限度というものが...」
「そうだよ!それで死んじゃったら元も子もないんだからね!」
「そこらへんは大丈夫だ。いざとなったらその空間ごと破壊する」
「んなことできんのか?」
「やろうと思えばできると思う。だがこれは最悪の場合だ。そしてお前たちはこの3日で各国の協力を得てほしい」
「待ってくれ、ハルト。なんで各国の協力が必要なんだ?」
「いいか勇者、おそらくさっきの声はこの大陸のすべての人間に聞こえてると思う。その中で地上で戦うとしても、背後から攻撃されたら終わりだろう?」
「...つまり、背後を任せられる確信的な協力者が欲しい?」
「そういうことだ。まずルシアーノ王国の協力を得たいところだが、生憎彼らはヴァンパイア。昼間に活動はできない」
「武力は強くても昼間に活動できなかったら意味がないですね...」
「俺はその欠点を克服するために俺は死神魔法の中の一つ、【改造】を使って一つのアイテムを作った」
懐から黒い腕輪を出す。
これは【改造】が付与されており、改造の内容は欠点の克服というものだ。
「このアイテムの名前は【死神の恩恵】。リディア、ルシアーノ王国の戦える兵の数は?」
「...大体、1万人ぐらい」
「そうか。武力支援は大体7000人ほどで構わないだろう。これを7500個ほど用意する。500個は予備だ」
「なあハルト、ミールクレイク神聖国はどうするんだ?」
「いい質問だ、秋山。この国は諦めろ。奴らはミルクーレとか言う神を信仰している。その時点でもうアウトだ」
「まぁ確かにそうなんだけどよ。どうにかならないのか?」
「最悪、無視でも構わない。だが攻撃をしてきた場合はしっかり反撃しろ。そしてお前たちにはこれをやる」
俺は白い錠剤が10個ずつ入ったカプセルを配っていく。
「これは所詮ドーピング剤だ。これを摂取するとステータスが今の4倍になり、自分の知覚能力が格段に上がる。だがデメリットとして使用後は40分ほど動きにくくなること、1日3錠までしか飲めないってことがある」
「それを破って4錠飲んだ場合はどうなるのかな?」
「全身の筋肉がはち切れ、骨にひびが入り、脳が焼ける」
「....みんな、守って使うわよ」
「「「おお!!」」」
「変なところで団結してるのな...。各国の説得が難しいと感じた場合はフェルニかヴェル、ドーラを連れてけ。あいつらは神獣だから神のことならかなり詳しいぞ。それじゃあ各自ゲートを潜った後は準備をしろ!」
「「「はい!!」」」
ぞろぞろとゲートを潜っていくクラスメイトを見送る。
「...ねぇハルト」
「なんだ?」
「...奴らが来る場所って言うのはもうわかってるんでしょ?」
「...ああ。奴らはこの空間に来た後にゲートで地上に向かうだろう。リディアには嘘をつけないな」
「...当たり前。ハルトのことなら何でもわかる」
「...そうか」
沈黙するリディアと俺。
リディアの顔には若干だが、不安の色が浮かんでいる。
「安心しろ。お前が考える結果にはしない。必ず生きて帰って、あの女神を殺してお前と一緒に故郷に帰る」
「....ん。信じる。だから絶対に帰ってきてね?帰ってこなかったらティアたちと殴ってでも連れ戻しに来るから」
「ははは、怖いな。じゃあそうならないように気を付けるよ」
「...ん」
軽く口付けを交わす。
リディアはゲートを潜り、ルシアーノ王国に協力を要請するために向かう。
「...さぁ、蹂躙を始めよう。まずはグレネードとセントリー先輩の嵐をお見舞いしてやるぜ」
俺はアイテムボックスから150機のセントリー先輩と2000機の無人特攻機を取り出す。
あと数分で1時間が立つ。
――――戦いも幕は開かれた。




