ダンジョン、そして神族
「や、やっと終わったか...」
座り込みながらそういったのは格闘家である甚太だ。
さすがに物理攻撃で【解体】スキルの人形とやりあうのは応えたのだろう。
だがそれ以上に成果があったはずだ。例えばレベル。
俺は神の人形を軽く100体ほどと大天使(笑)のミカエルを倒したせいかは知らないが、レベルの表記が???になっている。
これが事実上のレベル上限なのだろう。
そして新スキルに【リミッター解除】というものを習得し、ほとんどの魔法やスキルのレベルがMAXになっていた。
魔法は【死神魔法】という者を習得していた。
この魔法は神魔法とは違く、何となく使える魔法が分かるのだ。
おそらく称号に関係しているのだろう。
使える魔法の中に【神殺】とか言う名前の魔法があったのだが、おそらく神を殺すとかそんな感じだろう。これでまたこいつらみたいなのが襲ってきても対処しやすくなった。
ここにいる騎士団以外のメンバーは全員がレベルMAXになり、【リミッター解除】を習得したようだ。
このスキルの効果は、普段人間が無意識に制限している力を100%開放するというスキルだ。
このスキルはかなり使えるだろう。
「おい、こんなところで気を抜いてる余裕なんてねぇぞ」
「で、でもハルト、さすがに神レベルの相手と戦ったんだからみんな消耗してるんだ。休ませてやっても――」
「何勘違いしてるんだ?」
「...え?」
「お前はさっきやりあってた人形を神レベルって言ったな?」
「あ、ああ」
「それは間違いだ。あれは神の捨て駒に過ぎない。神レベルってのは俺が殺した大天使レベルのことだぞ。あの大天使でも神で例えるなら精々下級程度だと思うがな」
「そ、そんな...そんな相手をお前は一方的に嬲り殺したって言うのか?」
「そうだ。正直言って、あれでも弱すぎるレベルだ」
「...やっぱりお前は化け物だよ。勇者はお前がやったほうがいいと思うな...」
ははっ、と自嘲気味に笑う和希。
「それはちげぇよ」
「...どういうことだ?」
「いいか?勇者ってのはな、勇気がある者って意味だ」
「それはそうだが...」
いまいち話の趣向が掴めないといった顔をする和希。
「俺はそんなたいそうなものじゃない。リディアが誰かに奪われたら怒りのままにすべてを破壊するし、ティアが誰かに殺されたりしたら世界を破壊する自信がある。勿論レミアもルリィもドーラもフェルニもヴェルもそうだ。あの学園のクラスメイトも、な」
「...は?」
「お前はそうじゃないだろ?しっかり周りを見れる力がある。俺みたいに怒りに身を任せて暴れるんじゃなくて、その状況に合わせて適切な判断ができる。だからクラスのみんなはお前のもとに集まるんだろ?」
「...そう、なのか?」
「そうなんだよ。しっかり勇者として自信を持て。そしてこの世界の人々に希望を与えろ。それが勇者だ」
「...そう、だよな。俺がいつまでもくよくよしてられないよな...!みんな!この先の魔物も手ごわいと思うが頑張ろう!」
自信を取り戻した和希の言葉に「おお!」と返事をする勇者一行。
この調子で攻略できればいいんだが...。
◇◇◇◇◇
場所は打って変わって99階層の次層への階段前。
ここに来るまでで敵の強さにも慣れたのか、それぞれが一人でも敵を倒せるようになっていた。
さすがに非戦闘職は無理だが。
99階層までの敵は全員が神の人形であり、99階層の道中はほとんどが中級レベルの天使だった。
この階層で急にハルトが「ここで戦闘技術を磨け。そして一人で天使を殺せるようになるまではこの先に進まん」という一声で全員が戦慄した表情になり、騎士団の人に関してはもう死ぬんじゃないか、って思うほど悲惨な表情をしていた。
俺は天使たちでは相手にならないので、リディアとティアをレベリングさせ、簡易ホームを用意し、なるべく疲れを落とせるようにしたりした。
そしてなぜか非戦闘職である香織が天使2人を相手に、杖や王城で習ったのかは知らないが、剣で天使をぶった切ったりしていた。
治癒師なのに絶対治癒師じゃないだろと思うような戦闘をしていたので、思わず褒めてしまったぐらいだ。
「お前ら、ここまでよく頑張ったな。次はいよいよ100階層、ボス戦だ。気を引き締めて行けよ!」
「「「おおお!!!」」」
それぞれの武器を上げ、ハルトの扇動に声を上げる勇者たち。
階段を下りた先は真っ白な広い部屋で、ここにいるだけで方向感覚を狂わせる。
「ようこそ、反逆者たちよ」
男とも女ともとれる声が部屋に響く。
辺りを見回すが、声を発すような人物は周りにいない。
「私の名は中級神、"アルバーレ"。主神ミルクーレ様の命により、反逆者を断罪する」
その声と共に俺を一人だけ囲むように光の壁が立ち上がる。
リディアたちはどこからともなく現れた檻に入れられ、どこかへ転移してしまった。
「...リディアとティアをどこにやった?」
理性を失わないように落ち着きながら問う。
落ち着け俺、怒っても何か変わるわけじゃないだろ。
「上級神、"オーディン"様のもとにお送りしただけだ。あのヴァンパイアの少女と猫人族の少女はなかなかの美貌だったから妾ぐらいにはなれるんじゃないか?」
「...」
「おや?確かあの少女たちは君の恋人だったかな?連れ去られたショックでも声も出ないかい?」
「...」
ハルトは下を向いたまま動かない。
だがその体から出る雰囲気はどこかうずうずしいものを感じさせる。
「そういえば、まだ姿を現してなかったね?これが僕のすがぐおぁ?!」
「俺の女を...何にするって言ってんだァ”ァ”ァ”ァ”!!」
僅かな理性を保ちながらもアルバーレの腹に手を突っ込む。
そしてそのまま力を入れ、背中を貫く。
「ぐふっ....魔法をかけてないとはいえ、神の素の防御力を突破するなんて化け物だね...でも私は神。人如きが傷つけた傷などすぐに再生するのさ」
体が光で包まれる。
数秒後、アルバーレは自信満々の表情で現れたが、傷は治っていない。
「どうだい?これが神の力ぐふっ?!な、なんで?!傷が...」
「言ってなかったな...俺はこう見えても【死神】なんだ。無名の神を殺すぐらいどうってことねぇんだよ。だから大人しく殺されろや」
「そ、そんな!あり得ない!人が【死神】だなんてぐふぅ?!」
今度は心臓のあたりに手を突っ込む。
石のようなものを掴み、思いっきり引っこ抜く。
「これがお前らの核か?へぇ、結構魔力溜めてんじゃん」
「や、やめろ!それが無くなったら私は本当に消滅してしまう!」
「そうなのか..。じゃあ交渉しよう。オーディンとか言うやつのところに行かせてくれたらこれは返してやる。どうだ?」
「わ、わかった...。我願う、上級神オーディンのもとへ導きたまへ」
おそらく神魔法であろうか。
光の扉が出現するとゆっくりと開かれる。
「こ、これがオーディン様の宮の扉だ!は、早く核を返してくれ!」
「ほらよ」
俺は軽く投げる感じで核を返す。
アルバーレはそれを慌てた感じでキャッチする。
そして俺は扉を潜る瞬間にパイソンを構え――。
「俺にちょっかいを掛けたやつを生かしておくと思うか?」
ドパァン!
銃弾がアルバーレの心臓と核ごと撃ち抜く。
「な、なんで...」
すべてを言う前に砂のようになってどこかへ飛んで行くアルバーレだったもの。
あいつは完全にこの世から消滅した。
蘇ることももうないだろう。
俺は押さえつけれない激怒の感情の渦を無理やり押さえつけながら扉を潜る。
さぁ、絶望を教えてやるよ。
「死神に手を出したこと....」
――後悔しやがれ。
最近書き方が雑になってる気がしますねぇ...。
 




