国王、そして婚約
今俺は城のものすごい装飾を施された廊下を歩いている。
どうやらこの廊下が国王がいる部屋に続いているらしい。
しばらく歩いていると先ほどの装飾など比べ物にならないほど宝石類が付いているどでかい扉が見えた。
恐らくあれが国王がいる部屋の扉だろう。
「ハルト、着いた」
「あぁ。てかめっちゃでかいな...」
「うん。しかも重いから開けにくい」
そういいながらリディアは扉に手をかけ思いっきり押した。
扉はバタンッ!といい音を立てて盛大に開いてしまった。
え?さっき重いから開けにくいって言ってたのに軽々と開けちゃったよ....。
筋力どうなってんですか...。あんな細い腕にそんな力があるとは思えないんだけど...。
さすが異世界。何でもありだな。
中には2mぐらいありそうな巨体を持ったムキムキのおっさんと、それに寄り添うリディアに似た銀髪の女性がいた。
あれが国王とリディアのお母さんかな?
「おおリディア!やっとかえったか!」
「ん、ただいま。思った以上にすばしっこくて手こずった」
すばしっこいというのはあのオオカミのことだろう。
あれですばしっこいって....。化け物かな?
「む、リディアよ。その目つきの悪い男は誰だ?」
いきなりコンプレックス指摘してきましたよこの人。
今のでマインド全部持ってかれましたわ....。
「彼はハルト。森であって助けてもらった」
「リディアが勝てない相手だと?ちなみになんの魔物だったのだ?」
「ドラゴンだった」
「なに!?ドラゴンだと!?本当だったら直接儂が行くしかないのだが....助けてもらったということはハルトとやらがドラゴンを倒したのか?」
「うん。一撃で倒した」
「一撃だと!?儂でも手こずる相手を一撃か...恐ろしいな...」
いや、俺はムキムキのあんたがゆるゆるの表情でリディアと話してるのが怖いよ。
「おっと、自己紹介がまだじゃったな。儂は"ルシアーノ王国"の国王、アルベルト・ルシアーノだ。んで、先ほどから笑ったまま微動だにしないこの女が儂の妻、ピラール・ルシアーノだ」
やっぱり国王だったのか。
てか笑ったまま微動だにしないって怖くね?一種のホラーだよ。
「先ほどご紹介にあずかりました。ハルトと申します。よろしくお願いします」
とりあえず丁寧に挨拶してみる。
いきなりため語で話しかけて「無礼者!」とか言われながら首をはねられたら本末転倒だからな。
「ガハハ!娘を助けてもらったのじゃ。そんな堅苦しい喋り方をせんでもよい」
「しかし...」
「気にするな!ガハハ!」
この国王様はかなりフレンドリーな性格をしてるらしい。
そのうち「ヘイブラザー!元気してるか?」とか言ってきそうだな。
「...分かった。でも怒るなよ?」
「ガハハ!娘を助けてもらった恩人に怒るわけなかろう!」
この国王様は良い人だな。短い会話の中でもそれがよくわかる。
てかさっきから笑ったまま微動だにしてないピラールさんが怖いんですけど。
「ところで、二人はお付き合いとかしてるんですの?」
....喋ったぁぁぁぁっぁぁ!!
喋ったよ!?てか綺麗な声だな。
やっぱりリディアと親子なんだな。
「お母さん?!何言ってるの?!」
リディアが真っ赤になりながらピラールさんを問い詰める。
てか真っ赤になったリディアも新鮮だな。
「あらあら、でもハルトさんのほうはあなたに惚れてますよ?」
「ブッ!!」
今度は俺が真っ赤になったぜ。
まぁ確かにリディアはかわいいし、いい子だとは思うんだけど...。
「...本当?」
えっ。
リディアさん、なんで真っ赤になりながら聞いてくるんですか。
くそ、可愛すぎる....。
「..あぁ、まぁ」
そしてさらに真っ赤になるリディア。
頭から湯気とか出てきそうだな。
「あらあら、青春ですわねぇ」
のんきなことを言わないでくださいピラールさん。
元はと言えばあなたが原因でしょ?!
「ガハハ!よしハルト!お前に娘をやろう!」
「えぇ!?何言ってんですか?!」
こいつ本当に王様か?
いきなり娘をやろうとか。頭のねじ数本ぐらい落としてるんじゃ...?
「リディアもすっかりハルトに惚れておるようだし、嫌々ほかの男と結婚させるのもかわいそうじゃしのう...。リディアもそれでいいじゃろ?」
「うん。それがいい。それ以外ダメ」
リディアは真っ赤になりながら何度も頷いている。
ここまで言われるとこっちが恥ずかしいんだけど...。
「ということじゃ。よいな?ハルト」
「え、でもそれは世間的に「よいな?」...分かった」
そうして俺はほぼ強制的に婚約を結ばされることになったのだ。
リディアと結婚できるなら俺もうれしいからいいけどね。