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誘拐組織、そして娘

錬成術の授業から2週間ほどが経った。


「うーっす」

毎度この挨拶が定番になってきたなと思いながら教室のドアを開ける。

「おはよーさん!」

「アレンはいつも元気だなぁ」

「ま、それが取り柄だからな!リディアもおはよーさん!」

「おはよ」

「それよりよ!明日から夏休みだけどどうするよ!?」

「あー、俺はギルドに行ってみようと思う」

「私も一緒」

「ギルドか...俺も、と言いたいところだが実家に帰らねぇとな」

「そうか」


「お前ら...ってもう席についてるか」


教室に入ってきたのはラーラ先生だ。


「もう知ってると思うが明日は夏休みだ。夏休み前に授業をするのもなんだから少しだけ話して終わりにしようと思う」


教室のいたるところから「さすがだぜ!」や「ラーラ先生最高!」などの歓声が聞こえてくる。

まぁ話だけだもんな。やったぜ。


「まぁ話といってもギルドについてなんだがな」

おっまじか。それはうれしい。

「まぁギルドに入りたい奴は帰る前に声をかけてくれ。今の実力にふさわしいランクの紹介状を書いてやる。それじゃあ夏休み中にケガをするなよ!楽しんで来い!解散!」

「「「うおぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!」」」


ものすごいな...。

てか誰もラーラ先生のところ行ってないわ。

まぁ待ち時間が無くなったからラッキーだな。


「ん?お前らはギルドに加入するのか?」

「まぁ、ハイ。お金を貯めておきたいですしね」

「それはいいことだな。じゃあ紹介状で上げれる最高ランクのBの紹介状を書いてやろう」

「ありがとうございます」

「二人ともBで構わないな。....ほれ、これを持っていけば大丈夫だぞ」

「ありがとうございます、では」

「あぁ、少し待て。お前たち、夏休み明けから学校来なくてもいいぞ」

「...は?」

「ほらな?お前らは学生のレベルを通り越してるだろ?だから来ても来なくてもいいよってことだ」

「そ、そうなんですか....わかりました」

「おう、じゃあな」

「はい!ありがとうございました」

「ありがとうございました」


◇◇◇◇◇


さて、早速ギルドに行こうと思う。

ギルドは噴水広場のさらに奥に行ったところにある馬鹿でかい建物だ。


移動が面倒なので魔道2輪駆動車で行こうと思う。


「しっかり捕まっとけよ」

「ん、絶対に離さない」


ブロロロロロッという心地のいい音と共に動き出す。

ある程度スピードが出ると風が当たって気持ちがいい。


あっという間にギルドの前についてしまった。

ギルドの前ではバイクを見て目を見開くものや、リディアに対して値踏みするような目線を向けるようなものまでさまざまだった。

リディアに対して目線を向けたやつに威圧と殺気を混ぜた視線で睨み返すとすぐに視線をそらした。


ギルドの中は思ったよりきれいで、2階が飲食店になっていた。

当然、入り口から入ってきた俺たちは目立つらしく、テンプレよろしく絡んでくる奴もいた。


「おうおうガキのくせにいい女連れてれてんなァ?」

「だろ。リディアは最高の女だ」

「なぁ嬢ちゃん、そんなガキより俺と遊ばねぇか?俺なら楽しませてやれるぜ?」

「無理。あなたみたいな人は私が最も嫌いな人。近づかないで」

「なんだとぉ!?このガキィ!」

「なに触ろうとしてんだァ”!?ア”ァ”!?」

「ヒャッ...」


リディアに触れようとしてたから思わず本気で殺気をぶつけちまった。

てかこいつ....漏らしてやがる....それに気絶してる。

こりゃあ次に来た時にこいつはもういなくなってんだろうなぁ。


「いくぞ、リディア」

「ん」


先ほどのやり取りを見ていたほかの冒険者は殺気に運悪く当たってしまって気絶してるものや、当たってなくてもあまりの迫力に目をそらして出て行ってしまったものがほとんどだ。


「すいません、紹介状を持ってきたのですが」


受付にいる女の人に声をかける。

やっぱり受付さんはどこの世界でも美人なんだな。


「学園の生徒の方ですね?ギルドマスターに取り次ぎますのでお待ちください」


しばらく待っていると、いかつい風貌のいかにもギルドマスターです的な人が出てきた。


「おう、テメェがBランクの紹介状を持ってきたガキか?」

「ああ、そうだ」

「ギルドマスターの俺にタメ語か。なかなか肝が据わってんじゃねぇか」

「まぁな。そんなことより、早く登録したいんだが」

「まぁそんな急ぐなって。登録はしてもいいが俺と模擬戦をしてもらうぜ?」

「なんでだ?俺にメリットが感じられない」

「俺がやりたいからだな。勝ったらAランクにしてやらんでもない」

「その言葉、嘘じゃないだろうな?」

「勝ったらだけどな。カッカッカ!」


思わず太腿にあるパイソンに手が伸びてしまう。

落ち着け俺。俺は日本人。そう、善良な日本人だ。


「わかった。お前と模擬戦をしよう」

「おし。じゃあ場所はギルド裏の訓練場だ」

「ああ」


◇◇◇◇◇


「カッカッカ!逃げずに来たようだな!」

「誰が逃げるかボケ。こちとらランクがかかってんだよ」

「それもそうだな!カッカッカ!」


周りを見れば多くの冒険者が俺たちを囲んでいる。

中には俺を値踏みするような目の奴もいる。


「じゃあ行くぞ!ゼアァ!」


ドパァン!


訓練場に響く一発の銃声。

一瞬、何が起きたかわからないといった様子で動きを止めるギルドマスターだが、ふと痛みを感じたのか自分の太腿を見る。

そこには数センチの穴が開いており、大腿動脈を撃ち抜かれたのか、血があふれんばかりに噴出している。

一泊遅れてやってきた痛みに一瞬顔をしかめるが、気にせずに突っ込んでくる。


ドパァンドパァン!!


2発分響く銃声。

早撃ちに慣れてないのでかなり遅かったが、いかにギルドマスターでも弾丸を視認してからよけるのはできないようだ。ちなみにレールガンモードだと四肢が吹っ飛ぶからやっていない。


今度は手首を両方撃ち抜かれ、自分の獲物を落とす。

手首からは血がとめどなく流れている。


「...負けだ」


さすがにこんな負け方をするとは思ってなかったのか、苦笑い気味にギルドマスターが宣言する。

直後、地震かと思うほど大地を揺らす歓声が巻き上がった。


「一体なんの魔法を使ったんだ?その鉄の筒が光ったと思ったら足や腕に穴が開いていたんだが...」

「どこに自分の戦力の秘密を喋る馬鹿がいるんだよ。治療するからおとなしくしとけ」

「カカカ!確かにそうだな」


楽しそうに笑うギルドマスターを横目に、リカバリーで傷をいやしていく。


「ガキ、名前は?」

「まず自分から名乗れよ。社会の常識だぞ」

「カッカッカ!これは一本取られたな!俺の名前はゼノ・バーガスだ!」

「ハルトだ。てか、ちゃんとAランクにしてくれんだろうな?あそこにいる女の子もだぞ」

「ぬっ?!...まぁいい。これでもギルド本部のギルドマスターだ。二人分ぐらいどうということない」

「そうかよ。じゃあ期待してるぜ」

「うむ!任せるがいい!」


◇◇◇◇◇


「ほれ、Aランクギルドカードだ」

「これが...なるほど」


渡されたのはAランクの証でもある金色のギルドカードだ。

ギルドカードには名前、種族、ランクが乗っており、身分証明書にもなる。


「それで、早速なのだが、受けてほしい依頼があるのだ」

「唐突だな。内容にもよるが、大抵の依頼は受けても構わない」


こっちは2か月分の夏休みがあり、さらに学校は来ても来なくてもいいといわれているのだ。

時間ならたっぷりある。


「うむ。ここから少し奥に行くと、スラム街があるだろ?」

「ああ」

「そこをアジトにしている誘拐組織をつぶしてきてほしいのだ」

「潰すって...本当にできると思ってるのか?」

「思っている。ハルト、先の模擬戦でも手加減していただろ?」


確かに手加減はしていたな。

その場から一歩も動いてないし、レールガンモードも使ってない。


「....ったく。面倒なギルドマスターに目を付けられたもんだ」

「依頼が難しい分、報酬は弾ませてもらう。どうだ?」

「...わかった。依頼を受けよう」

「助かる。誘拐組織のアジトにいる子供は現在確認出来て5人。構成員は20人ほどだ」

「事後処理は頼んだぞ。さすがにしたいの始末はごめんだ」

「わかっているさ。では、頼んだぞ」

「ああ」


ギルドマスターの部屋を出て、一階の受付前に出ると案の定というかなんというか...まぁ勧誘を受けたわけよ。

当然、全部めんどくさいから却下。

それでもしつこく付き纏ってきたり、リディアに手を出そうとした奴はアイアンクローで頭蓋骨にヒビを入れてやった。


◇◇◇◇◇


「ハルト、何か手伝うことある?」

「そうだな....構成員は全員俺が肉片にするからリディアは子供の保護を頼む」

「わかった。任せて」


やっぱり一番頼れるのはリディアだな。

さて、と。構成員は20人ほど。誘拐された子供の人数は5人。

アジトに乗り込んで正面から潰すのが一番楽なんだが、人質を取られるとなぁ。

まぁ取られても俺にはパイソンがあるから構わないんだが。


「正面から突っ込むぞ。リディアは俺の後ろからついてこい」

「わかった」


スラム街に入り、言われた通りの道順で歩くと、一つの建物にたどり着いた。

見た目はまんま一軒家で、【サーチ】を使うと地下に構成員らしき者の反応が10、人質は4人。

地下の一番奥の部屋に3人と子供一人。


「リディア、地下に構成員が13人だ。子供も全員いる」

「わかった。上にいる奴らは?」

「俺が秒で殺す」


家の前に行き、扉をけり開ける。

バゴォ!という音と共に扉が室内に吹っ飛んでいく。

当然のこと、その音で何人かやってくるが、全員パイソンのレールガンモードで肉片に変えてやった。

頭を打ったら衝撃で上半身が粉々になるからね。仕方ないね。


上にいる奴らは全員片付け終わったから地下に行くことにする。

階段は床を外すと現れる仕組みになってたが、ぶち抜いたので関係なかった。


「なんだこのガキ!」

「おい!男は殺せ!女は上玉だ!売ればいい金になるぞ!」


男たちの言動に青筋が浮かび上がる。

俺は無言のまま男たちを肉片に変えてやった。

俺は善良な日本人。これは平和的な解決だから大丈夫。


「ハルト、怒らないで。私はハルトの女。どこにも行かない」

「...そうだな。お前は俺の女だ。一生離さない」


こんなところでもイチャイチャする二人。

ある意味尊敬できる。


「おい!こっちだ!」

「なんだこの肉片!」

「このガキだ!このガキがあいつらを殺しやがった!」

「うるせぇ。少しは静かにしろよ」


ドォパァァン!


少し間が長引いた銃声。

うるさかったから6人ほど衝撃的に肉片に変えてしまった。


残りの二人は別室に閉じこもっていたので、手榴弾を送ってやったら二人仲良く爆散した。

中に子供がいないことは確認済みだ。


「リディアは誘拐された子供たちの保護を。俺は奥の部屋に行く」

「わかった。早く戻ってきてね」

「ああ」


リディアは俺が教えた部屋に入り、子供を保護。

俺は正面のドアを蹴り破り、パイソンをぶら下げながら部屋に入った。


「んだガキがァ!」

「ボス、どうします?」

「どうするも何も早く殺せ。おれは今からお楽しみなんだ」


ボスと呼ばれた男の視線の先にあるのは、手錠で腕を拘束された6歳ぐらいの女の子だ。

小説でよく見る海人族と呼ばれる種族だな。

エメラルドグリーンの髪を肩より少し伸ばした髪型が特徴的だ。

まだ幼いとはいえ、大きくなれば必ず美人になるだろう。


「うるせぇな。雑魚がピーピー喚くなよ」


ドパァンドパァン!!


有無を言わずに肉片になる二人の護衛らしき者。

幼女が涙目になり、一瞬「やっちまったか?」と思ったハルト。

さすがに幼女に肉片を見せるのはよろしくないよな。


俺は【縮地】を発動し、一瞬で幼女を保護しボスと呼ばれた男から離れる。


「な?!返せ!それは俺のものだぞ!」

「人を物みたいに言うんじゃねぇよ。...あー、なんだ。少しだけ目をつむって耳をふさげ。わかったか?」


なるべく優しく幼女に問いかける。

幼女は必死に頷き、目を閉じ耳をふさぐ。

俺は「いい子だ」といい、片腕抱きになっている幼女の頭を軽くなで、ボスと呼ばれた男と向き合う。


「自分の人生の運のなさを恨むんだな」

「な、何を言って――」


ドパァン!!


銃声が鳴りやみ、ドサッという音と共に男が崩れ落ちる。

この部屋にいると血の匂いでこの子に悪影響なのでは?と思った俺はすぐさま移動を開始する。

リディアが子供を保護している部屋に入り、抱いている幼女に「もういいぞ。よく耐えたな」と優しく微笑む。


幼女は「うん!パパ!」というと――パパ?


「パパ?」

「うん!」

「俺が?」

「そうなの!」

「なんでぇ?」

「ルリィはパパがいないの...でも助けてくれたパパはパパなの!」

「そ、そうか...」


どうやらいつの間にか俺はパパになってたらしい。

そんな俺をみてリディアが「私は?」とルリィという少女に問いかけていた。


「...お姉ちゃん?」

「グハァ」


リディアが吐血した。

一体何がしたかったのだろうか....。


「と、とにかく、一度地上に出るぞ」


◇◇◇◇◇


「なーるほどねぇ...。海人族の少女か...嬢ちゃん、名前は?」

「ルリィはルリィなの!」

「そうかそうか。ルリィちゃんか...」

「海人族ってなにかあるのか?」

「別にあるわけじゃないが...種族全体が家族みたいなもんだから、この一件どうなるのか...」

「なるほどねぇ。まぁそこらへんは国のお偉いさんとでも決めてくれや。あと死体掃除頼んだぞ」

「あぁ。ちなみに死体の状況は?」

「ボスを除いて全員下半身だけだ。上半身は文字通り肉片にした」

「お前...いや、もう何も言わん。それより、その子はどうするんだ?」

「あぁ、一度、騎士団の詰所に預けようかと――」


腕が引っ張られるような感覚に、思わず下を見る。

そこには涙目のルリィの姿が....!


「パパ、どこか行っちゃうの?」

「あ、あー、その、だな、パパはルリィのパパじゃないんだ、だから、な?」

「パパ、離れちゃうの?」

目の端に涙をためるルリィ。


「ぐっ...仕方ない。ルリィ、お前をママのところに送ってやる」

「ほんと!?パパも一緒?」

「ああ、一緒だ」

「やったぁ!」


先ほどまでの涙が嘘のようになくなり、花のような笑顔になるルリィ。


「悪いなリディア。勝手に決めちまって」

「問題ない。私もこの子のことは好きだからwin-win」

「どこで覚えてきたんだ....工藤さんか。それ以外ありえん」


はぁ、とため息が出る。


「どうやら意見は纏まったようだな!ちなみにここが一番近い海人族の住処だ」

「助かる。ちなみに今回の依頼の報酬は?」

「組織の壊滅、ということで金貨100枚ほどだ」

「...まぁいいか」

「悪いな。このギルドもカツカツなんだ」

「気にするな。それに、金なら腐るほど持っている」

「カッカッカ!そう言ってもらえると助かる!」

「ああ、じゃあ行くわ。じゃあな」

「おう!また来いよ!」


こうして無事にAランクになり、娘ができたハルトであった。

次回は新しく錬成しますよ~。

海に行くんだから当然作るものは...ね?

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