錬成術、そして新たな兵器
「うーっす」
「おはよ」
「ハルトにリディア!おはよーさん!」
ったく。毎度のことだがアレンはいつもうるせぇな。
まぁこいつが静かだと逆に調子狂うんだが。
「今日の実技って錬成術だろ?俺苦手なんだよなぁ」
「そうなのか?俺はかなり得意だぞ。ほら」
俺は簡易的な魔法陣を作り、机の一部を馬の形に変えて見せる。
おお、結構うまくできたな。これ家に帰ったら作って飾るか。
「やっぱりハルトはすげぇなぁ。この世界で勝てるのはリディアぐらいじゃねぇか?」
「さすがにリディアだけではないと思うが...まぁ負ける自信はないな」
「お前ら席付けー。今日はいきなりだが午前と午後で実技の錬成術をやることになった。というわけで移動するぞ」
移動先は定番のグラウンドだ。
てか本当に急だな。
「基本的なことはあちらのほうでほかの教師方が説明しているからわからなくなったら行ってみろ。あとは各自自由に」
この人本当に学園長?なんか最近の授業全部適当だよな...。
まぁいい。俺もそれで助かるしな。
早速材料の鉄...じゃ強度が心配だから個人的に持ってきた魔鉄を使うことにする。
入手源?それは勿論ルシアーノ王国かな。
前から作りたいと思ってた重火器を作ろうと思う。
リボルバーか拳銃か...個人的にはリボルバーのほうがいいんだよなぁ。
いちいちコッキングしなくてもいいしリロードも楽だしな。
モデルはコルトパイソンだな。定番だし。
シリンダーにはしっかり魔力強化できるようにしないとな。じゃないとレールガンモードで撃った時に壊れかねない。
とりあえず大方のパーツはできたな。
これを組み立てて融合するところは錬成術を使って...。
よし、これでいいな。
色は黒より暗い闇色だ。かっこいい。
続いては弾丸なんだが...んー、なにかいい魔法はないかなぁ...。
錬成で作るのはいいんだがいかんせん時間がかかりすぎる。
一気に12発ぐらい同時に作れないかな...。
そうだ、インゴットを何発かの弾丸のイメージを持って錬成したら行けるんちゃう?
やってみるか。これで出来たらラッキーだな....。
「錬成開始【モデリング】」
ぐぅ...慣れてないから予想以上に魔力を持ってかれるな...。
だがこれで行けるはずだ...結果は――...。
「よっしゃ!成功だ!」
さて、ここからが本題だ。
レールガンモードを起動するためには雷魔術を付与しなければいけない。
そして肝心な付与方法なのだが、魔法付与で魔術を付与できるかがわからないのだ。
これで出来なかったら泣くぞ、と思いつつ魔法付与を発動させ、同時に雷魔術を発動させる。
10分ほど魔力を流し続けていると、パイソンに変化が現れた。
グリップのところに魔法陣が現れ、その魔法陣から銃全体に魔力が流れているのだ。
魔力の供給を止めると、その魔法陣も魔力が止まる。
これは成功だな。
思ったより簡単で助かった...。
「早速試し撃ち、と行きますか」
シリンダーに強化魔法を施した純鉄の弾丸を入れる。
なんで強化魔法を施したかって?なんか空中分解しそうな気がしたから。
的は....適当に錬成した鉄の塊でいいか。
銃口を的に向けトリガーを引く。
ドパァァァン!!!
という音と共に弾丸が音速を超える勢いで発射され、わずか10mほど先にある鉄塊は木っ端みじんに粉砕された。
「うせやろ...この威力は予想外だな...」
とりあえずこれと同じものをあと一丁ほど作り、素材置き場にある適当な革でレッグホルスターを作り、太腿に固定する。
「サイズもぴったり...いやぁ、憧れてたんだよなぁこういうの」
男のロマン。そう、2丁拳銃である。
さすがにガン・カタまではいかないが、自分なりの使い方で2丁拳銃を扱うことにする。
「さて、次はどんな兵器を作ろうか」
自然と顔が凶悪なものになる。
あれ?俺って日本人だよな?善良だよな?と思いながらイメージを膨らませていく。
圧倒的な火力...定番で言えばロケットランチャーとかグレネードとかなんだがなぁ...。
だが一発ずつしか撃てないのが難点だな...。
手数はなるべく多くしときたいのだが...。
機関砲でも作るか?弾丸全部に火魔術の【炎爆】の魔法陣つけてさ。
そうすれば威力も手数も増えるよ!やったね!
というわけで早速作るか。
機関銃じゃないから大丈夫だよな。うん。
モデルはそうだな....M134にするか。
これ持ちながら肩に弾丸でも掛けとけばリアルコマ〇ドーができるわけよ。
勿論弾丸全部に【炎爆】つけておきますぜぐっへっへ。
これで敵を血祭りに上げてやるんだ...!
モデル自体は簡単だな。スタンドで置くタイプではなく手で持つタイプに勝手に変えた。
置いてあると邪魔だし動かしにくいし....コ〇ンドーごっこできないし...。
8本の銃身に20㎜の弾丸、魔力のおかげで毎分8千発の化け物だ。
自分なりに魔改造してみたが思ったより化け物スペックになったな...。
レールガンはさすがにつけないことにした。
毎分8千発の化け物に【炎爆】と【レールガン】とかどんな悪夢だよ。
ここら一体の地形変わりそうなんですが...。
なんかバルカン砲と混ざった感じがするけどまぁいいか。
続いて弾丸だ。
素材は安定の鉄に強化魔法だ。
ぶっちゃけ錬成術の融合を使って成分をいじって硬くしてるだけなのだが。
そこに【炎爆】を付与する。
いやぁ、魔術が付与できてよかったわ。
とりあえず24万発ほど作っておいた。
これで30分撃ちっぱなしでも問題ないね!
コルトパイソンの時もそうなのだが、リロードは基本的にアイテムボックスを使って行う。
最近気づいたことなのだが、アイテムボックスは任意の場所にものを出すことができるのだ。
だが自分の半径2m以内に限られる。
よし、早速試し撃ちだな。
的は鉄の塊だ。
ハンドルを握り、的に銃口を向ける。
トリガーを引くと銃身が回転しだし、ガガガガガガガッ!!!という音と共に弾丸の弾幕が現れる。
【炎爆】の効果で着弾した途端に爆発して、1分たったころには小さなクレーターができていた。
「これは予想以上だな...ほとんどがパイソンで対応できそうなのだが...まぁ備えに越したことはないしな。名前は...そうだな、爆炎姫といったところか」
続いては手榴弾を作ることにする。
火力的にはパイソンとプリンゼシンで間に合っているのだが、手榴弾は火力ではなくエグさを求めることにする。
まず爆発と同時に細かく切れ味のいい鉄片を辺りにぶちまけ、同時に動けないように雷魔術で微弱な電流を流す。
ついでにその電流で痛覚を刺激して痛みを感じやすくするとしようか。
難航するかと思ったが、案外簡単にできたな。
まぁ魔法付与したりするだけだもんなぁ。
ピンを抜いたら爆炎を遅延性で発動するだけだし。
爆発したら雷魔術発動させるだけだし。
それを20ダースほど作ったところで授業終了の合図になった。
どうやら午前の部はこれで終わりらしい。
「ん、ハルト。何作ったの?」
「聞きたいか?」
「ん」
「まず雷魔術を使って超加速させた鉄の塊を出す魔道具と、毎分8千発の弾丸を撃ち、しかも着弾したところが爆発する兵器と爆発したら辺りに尖った鉄片が飛び散って雷魔術で痛覚が刺激される兵器を作っぞ」
「...よくわかんないけどすごいことはわかった」
どうやらリディアにはうまく伝わらなかったらしい。
「午後の部って何をするかわかるか?」
「作ったものの発表らしい」
「...まじかよ。これ発表したらダメな気がするけど...」
「...どんまい」
ガクッと項垂れる俺。
だが後悔はしていない。火力はロマンだ。
男の夢なのだ。
◇◇◇◇◇
来てしまった。ついに午後の部が...。
「よし、早速発表してもらうぞ。じゃぁ最初は...アレンだな」
「げぇっ、俺かよ...」
アレン、錬成術苦手だって言ってたもんなぁ。
「アレンは何を作ったんだ?」
「俺はこれです」
アレンは一振りの剣を差し出す。
なんだ、苦手って言ってたけどすごいじゃん。
「ふむ...ほう、なるほど。火属性の魔法が付与されておるな。それに切れ味もなかなかだ。試しにあの的を切ってみろ」
「はい。はぁっ!」
剣を一閃。
的は綺麗に切断され、切断面は溶けてしまっていた。
アレンの剣技は目を張るものがある。かなりすごい。
「素晴らしいな。じゃあ次は――」
この後も順調に続いて次はリディアの番だ。
さて、リディアは何を作ったのだろうか。
「私はこれを作った」
「ほう、これは...」
リディアが作ったのは一振りの鎌。
ただの鎌ではなく、死神が持つ鎌のごとく巨大な鎌だ。
リディアの瞳のような深紅の刃に、闇より暗い漆黒の持ち手。
厨二心がうずくわぁ...。
「闇と風の2属性が付与されているな。素晴らしい。あそこの的を切ってみろ」
「わかりました。...シッ!」
リディアが一振りすると風の刃が飛んで行き、それと同じように漆黒の刃が飛んで行く。
2つが通り過ぎると、的は綺麗に4つに切られていた。
「さすがだな....次は...ハルトか」
なんでそんな嫌そうなんですか。
いや、まぁ日ごろの行いがアレなのは認めますけど。
「これは...なんだ?」
「こっちがコルトパイソン、こっちがプリンゼシン・ブレーズでこっちが手榴弾ですね」
「どれも聞いたことがないな...まぁいい。あそこの的に向かって使ってみろ」
「はい。じゃあ先に通常モードでやりますね」
ドパァン!
グラウンドに響く一発の銃声。
学園長をはじめとした錬成術の教師方はそろって口を開け、生徒はあまりの音に耳を抑えている。
的は一発の弾丸が通ったのを示すように、頭に穴が開いている。
「じゃあ次はレールガンモードでやりますね」
「いや、ちょっとま」
ドパァァァン!!!
先ほどよりも大きい銃声。
音速を超えた弾丸が的に当たると的は木っ端みじんになった。
「...」
「じゃあ次はこっちのプリンゼシン・ブレーズを」
「すこしまて」
「はい?」
「...いや、やっぱり気にするな」
「じゃあ遠慮なく」
ガガガガガガガッ!!!
っと立て続けになる銃声。
的は炎爆のせいでなくなっており、撃ち終わったころには小さなクレーターができていた。
「じゃあ最後に手榴弾を」
「まて。もうやめろ」
「...わかりました」
「...今日はもう終わりだ。自由に帰れ」
フラフラ歩きながら学園長室に戻るラーラ先生。
なんかとてつもなく申し訳ない気分になった。
その日はリディアを魔道4輪駆動車に乗せて家に帰り、イチャイチャしてから一緒に寝た。
ラーラ先生、大丈夫かねぇ...。
ラーラ先生の胃に穴が開きそうですね...。
そろそろ夏休み...!?
 




