勇者一行、そして嫉妬
今回は少し短いです。
「ていうか魔術ってなんなんだ?」
「いい質問だな坂上。魔術っていうのは原理を理解することで使える術式だ。魔法よりも威力も高いし魔力消費も低い」
「そ、そうなの!?できれば教えてくれないかな!?かな!?」
「だが欠点がある」
「け、欠点?それは何かしら?」
「無駄に操作が難しいことだ。それに魔法みたいにイメージで起動できるものでもない」
「そ、そうなのか...だが勇者である俺ならできはず!」
「無理だぞ和希。いかに勇者であっても魔力操作レベルが低いと起動すらできない。起動できたとしても暴発して死ぬぞ」
実際、なりかけたことがあるのでシャレにならない。
魔力操作を極めるまでに5年はかかったかな...。
「ねぇハルト君。庭にある車庫みたいなのなにかな?」
「ん?あれか。あれはそのまんま車庫だぞ」
「そうなの?じゃあ車もあるってことかな?」
「ああ。正しくは軍用車だけどな。だが訳あって機銃は撤去した」
「機銃は作れたんだね....」
「なぁハルト、その軍用車見せてくれよ」
「構わないぞ。庭にこい」
坂上はこういうの好きそうだもんな。
てか和希はその半信半疑の目はなんだ。
早速車庫の中から魔道4輪駆動車を出す。
また何か作ってみようかな?なんなら重火器でも作るか...雷魔術を生かしてレールガンでも作るか?
そうすれば魔術の【レールガン】よりもロスタイムがなくなるしな...。今度試すか。
「すっげぇ!ハルト!乗ってもいいか!?」
「ダメだ。これは日本の車と違って魔力で動いてるから魔力もがっつり消費されるぞ」
「す、すごい...これ、どうやって創ったのかな?」
「錬成術だ。結構簡単だったぞ」
「錬成術...ねぇハルト君。今度私用に刀でも作ってくれないかしら?お願い」
「刀、ねぇ...。なんなら今からでも作るぞ」
「ほんと!?じゃあお願いするわ」
「了解っと....錬成【モデリング】」
素材は安定の鉄だ。
この世界には玉鋼なんてものはないからね。でもさすがに強度が心もとないから魔法や魔術で強化してるよ。
色は趣味で真っ黒にしといた。
「ほれ、できたぞ」
「は、早い...しかも軽いし...」
「俺の良心からおまけをつけておいたぞ。盛大に感謝しろ」
「あなたって日本ではそんな性格だったかしら...?まぁいいわ。おまけって何かしら?」
「雷魔術を使った疑似的【雷光】機能だ」
「雷光?」
「まぁ口で言うよりはやったほうが早いな。【雷光】」
相変わらずこの世界は魔術の効果が高まってるねぇ。
これでも結構抑えたほうなんだけど...てかなんか俺の魔力赤くね?怖いんだけど。
青白い色に赤とか割とまじめに怖い。まぁ犯人の目処はつけてるけど。
「綺麗...」
「すごいわね...それをこの刀に?」
「あぁ。あくまでも疑似的だからな。速力が300ぐらい上がる程度だ」
「それって十分強いと思うのだけども...ありがとう、ハルト君」
「あぁ。これでも俺は善良な日本人だからな」
ちなみに俺が【雷光】を使うと抑えてても600ぐらい上がる。
日本の時だと400ぐらいしか上がらなかったんだがな。
「よし、もういいだろ?お前ら帰れよ」
「え~!私はハルト君と一緒にいたいかな?」
「香織!何を言っているんだ!俺たちは勇者としての役目があるだろ!」
「役目って帝国との戦争でしょ?戦争は行きたくないかな...」
「この国の人たちを見捨てるのか!?勇者である俺たちが!」
「ちょっと、落ち着きなさいよ和希。誰だって戦争に行きたいとは思わないでしょ?」
「...確かにな。悪かった」
「なぁ、戦争ってどういうことだ?」
「そういえば、私たちが召喚された理由はなしてなかったね」
「そうね。じゃあ私が説明するわ。どうやらこの国は帝国...この国の隣の国ね。そこと戦争するらしいの。帝国の軍事力に勝てるわけがないから私たちを召喚したってわけね」
「勝てないところに戦争を吹っかけるとか馬鹿だな。リディア、帝国ってそんなに強いのか?」
「ん。帝国に勝てるのはお父様の国ぐらい」
「ルシアーノ王国...国民全員吸血鬼だから切られても再生するもんな」
「ね、ねぇハルト君?いまの話を聞いてるとリディアって王族なの..かな?」
「そうだぞ。リディアは正真正銘の王族だ」
「そ、そんな...」と、膝から崩れ落ちる工藤さん。
そんな工藤さんを「大丈夫よ香織。まだ傷は浅いわ!」といい慰める一ノ瀬さん。
シュールだ。わが家がおかしくなってる。
「そういえば、学園の噂で勇者一行が転入してくるって聞いたけど本当なのか?」
「ああ、その話は本当だぜ。クラスはSだ」
「ほぉ。なら俺と一緒だな」
「ほんと!?」
うぉっ、いきなり起き上がったな。
「ああ。俺もSクラスだからな」
「...やった!」
「まぁそのステータスですものねぇ...」
何その同情するような目!やめて!これは実力だからぁ!
てか勇者本人は完全に空気だな。大丈夫かよこの勇者。
「な、なぁみんな。そろそろ宿に戻らないか?」
「そうね。じゃあ私たちはお暇するわ」
「え~!私はもっと居たいのに~!」
「えぇ...まぁなんだ。学園行くときに屋敷によってくれれば送ってくぐらいならするぞ」
「ほんと!?やったぁ!」
「申し訳ないわね。さ、香織行くわよ」
「明院寺ハルト!俺はお前を認めないからな!リディアさんだって俺に惚れてるんだ!」
「ア”ァ”?」
「っ!?く、くそ!」
おっと、少しばかり殺気が漏れてしまったな。
まぁリディアを奪おうとしたんだからね。仕方ないね。
誰だって恋人がきざったらしい奴に惚れてるとか言われたらいやだろ?そういうことだよ。
「ごめんねハルト君!和希君に悪気はないと思うんだけど...」
「あいつ、ハルトのこと見つけてからやけにカッカしてるよなぁ...まぁいいか。また飯食いに来るからな!」
「お、おう」
◇◇◇◇◇
ふぅ。やっと言ったか。
久しぶりに見たけど変わってねぇなぁ。
だがクラスの奴らが俺の目を見ても露骨に嫌そうな顔をしてなかったな。
異世界来てから俺も雰囲気変わったからもしかしてイケメンになってる!?独特な雰囲気(威圧を抑えてるだけ)のおかげでこの目つきとマッチしてるのかな?!もしそうなら異世界様様だな!
...自意識過剰はやめよう。これで後から傷つくのは自分なんだ。
とはいえ、勇者、かぁ。
厄介だなぁ。あいつの目、嫉妬にまみれてやがったもんなぁ。
あと少しで夏休みになるわけだし、何するかなぁ。
冒険者ギルドにでも行くかな。今まではわかんなかったけどどうやらあるみたいだしな。
よし、夏休みは冒険者ギルドで登録だな!
....俺に何らかの力で魔力を混ぜたドーラにもお仕置きしないとなぁ....。
あと少しで夏休み展開入りますねぇ...新たな出会いがあるかも!?
次回は学園の授業で錬成術をやります。そして新たな武器を開発するかも...です!
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