召喚、そして過去の友
更新遅れて申し訳ありません。
少々ヒロインのキャラ作りや展開を練っておりまして....。
「うーっす」
「お!ハルトじゃねぇか!おはようさん」
教室のドアを開けると同時に声をかけてきたのはアレンだ。
こいつ、いつも元気だな...。俺は今憂鬱だっっつうのに...。
「...おはよう」
「リ、リディア。おはような」
「...寂しかった」
「ぐっ...わ、悪い」
「...許さない」
「そ、そんな....こ、今度屋敷に呼ぶから!」
「...」
「手料理もごちそうするから!」
「ハルトの料理はマジでうまかったなぁ...」
「...許さない」
「ぐぅ....なら一緒に住むか?」
「...本当?」
ぱぁぁっとリディアの顔が笑顔になる。
おぉ、まぶしい...。
「本当だぞ!そうすれば一緒に学校にも行けるし料理も作ってやれるからな!」
「...うん、許す。今日行くから、待っててね?」
「あぁ、待ってるよ」
はぁ、かわいいなぁ。
やっぱリディアは天使かもしれない。
神獣を召喚したハルトでもリディアには勝てないのだ。
やはり最強はリディアなのかもしれない。
「お前ら席つけー」
気怠そうな声とともに教室に入ってきたのはラーラ先生だ。
この学園の長であり、俺たちのクラスの担任でもある。
「先生、どうしてそんな気怠そうなんだ?」
「いい質問だな、アレンよ。私はどっかの誰かさんが神獣を召喚したせいで学園の上層部や国のお偉いさん方に報告したりでとても忙しいのだ。そう、どっかの誰かさんのせいでね」
生徒たちの視線が一斉に俺に向かう。
うわぁ...今回の授業でまた召喚するとか言ったらどうなるんだろ....。
「はぁ...まぁいい。よし、ホームルームが終わったら座学から始めるぞ」
◇◇◇◇◇
「――であるからして...」
今は魔法陣についての授業の最中だ。
だが俺は魔法陣については神獣たちや独自研究でほぼ理解しているのでかなり暇だ。
教壇に立つ先生が作る魔法陣の効率が悪いところや効果が薄いところなどを適度に指摘しながら時間が過ぎていく。
「――今日はこれで終わりだ。各自、復習するように」
「ぷはぁ...やっと終わった...」
そんな声を上げるのはアレンだ。
アレン、魔法陣苦手だもんな...。
「...ん、ハルト、学食行こ?」
裾を少し摘まみながら上目遣いでおねだりしてくる天使は俺の婚約者であるリディアだ。
相変わらず今日もかわいい...。
「もうそんな時間かぁ...。どうせなら俺の家で食うか?」
「あ!俺も行く!」
「...ハルトがいいなら」
「アレン、お前ってやつは...まぁいい。なら行くか。午後には実技もあるしな」
「...ん。早く行こう」
「そうだな!早く行こうぜ!」
◇◇◇◇◇
場所は変わってグラウンドだ。
なんでいるのかって?そりゃあもちろん移動手段を出すためだよ。
「なぁハルト。なんで飯を食いに行くのにグラウンドなんだ?」
「...私も気になる」
「ああ、移動手段があるんだよ。これに乗っていく」
俺はアイテムボックスを起動させ、中から魔道4輪駆動車をだす。
ちなみに機関銃撤去済みだ。
「うわ!なんだこれ!」
「...鉄の塊?でも変な色」
「これは魔道4輪駆動車だ。魔力を燃料として動く魔道具だな」
「すげぇな...てかいつ錬金術なんて始めたんだ?」
「ん?昨日だよ」
「昨日!?一日でこれを作ったのか...」
「まぁ家には神獣がいるしな」
「確かにな...」
「...ハルト、これに乗るの?」
「あぁ。見た目は鉄の塊だが中はちゃんと座席もあるぞ」
ドアを開くと中には黒を基調とされた座席が見える。
リディアが乗り込み、座席に座ると、その柔らかさに目を見開いた。
座る場所は勿論助手席だ。
続いて、アレンが乗り込む。
後ろの座席に座ったが、座席の素材は全部同じなので、アレンも大きく目を見開く。
「よし、全員乗ったな。じゃあいくぞ」
俺も運転席に乗り込み、魔力を流していく。
ブロロロロロッという音と共に車両が動き出す。
「わわっ!動いたぞ!」
「...馬車より早いのに振動も少ない」
「気に入ってもらえてなによりだ」
サスペンション先輩まじ有能。
馬車にもつけれないのかな?ルシアーノ王国の王族専用馬車に今度つけてみるか。
「そういえばよ、ハルトってステータス測ったことあるのか?」
「唐突だな...測ったことはないぞ」
「そうなのか...見せてもらいたかったんだがな」
「...ハルトのステータス、測る?」
「できるのか!?」
「...ん。お父様に頼んで鑑定石を送ってもらう」
「なぁ、鑑定石ってなんだ?」
「...人の能力や称号、スキルや適性魔法を表示するもの」
「へぇ。スキルっていうのは?」
「...剣術や武術など」
「なるほど...じゃあ俺のスキルは武術かもな」
日本にいたころ、少しばかり合気道と柔道をやっていたのだ。
そんな談笑をしていると俺の屋敷が見えてきた。
いつ見てもでかい。
「そろそろつくぞ」
「おっ、やっぱりでかいよなぁ」
「...ん。なかなかの大きさ」
屋敷の門を通り過ぎ、車庫に車を入れる。
家の中に入ると早速フェルニとヴェルが出てきた。
『我が主、腹が減った』
『腹が減ったのじゃぁ...何か作ってたもう』
「少し待ってなさい。今何か作るから」
「な、なぁハルトこれって...」
「...神獣」
『む?我が主よ、この者たちは?』
「見せるのは初めてだったな。こっちの赤いのはアレンって言う。俺の友達だ」
「アレンだ!よろしくな!」
『なかなか肝が据わっているようだな...。アレン、よろしく頼む』
「おう!」
アレン、神獣相手にすげぇな。
そこら辺の騎士より肝が据わってるぞ。
「んで、こっちの可愛い天使がリディアだ。俺の婚約者でもある」
『ほほう、マスターの婚約者とな?興味深いのう...』
「...ん。よろしく頼む。ハルトは渡さない」
『むむぅ、なかなか手ごわいのう...ま、よろしく頼むのじゃ』
「...うん。よろしく」
「そんで、こっちの鳥がヴェルでフェンリルがフェルニだ」
「ハルトって人間なのか?」
「失礼な奴だな。人間だよ」
「でも神獣を従えている人間なんて見たことないぞ」
「まぁそうかもしれんが、一応人間だぞ」
『『腹が減った(のじゃ)!!』』
「..はいはい。今作るから待っとけ」
◇◇◇◇◇
「できたぞ~」
『待ってたぞ!』
『待ってたのじゃ!』
「やっと来たか!」
「...ん。楽しみ」
今日の昼ごはんは時間もあんまりないので煮込みハンバーグにしてみた。
トマトソースは前日に作っておいたものを使った。
「うめぇ!」
「...おいしい!」
『うまいな...』
『おいしいのう...』
「そりゃよかった。んじゃ、俺も早速」
ハンバーグを一口サイズに切り、口に運ぶ。
口の中で肉が溶けるようになくなり、同時に肉汁が口の中にあふれる。
うん、うまい。今回もうまく作れたな。
「食い終わったか?そろそろ行くぞ」
「おう!行こうぜ!」
「...ん。大丈夫」
『我も行くぞ。召喚するのを見ていないといけないからな』
『妾も行くのじゃ~』
「....行くか」
重い足取りと共に車に乗り込む。
グラウンドには数人の生徒がすでに待機しており、時速60kmちょいで走っている鉄の塊を見て腰を抜かしていたのは仕方ないと思う。
「なぁハルト、召喚って、何を召喚するんだ?」
「新しい神獣だよ。まぁ召喚できるかはわからんけどな」
「ラーラ先生が怒りそうだな!」
おいアレン、お前笑顔でなんてことを言いやがる。せっかく忘れようと思ったのに。
「今から実技をやるぞ。まぁ己の魔法を限界まで鍛えるだけなんだがな。聞きたいことがあれば来い」
ラーラ先生がそう言うと生徒たちはそれぞれの場所に散っていった。
今日はリディアとアレンが一緒に来るらしいので、ついでに召喚を見せてやることにした。
「んじゃ、始めるぞ」
『魔力が足りなくなったら妾たちに言うのじゃぞ~』
「あぁ....召喚【アイトワラス】」
さすがに無詠唱で償還できる自信がないので魔法名だけ詠唱する。
やはり神獣としての格が違うのか、ヴェルとフェルニ以上の魔力を持ってかれる。
魔力がガンガン持ってかれて意識が朦朧とするも、なんとか堪えて魔力を注ぎ続ける。
魔力が残り3割といったところで、ひときわ大きな光が発し、辺り一面が白一色に包まれる。
『私を召喚した愚か者はどいつだ?今すぐ裁いてやろう』
周囲に響く若い女の声。
女の声であるのにドスが聞いてる感じがする。
さらにシルエットでもわかる巨大な蛇。大きさは大体10mちょいであろうか。
『まぁそうカッカするな。アイトワラスよ』
『その声は...不死鳥か。懐かしいな』
『うむ。だが今の我は不死鳥ではないぞ。ヴェルという名がある』
『ヴェル、だと?...なるほど。人の従魔になったのか』
『察しがいいな。まぁそういうことだ』
『不死鳥のほかにも...フェンリルがいるな』
『うむ。奴も人の従魔だぞ。新しい名はフェルニだ』
『なんと...2体も神獣を手懐けるか。それに我を召喚した魔力の量と質...人の従魔になることはないが、どういうやつか気になるな』
『そこにいる人間の子が我が主だ』
『ふむ....っ!?....あぁ...神よ...奇跡をありがとう』
俺を見ると泣き出し(?)てしまったアイトワラス。
え!?俺なんかした!?なんもしてないよ!
『アイトワラスよ、どうしたのだ?』
『すまない、取り乱してしまったな。その前に聞きたい。そこのお方は...名はハルトであっているか?』
「えっと、あってる、けど」
『やはりそうであったか!今でも昔の日々を鮮明に覚えています...ご主人様よ』
「ふぁっ!?いきなりご主人様って...悪いが、まったく身に覚えがないんだが...」
『む、そういえば今は蛇の姿でしたな。少々お待ちください』
蛇の体が淡い光に包まれると、どんどん体が小さくなっていく。
最終的には大型犬ぐらいの大きさになり、光がなくなっていく。
『この姿なら、分かりますでしょうか?』
「お前は....ドーラ?!」
『はい、お久しぶりでございます。ご主人様』
「お前...死んだ後にこの世界に来てたのか...」
『はい。でもまさかご主人様に会えるとは思いませんでした』
「俺もこの世界で会えるとは思ってなかったよ...まぁ、なんだ、会えてよかった」
『はい、私もです』
ドーラは地球にいたころ、小学校のころから暮らしていたハスキーのことだ。
俺が中学2年生の時に亡くなった、唯一の友達だった。
「...ん、ハルト、ドーラってだれ」
「あぁ、俺の元の世界のころに飼ってた犬だよ」
「...よかった」
何がよかったのだろうか....。
『ご主人様、私も共について行ってもよろしいでしょうか?』
「あぁ、構わないぞ。だが、犬の姿だと過ごしにくくないか?」
『む、確かにそうですね....ではこれで』
先ほどと同様に淡い光に包まれる。
それがだんだん人型になっていき、最終的に表れたのは黒髪を腰のあたりまで伸ばして、着物を着飾った金色の瞳の美女だった。
「どうでしょうか?ご主人様」
「お、おう。いいと思うぞ」
「本当ですか?よかった」
安堵の息とともに微笑むドーラ。
大人の色気というものが出ており、高校生の俺には非常によろしくない。
「...ハルトは渡さない」
「リディア!?」
「あら?ご主人様、そちらの方は?」
「リディアだ。俺の婚約者でもある」
「まぁまぁそれは....ドーラと申します。よろしくお願いしますね」
「...ん。よろしく」
「それでは早速ですが、リディアさん。少し女だけで話しましょうか」
「...ん。わかった」
そういってグラウンドの隅に移動してしまったリディア達。
アレンはなんか同情するような視線を向け、従魔達は呆れていた。
「な、なんだよ」
「ハルト....がんばれよ」
『召喚できるとは思っておったが、さすがに知り合いだとはなぁ....』
『妾もそれは思わんかったのじゃ...しかも...はぁ。道のりは険しいのじゃ...』
「だから何なんだよ....」
「...ハルト。貴様何をしている」
ふと俺に掛かる声。
その声は怒りで震えており、後ろからの重圧がすごい。
「ラ、ラーラ先生...これには深いわけが...」
「言い訳はいい!今すぐ学園長室にこい!」
その日、俺は放課後まで説教をされ、反省文を書かされたのは嫌な思い出だ。
これ以上召喚はしないようにしようと心に誓ったハルトであった。
 




