雷帝の魔術師 "明院寺ハルト"
地球には魔術師と呼ばれる者が存在している。
魔術師にはそれぞれ二つ名がある。
火を扱う魔術師であれば"炎帝"。
水を扱う魔術師であれば"水帝"などだ。
この二つはかなりの有名どころだ。
魔術とは一言でいえば、大規模な手品のようなものだ。
火を起こし、風を吹かせ、水を生み、光を生む。
原理を理解していれば、雷や蒼炎だって作り出すことができる。
イメージを工夫すれば槍の形にもできるし、壁にもできる。
物に付与すれば、ただの箱が無限に物が入る魔道具にもなるし、人に付与すれば強力な生命力、身体能力も手に入れることができる。
それ故に魔術師を狙う国が増え、国に捕まった魔術師たちは奴隷のように扱われた。
魔術師たちは次第に人数を減らし、今ではたった1人しかいなくなってしまった。
彼の二つ名は"雷帝"。
雷の魔術を扱い、雷の光のように高速で攻撃を繰り出す魔術師だ。
もちろん物理的にも早い。
それが私立の高校に通う高校生、"明院寺ハルト"だ。
彼は目つきの悪さがコンプレックスであり、そのコンプレックスのせいでまともに友達ができないのである。
目つきだけならヤから始まるお仕事の人たちより数段上だろう。
しかし悪いのは目つきだけであり、顔も整っているし、身長も低いわけではない。
まさに宝の持ち腐れである。
そんな彼はひょんなことに異世界に転移されてしまった。
ある日、いつも通りに帰り道を歩いていたら膨大な魔力を感じたのだ。
魔力とは、魔術師の命にして武器。
魔力を使うことによって魔術を使うことができるのだ。
膨大な魔力を感じるところに行ってみると、そこには大きな空間の裂け目があった。
「うっそだろこれ....」
思わずそんな声が出る。
「こんな大規模な空間魔術見たことねぇわ...」
そう、この空間の裂け目は空間魔術によって生み出された転移ゲートなのだ。
入らない限りどこに出るかわからないし、そもそも地球のどこかに転移するとは限らないのだ。
「この先はどうなってんだろうな...運がよければ異世界転移、悪ければ紛争地域かどこかの樹海か」
「入ってみるしかねぇなコレは。異世界に転移できるって言う可能性が低くても俺はやって見せるぜ!」
はたから見れば頭のおかしい不審者だ。まぁ主人公はオタクなのでそこは割愛せざる負えないが。
「まってろ異世界!今行くぜ!」
そんな掛け声とともに裂け目へ飛び込んでいく。
目覚めた先は異世界なのか――それは神のみぞ知る。