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僕の好きな人は殺人犯  作者: 大木戸 いずみ
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5

担任は僕達が遅刻した事に関して何も言わなかった。

担任はお世辞でもおしゃれとは言えない見た目だった。野暮ったさが全身からにじみ出ている。

クラスメイト達は僕達が一緒に登校した事に驚いていたのか、転校生の僕に驚いていたのか、その辺はよく分からない。

ただ物珍しそうに僕の方をジロジロと見る。

クラスメイトの目が僕に向けられているという事はやはり、転校生に驚いているのか。

女子の声が聞こえる。

『都会の男の子だ。』

『なんかかっこいいね。』

『顔凄く綺麗じゃない?』

『確かに。整ってるよね。』

『後で声掛けに行こうよ。』

『身長高いね。私結構タイプかも。』

『けど、おとなしそうだよね。』

女子はきっとこの会話は僕に聞こえてないと思っているのだろう。

女子の内緒話は大概周囲には聞こえるものだ。

本人たちはそれに気づかずどんどん秘密を自ら漏らしていく。

席は出席番号順だった。相沢が一番で僕が二十二番。クラスの合計人数が二十八人。

これで一学年の人数…。体育祭や文化祭は盛り上がるのかと思う。

相沢は一番前の窓際の席で僕は一番後ろの扉よりの席だった。

席に着いたのと同時に前の席の奴が僕の方に体を向けた。

坊主で良く焼けた肌。いかにも野球やっていますっていう雰囲気を漂わせている。

「お前モテモテだな。」

野球少年(仮)がニッと白い歯を見せて笑う。

「別に転校生が珍しいだけだろ。」

「そうか?」

「皆の顔をよく見ろ。動物園のパンダを見ている目と一緒の目で僕の事を見てる。」

野球少年(仮)はハハっと笑った。

確かに、と呟きながら頷く。

「俺、峯川順平。順とか順平とか適当に呼んでくれ。」

「本条渡。呼び方は何でも。」

その後、軽く話し合って色々分かった。

この学校には規則がない。法を犯したり、よっぽどなことがなければ基本的には黙認されるそうだ。

それと順平はサッカー部らしい。まんまと裏切られた。

坊主で?とは思ったが口に出すのはやめておいた。

心の中で野球少年(仮)からサッカー少年(坊主)に改名しておいた。

順平が目を細めて僕の顔をまじまじと見る。

これはもしや、順平、僕のこと…。

「なぁ、渡ってこっち来る前モデルとかやってたのか。」

少し都会から来ただけで僕はモデルをやっていたことになるのか。

順平の思考回路は凄いな。

「やってない。急に何。」

「だってお前すげぇ顔整ってるし、雰囲気かっこいいし。」

やっぱり、順平俺の事…。

「御免、男に興味ない。」

「俺も。」

良かった。ただ本当に僕の顔が物珍しかっただけなのか。

順平との会話の波長は僕に合っている。

「なぁ、渡って相沢と付き合ってんの?」

順平が声を潜めて僕に聞いた。

この村では一緒に登校しただけで恋仲と思われるのか。

「付き合ってない。小学校の頃の友、、知り合い。」

友達と言いかけたが正直友達と言える間柄でもない。

順平は疑った顔で僕を見てくる。

「へぇ~、そうなんだ。相沢顔可愛いよな。」

外見に惑わされるな、順平。

「お前ら二人教室に入ってきた時なんかの撮影かって思うぐらい綺麗でビビった。」

「流石に大袈裟すぎだろ。」

僕は苦笑いする。

確かに客観的に見れば相沢が綺麗なのは認める。けど、俺も一緒に綺麗とくくるのはやめて欲しい。

「まじで俺息止まったし。美男美女過ぎて。」

「じゃあ、人工呼吸してやろうか。」

「渡だったら大歓迎だ。濃厚なのでお願いします。」

「やっぱ順平そっち側だったか。」

そんなしょうもない話をして笑い合った。

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