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目を開けると高澤さんの顔がドアップであった。
大きな目だから、ホラー映画の演出みたいだった。
心臓が止まるかと思ったぞ。
眉を八の字にしながら僕を心配そうに見ている。
ここはどこだ?
っていう台詞をまさか言う日が来るとは。
「大丈夫?」
消毒液の匂いがする。という事はここは保健室か。
僕はゆっくり体を起こした。
高澤さん後ろに順平と吉野さんが見える。
二人とも僕を心配そうに見ている。
「本条君、倒れたんだよ。」
そう言われて僕は初めて自分が倒れた事を認識した。
そうか、僕は倒れたのか。
倒れるのなんて生まれて初めてだ。家帰ったら赤飯でも食うか。
まだ頭痛が残っている。頭がジンジンする。
「まだもう少し寝ていた方が良さそうだな。」
順平が僕の表情を読み取ってくれてそう言ってくれた。
吉野さんがまさか僕をそんな心配そうな目で見てくれる日が来るなんて感動ものだ。
「じゃあ、何かあったらすぐに言えよ。」
どうやって言うんだよ、と心でツッコミながら僕は礼を言った。
順平に続いて、吉野さんもそのまま保健室から出て行った。
高澤さん、君は一緒に行かなくてもいいのかい。
高澤さんはまだ僕のベッドに座っている。
いつかの逆バージョンになっているな。
高澤さんは何も喋らない。
気詰まりな空気が生じる。このまま何時間もこの状態なんて気が持たない。
僕が何か言おうとした瞬間、高澤さんが口を開いた。
「私もそろそろ行くね。」
そう言って高澤さんは立ち上がった。ベッドが少し浮いた気がした。
高澤さんはゆっくりと扉の方へ歩いて行く。
扉を開けて保健室から出ようとした瞬間、高澤さんは僕の方を振り向いた。
「本条君の好きな人ってやっぱり相沢さんだったんだね。」
え、と僕は小さく声を漏らした。
突然の発言に頭が追い付かない。ただでさえ頭が痛いのに…。
「前に言ってたじゃん。気になる子。」
高澤さんは無邪気に笑ったがどこか悲しそうだった。




