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僕の好きな人は殺人犯  作者: 大木戸 いずみ
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ここに来て初めての雨が降った。

気温は高いはずなのに雨だけは酷く冷たく感じた。不吉な雨だ。

気だるさを感じながら僕は教室の窓から雨をただ眺めていた。

「おい、やばいぞ!」

クラスの男子が叫びながら教室に入ってきた。

これから彼が言う事に何故か僕は途轍もなく嫌な予感がした。

急に汗が異常なくらい出てくる。

頼むから何も言うな、僕は心の中でその男子に向かって呟いた。

心臓の脈拍が上がるのが分かる。息が少し荒くなる。

「相沢愛優が人を殺したらしいぞ!」

教室が一瞬で静寂に包まれた。

聞こえるのは雨が降り続ける音だけ。

その音が僕を闇に引きずり込む気がした。

僕は驚きはしなかったが、絶望の闇の中に沈む心地がした。



「ねぇ、ニュース見た?」

「見た!モザイクかかってたけど、あれ相沢さんだよね?」

「なんか血だらけじゃなかった?」

「うん。あれって返り血かな?」

女子のそんな話が耳に入る。

僕は一日寝る事が出来なかった。

どこかでまだ相沢が人を殺すという事を冗談だととらえていたのかもしれない。

本当に殺すとは思わなかった。

僕はまだニュースを見ていない。現実から目を逸らそうとしている。

順平が僕の前に黙って席に座る。

きっと僕になんと声をかけたらいいのか分からないのだろう。

朝から誰も僕に声を一言もかけない。

頭が昨日からずっと痛い。

脳を誰かに踏まれている感じだ。

意識が朦朧としてきた。

死にそうだ。別に僕は今死んでも正直どうでもいい。

命の大切さなんて分からない。

命の価値観なんて人それぞれなんだ。

生きたい人が生きて死にたい人が死ねるのなら、もう少しましな世の中になるのだろうか。

皮肉な事に世の中そんな風にできていない。

明日に執着のない僕がまた今日も生きて、明日を生きたかった人が今日死ぬんだ。


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