23
今日も僕はいつものように学校へ向かう。
バス停にあるぼろぼろの錆びたベンチに腰を下ろす。
そういえば、再会した場所がここなんだよな。
セミの泣き声とギラギラと照る太陽が僕に夏を感じさせる。
汗でシャツが肌にくっつく。
このまま溶けて遠くに生きたい。
バスが来る音が耳に響く。ああ、今から相沢のいない学校に行くのか。
僕は憂鬱な気分になりながら蒸し暑いバスに乗った。
相沢が僕に残したのはあのブレスレットだけだったんだろうか。
ふとそんな事を考えてしまった。
自惚れているわけではない。ただ、相沢が僕にブレスレットだけ渡すなんて考えられない。
僕は何か見落としているのか?
ブレスレットに書かれていたあの英文に何か隠されているのか?
僕は駆け足で職員室に向かった。相沢の家族構成を聞きださなければ。
彫深ローマ人が簡単に教えてくれるとは思っていない。
それでも僕は相沢の事を知りたい。
「先生。」
僕は職員室の扉を開けて、そう言った。
普通なら名前を呼ばないと分かってもらえないのだが、この学校の教員は十人もいないぐらいだ。
目があえばすぐに誰に用事なのか分かる。
僕の声に反応して彫深ローマ人がだるそうに歩いてくる。
「お~どうしたんだ?」
「ちょっといいですか?」
「あ、プライベート系?」
僕は小さく頷いた。
彫深ローマ人は頭を掻きながら、ついてこい、と呟いて歩き出した。
またあの誰も使っていない会議室に行くのか?
僕は黙って彫深ローマ人の後ろを歩く。
今日は柑橘系の香りはしないな。
彫深ローマ人が前に使った会議室を通り過ぎた。
どこに行くんだ。
もしかして僕は彫深ローマ人と吉野さんの秘密を知ってしまったから暗殺されるのか。
っていう馬鹿な妄想をしながら歩き続けた。
会議室を通り過ぎたその先は旧校舎しかない。




