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僕の好きな人は殺人犯  作者: 大木戸 いずみ
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教室に戻る前に吉野さんに会った。

なんだかうまく目を合わせられない。

彫深ローマ人からした微かな柑橘系の匂いがはっきりと吉野さんから感じるからだ。

「先生と何話してたの?」

そう言って僕を凝視した。

「吉野さんの事じゃない。」

「じゃあ何?」

これは正直に言った方が良いのだろうか。

「先生があんたになんの話があるっていうの?」

吉野さんが僕の方に詰め寄る。

うん、正直に話そう。

「相沢の事をちょっと聞かれたんだよ。」

吉野さんの表情が少し緩むのが分かった。

高澤さんと違って吉野さんは理解力があって助かる。

「相沢最近全く学校来ないもんね。」

「なんかあるんだろ。」

「そのなんかを本条が知ってるんでしょ?」

僕が知っているのは相沢は人を殺すって事だけだ。

今それが理由で休んでいるのかどうかは僕には分からない。

「まぁ、多分知ってる。」

僕の曖昧な答えに、多分かよって言って吉野さんは苦笑した。

吉野さんはそれ以上何も聞いてこなかった。



その日の夜、僕は昔に彫深ローマ人が相沢を見つけた公園に向かった。

ここら辺は一つしか公園がない。それもお世辞でも大きいとは言えない公園だ。

もう一度相沢に会いたい一心で僕は公園を訪れた。

人一人いなかった。

公園についている街灯が点滅していて今にも消えそうだった。

ぼろぼろの遊具が夜の静けさの中に佇んでいる。

ブランコと滑り台だけ…。せめて鉄棒ぐらいあったらまだこの不気味さは軽減したのかもしれない。

僕はブランコに座った。

鎖が錆びていたが、まだ僕の体重ぐらいなら支えられそうだ。

相沢は小学校四年生の日にここで何を思ったのだろう。

まず僕は小学生で夜中にこんな不気味な公園に一人でいてられる度胸がない。

「本条?」

声がする方に顔を向けた。

僕の前に現れたのは相沢ではなく、担任の彫深ローマ人だった。

「こんな時間にこんな所で何しているんだ?」

「先生…。」

彫深ローマ人は僕の隣のブランコに座った。

鎖がギシギシと音を立てた。

危ないですよ。もう少しでちぎれそうです。

「昔ここで相沢に会った事がある。」

知ってます。

それから暫く沈黙が続いた。

いい年した男と高校生男子が何も喋らずにブランコに座っているなんて警察に見つかったら不審者扱いされそうだ。

「今からどこに行くんですか?」

僕は先生の方をチラッと見て聞いた。

「ん~、彼女のとこかな。」

「吉野さんのとこっすか。」

彫深ローマ人が目を丸くして僕の方を見た。

あ、無意識に口から出てしまった。ごめん、吉野さん。

「知ってるのか。」

彫深ローマ人そう言って苦笑した。

「麻美が誰とは言わないけど私達の関係を知られたって言っていたからな。お前だったんだな。」

そう言って微かに笑った彫深ローマ人を大人だなと思った。

驚いても叫ぶことなく普通に言葉を交わしてくる。

「バレたのが本条で安心したよ。」

どういう意味なんだ。

僕は相当口が堅いと思われているのか。

「吉野さんとの関係、本気なんですか?」

ずっと気になっていた事を彫深ローマ人に尋ねた。

吉野さんが本気で彫深ローマ人の事が好きなのは分かったが彫深ローマ人が本気で吉野さんを好きかどうかは分からなかった。

彫深ローマ人は急に真剣な顔つきになった。なんの迷いもない瞳。

「ああ、結婚したいと思ってる女だ。」

静寂の夜の公園に図太い声が響いた。




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