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僕の好きな人は殺人犯  作者: 大木戸 いずみ
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『相沢さんどうしちゃったんだろう。』

『高澤さんも少しうざい所あったけどあそこまでしなくてもいいよね。』

『怖すぎる。』

『うん、絶対に関わりたくない。』

『まじ小便ちびるかと思ったぜ。』

『手汗で提出しないといけないプリントがびちょびちょだよ。』

一日相沢の話で持ち切りだった。

誰も僕には話しかけて来なかった。

僕は彼女が声を荒げて、あそこまで酷い事を言った理由をずっと考えていた。

あれは高澤さんに対してのただの八つ当たりだった。

馬鹿な女っていうのは高澤さんと誰かを重ねたのだろうか。

相沢はボロボロになって捨てられた事があるのか?

という事は相沢には彼氏がいたのか…。

その事を考えたら少し胸が締め付けられた。

ん?なんで僕は胸が締め付けられているんだ?

小学校四年生までは僕の知っている限り相沢に彼氏はいない。

そして小学校四年生からはこっちに住んでいて、彼氏ができればすぐに噂になっているだろうし、それに今の相沢に彼氏がいたとは考えにくい。

そんな事を考えながら歩いていると、間違って旧校舎の方に来てしまった。

誰も使っていないのに残されている建物。田舎だし取り壊す予算がなかったのだろう。

まだあるのに忘れ去られてしまった旧校舎が哀愁を漂わせている。

「先生、今日家に行ってもいいですか?」

誰もいないはずの校舎から声が聞こえた。

僕は科学的根拠のないもの、幽霊は信じないタイプだ。

それに今の声…聞き覚えがある。

僕はそっと音を立てないように声のする方に向かって行った。

「どっちでも。」

この声もどこかで聞いた事のある声だ。

僕は声の主達の方に目を向けた。

自分の目を疑った。

どうして今日はこんなに驚かされる事が連続で起きているんだ。何かのドッキリ番組ですか。

今僕の目の前で会話をしているのは紛れもなく、キリンさんと担任だった。

なんで二人はこんな所にいるんだ。

何かの相談事か?

いや、そんなわけない。現実から目を逸らすな。

まず担任が煙草を吸っている時点で二人の関係はただならぬものではなさそうだ。

生徒の前で煙草を吸えるぐらいの仲だということだ。

つまり…。

どうして僕は落ち着いて謎を解くホームズみたいになっているんだ。僕はワトソンの役を貰った方だ。

「じゃあ、行きますね。今日は肉じゃがを作ります。」

女子の手料理で食べてみたいランキング一位の肉じゃがですか。

キリンさん、女子力高いですね。

この雰囲気は間違いなく、俗に言うカップルってやつですよね。

「楽しみにしている。」

そう言って担任はぼさぼさの髪をかき上げた。

まじっすか。

え、今日一日夢ですか。それとも本当にドッキリですか。

カメラどこですか。早くテッテレーって言ってください。

数分待ったが何も起こらなかったので現実なんだと受け入れた。

担任が古代ローマに出てきそうな顔の整った彫りの深いイケメンでした。

少女漫画ですか。

眼鏡をとったら実は美人っていう類のものと一緒ですか。

現実で初めてみたぞ。

今日から担任呼びをやめて彫深ローマ人と呼ぶ事にしよう。

「麻美の作ってくれる料理、見た目はあれだけどうまいからな。」

やっぱり麻美ってキリンさんの下の名前だったんだ。

瑠美麻美…。

韻を踏んでいて言いやすい。良いコンビっすね。

キリンさんは一言余計って言いながら顔を赤らめた。

キリンさんでも照れる事あるんだな。初めて女の子なんだなって思ったぞ。

目の前のラブラブな空気に見ているこっちが恥ずかしくなる。

先生と教師って恋していいんだっけ。

恋をするのに年齢関係ないし、誰と恋してもその人の自由だからいいのか。

「そう言えば、相沢が早退したんだよな。」

彫深ローマ人が呟いた。

そういえば、二人は朝の事件の時にどこにいたんだ。二人でここにいた可能性が高い。

「なんか瑠美と喧嘩したみたいです。」

そうか、と言って彫深ローマ人は煙を吐いた。

あれは…喧嘩なのか?

「相沢って美人だよな。」

僕もそう思う。相沢の容姿は美人の部類に入る。

「確かに美人ですけど、美人なだけで他は最低ですよ。」

キリンさんは少しふくれっ面をしながら尖った声でそう言った。

確かに自分の好きな人が自分の嫌いな女を褒めたら誰だって良い心地はしない。

この二人の関係を知っているのは僕だけなのだろうか。

「そう言えば、俺一回あいつが小学生の頃に一人で公園に居るのを見かけた事あるぞ。夜一時頃に。」

は…?小学校の頃に彫深ローマ人と相沢は面識があるのか。

「それどういう状況?てか小学生が深夜に公園にいて大丈夫なの?」

いくら田舎といえどもそれは流石に危ない。

「なんか、あいつ、泣いてたんだよ。」

「え。相沢でも泣く事あるんだ。それで先生はどうしたの?」

「一応話しかけたけど…。」

話しかけたのかよ。彫深ローマ人の今の見た目で話しかけたら間違いなく不審者と間違われるぞ。

もしその時に相沢が彫深ローマ人に色々話を聞いてもらっていて彫深ローマ人の事を好きになっている可能性はないよな…?

そうなると話が飛躍し過ぎている。なんで僕はこんな事を考えているんだ。

相沢が仮に彫深ローマ人の事を好きであっても僕には関係のない話だ。

頭でそう割り切っているのに心が何故かスッキリしない。

僕はばれないようにその場を離れた。

その後、彫深ローマ人と先生が何か言っていたが聞き取れなかった。




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