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バス停で相沢に会った。
なんだか少し疲れているように見えた。
よっ、そう言って相沢は僕に向かって手を挙げた。
挨拶の仕方が男みたいなんだよな。
僕も軽く手を挙げた。
「昨日何していたんだ?」
「なになに?渡はそんなに私の事が気になるのかい?」
僕は正直に気になるって言うと、予想外なことに相沢が照れた。
少し頬を赤くして、驚いた顔で僕の方を向いている。
素直に可愛いなと思ってしまった。
こっちまで照れる。
少し変な空気になってしまった。なんでこんな気まずい空気になったんだ。
まるで付き合って一日目のカップルみたいだ。
「なに照れてんの。」
この気まずい空気を破ったのは相沢だった。
「愛優が先に照れただろ。」
まるでバカップルみたいな会話だ。相沢とこんな会話をする日が来るとは。
今当たり前のように隣にいる女の子が殺人犯になって、いなくなってしまうなんて考えられない。
「絶対に殺人犯にならなきゃいけないのか?」
相沢の表情が固まった。
何も考えず、僕の目をまっすぐ見る。何故か寂しそうな目をしていた。
そのまま俯いてしまった。
相沢が殺人犯になるって決心していたのは知っていたはずなのに、どうして僕はこんなことを聞いてしまったのだろう。
「相沢?」
僕は相沢の顔を覗き込んだ。
泣きそうな顔をしていた。僕は初めて相沢のこんな表情を見た。
一体昨日何があったんだ。
いつもなら笑ってはぐらかすのに。どうしてそんなに苦しそうなんだ。
黙って下唇を噛みながら微かに震えていた。
僕は言ってはいけない事を言ってしまったのだと今頃になって後悔した。
「おい、相沢、大丈夫か?」
相沢は何も言わない。
僕の声が聞こえていないのか。
「相沢、何かあるなら言ってみろ。」
相沢の肩を掴んだ。相沢の瞳から涙がこぼれた。
苦しそうに泣く相沢を見ると心が締め付けられた。
こんな相沢見た事ない。何を抱えているんだ。
「相沢、何があったか教えてくれ。」
柄にもなく僕は声を荒くした。
ごめん、相沢は小さな声でそれだけ言って僕の手を振りほどいて走り去って行った。
僕はただ相沢の小さくなっていく背中を眺めている事しか出来なかった。




