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僕の好きな人は殺人犯  作者: 大木戸 いずみ
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「なぁ、愛優、もう少しクラスメイトの奴に優しくしようとか思わねえの?」

相沢は焼きそばパンを頬張りながら僕の方をじっと見た。

「おもふあない。」

「口の中のもの食べてから喋れ。」

相沢はゴクンと音を鳴らしながら焼きそばパンを飲み込んだ。

前世、ゴリラでしすか。

焼きそばパンを飲み込みこんでいるのを初めて見た。

「思わないよ。関わるのが面倒くさいし。私は一人で自由に生きるのだ。」

そう言って僕に親指を立てた。

「喋りかけてきたら優しく接するくらいはいいだろ。」

相沢は人差し指を左右に揺らした。お前は一体どこぞの外国人だ。

「ちっちっちっち、ミスターワタル、君は全然分かっていないね。」

「優しくしたら懐かれ、それが面倒くさいっていう感じでしょうか、ミスアユ。」

「オウ、ブラボー!!なかなかいい答えだよ。ワトソン君。」

相沢は焼きそばパン片手に拍手した。

もはや僕の名前ではなくっている。僕がワトソンだという事は、相沢はホームズか。

「前に話したけど、殺人犯が友達だったって嫌でしょ。」

「愛優がそんな理由だけであんなに冷たい態度をとるとは思えない。」

「さっすが、ワトソン君!その理由は二割くらいで、関わったら面倒くさいのが一割、そして残りの七割は誰かに割いている時間なんかないから。」

急に真剣な眼差しになった。

ふざけるのか真剣になるのか統一してくれ。

勿論、僕はふざけ続ける。

「それはどうしてなのだ、ホームズ。」

「そりゃ、殺人計画立てないといけないからに決まっているでしょう。」

成程。確かに殺人なんだから念入りに計画を立てなければならない。

けど相沢の言い方的にそれだけが理由じゃない気がする。というかそれが本当の理由じゃない気がするのだ。

まぁ、相沢がそう言うのなら、僕もそのまま話を進める。

「それで計画の進行状況はどうなんですか。」

「まずまずだな。」

「緻密な計画なんですよね?」

「ああ、勿論だ。」

相沢がまともな殺人計画を立てるとは思えない。

「本条君。」

急に名前を呼ばれた。

目の前に…また名前を忘れた。

うさぴょんが立っていた。

キリンさんもセットで立っている。

「えっと、何?」

僕は少し苦笑しながら聞いた。

「本条君は相沢さんが好きなの?」

得意なこんにゃくダンスをしながらうさぴょんは俺に尋ねた。

最近なんでこんなに相沢との恋愛フラグを周りから立てられるんだ。

俺がそのまま黙ってると、うさぴょんはさらに質問してきた。

「なんでいつも一緒にお昼ご飯食べてるの?」

「小学生の頃の同級生だから。」

「理由はそれだけ?」

うさぴょんは僕の保護者か。

なんでこんなに質問攻撃してくるんだ。僕に全問返答スキルがあると思うな。

「それだけ。」

「じゃあ、私達も一緒にお昼ご飯食べてもいい?」

嫌だ、とても嫌だ。

っていうか、相沢が確実に嫌がる。

相沢の方をチラッと見た。それは流石に露骨に嫌な顔をし過ぎだ。

僕は目で必死に相沢にSOSサインを送った。

今のこの状況から抜け出せる方法が思いつかない。

相沢は小さく僕にアイスと呟いた。

うさぴょんと一緒に食べるぐらいならアイスの一つ二つぐらい奢ってやる。

僕は小さく頷いた。

相沢は僕に軽くウインクして、氷の女王モードに入った。

「ねぇ、高澤さん。」

あ!高澤さんだ!!思い出した。

「私ね、二人以上でご飯食べるの嫌いなんだ。」

そう言って相沢が笑った。勿論、目は笑っていない。

今日は暑いはずなのにここだけ極寒っす。

「大勢で食べた方が楽しいよ。」

高澤さんが声を少し張りながら言い返した。

おお、前より少しはレベルアップしているじゃないか。

これは、氷の女王VSうさぴょん。

ああ、もう結末が見えてしまった。

「何それ小学生?」

お前が言うな。

「楽しいって根拠は?」

「皆でワイワイ楽しいじゃん。」

高澤さんに語彙力がないのが分かった。

もっと説得力のある回答はなかったのか。

「私、静かな空間が好きなんだ。」

お前が言うな。

僕は相沢の本当の姿を知っているだけに下手なツッコミを入れてしまう。

さっきから黙っているキリンさんの様子を窺った。めっちゃ睨んでいる。

皆さん、ようこそ北極へ。

どうしてこうなった。…元凶は僕か。

「ご飯食べる時は僕も少ない人数が良いんだ。」

高澤さんが泣かないように出来るだけ優しく言った。

ぼそっと相沢が胡散臭い笑顔って言ったのが聞こえた。スルーしよう。

「四人は少人数ですよ。」

ん?さっきと矛盾してるぞ。

なんだかとてつもなく疲れてきた。彼女は正真正銘の馬鹿だ。

「私、あんまり高澤さんと話したくない。」

見事なストレートパンチ。

相沢、同感だ。珍しく意見があったな。

僕も高澤さんと話したくない、というより関わりたくない。

高澤さんが目に涙を浮かべている。

「もう我慢の限界、瑠美に口出しするなって言われてたけどもう無理。」

キリンさんがようやく口を開いた。けどその形相は般若。

それより高澤さんの下の名前って瑠美なんだ。母と同じ名前だ。

「あんた、人の心がないわけ?」

「私は嘘つかれる方が嫌いだから正直に言ってくれる方が嬉しいけど。」

奇遇だな、僕もだ。今日は意見がよく合う日だな。

キリンさんが大きく息を吐いた。

「やってらんない。瑠美、もう行こ。」

そう言って高澤さんの手を引っ張りながら帰って行った。

これは相沢の勝利という事でいいですか。

二人が見えなくなると相沢はため息をついた。

「何あれ。なんかの漫画のヒーロー気取り?高澤瑠美は馬鹿なの?なんであんなにすぐに泣くわけ、涙腺壊れてるの?」

相沢が珍しくキレている。

「なんで僕は高澤さんに好かれたんだろう。」

「そんな事言いつつ、高澤瑠美みたいな子が結構好みだったりして。」

「ない。それが一番ない。」

即答した。

「それはそれで高澤瑠美が可哀想になってきた。」

「どっちの味方なんだよ。」

あっ、と相沢が何か思い出したように僕を見た。

「アイス!!」

そう言って、目尻をクシャッとさせた。

その無邪気な笑顔はさっきの氷の女王の面影を微塵も感じさせない。

多重人格なのかと疑ってしまう。

「分かったよ。」

相沢は手をピースサインにして僕に向けた。

それがイエーイってサインなのか、勝者のヴィクトリーのブイサインなのか、それともアイス二個を意味するサインなのか、どれなのか僕には分からなかった。

結局、相沢にアイスを二つ買った。






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