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4-1.GIRL MEETS WOMAN

前回のあらすじ!


うぅぅ……エイムちゃん可哀想……

ジョーさんがお酒を飲んでいる間、エイムちゃんもジョーさんと出会った時のことを思い出していました。

その時にエイムちゃんは自分の両腕も、自分の父親も亡くしてしまったそうなんです。

あれ、じゃぁ今の両腕は? あとお母さんはいないのかな? き、気になる。

でも、もっと気になるのはエイムちゃんがジョーさんに惚れた経緯ですよ! なんですかアレ! ジョーさん、エイムちゃんに悪い薬とか飲ませてないでしょうね!!


以上、恋する乙女ヒビキがお送りしました。

私のことが気になる方は間話1を読んでね!

第4話 GIRL MEETS WOMAN


 朝っぱらから二人は加工所にやってきていた。

 加工所とは『あるもの』を材料に様々な物品を造る場所である。『あるもの』についての説明はしかるべき時にさせて頂く。今は度々話題だけは出てくる『コーマ・アーム』という特殊な武器もここで作られている、ということだけわかっていればいいだろう。

 ジョー達が加工所に入ると、ほうきで床を掃除していた幼い少女 ――6歳くらいであろう―― が驚いたようにその栗色の瞳を見開いて、ジョー達を見つめた。


「お」


 ジョーが一声かけようとすると、少女はピカピカに磨かれたカウンターの奥へと逃げ出してしまった。客への対応としては0点をつけたい。こんなことをされたら心に傷がついてしまう。

 エイムがジョーの脇腹をつっつく。


「怖いってさ」

「俺の魅力が分かるには若すぎたってだけさ」


 若干声が震えているジョーにエイムがいたずらっぽく笑う。


「結構ショック受けてる?」

「おいおい、まさか! いやいや」

「ジョーって子供にはモテるもんね」

「それは酷い誤解ってもんだ。子供『にも』モテる。オーケー?」

「あぁ! そういえば男にもモテてたわね!」

「そうくる?」


 そんなやり取りをしているとカウンターの奥から一人の男が現れた。まず目を引くのはモッサモサの髭! とにかく髭である。顔の半分は髭なのではないかというくらい髭だ。目は細く、老齢を感じさせる深い皺と半分同化している。腹は少々出ているものの、袖まくりをしている腕はたくましい。頑固親父という言葉がこれほど似合う男はそうはいるまい。別に男が頑固な所を見たわけでもないのにそう思うのだから、不思議である。

 そして、その腕には先ほどの少女がぴったりと絡んでいた。


「この人……お客さん……」


 そう言う少女の頭を男はひび割れと傷だらけの手で撫でる。少女は愛らしくにっこりと笑うと、再びカウンターの奥へと引っ込んでいった。どうやら恥ずかしがり屋のようだ。


「おやっさんがここの主人……技師かい?」


 ジョーが聞くと、男は静かに頷いた。

 ジョーがここに来た目的は二つある。まずはその一つを男の前に置いた。


「これ、直せるか?」


 それはゲドー・ゲヘナが持っていた『チェーン・ソード』であった。折れた刃先も揃っている。


「……」


 男は無言で髭を摩りながら、チェーン・ソードを手に取り、まじまじと眺めた。エイムが首を傾げる。


「その『中折れ棒』使いモンになるの?」

「人前ではもっと上品にしろといつも言っているだろう」


 ジョーがテンガロンハットを軽く抑える。


「使えるかどうかってより、コイツが『まだ使ってくれ』って言ってる気がしてな」

「は? どういうこと?」

「なんとなくってことさ。本当に声が聞こえたわけじゃない」


 そう言ってジョーは折れた刃先の方を撫でた。エイムはカウンターにもたれかかる。


「ふーん。あんな変態に使われるわ、最後は素手相手にぶち折られるわで、ろくな目に会ってないもんね。確かに私でも成仏できないかも」

「ぶち折った犯人がよく言う」

「ま、救いは折った相手が超絶美少女だったってことよね」

「……そだねー」


 エイムは膨れ面でジョーを見やった。


「面倒になったでしょ」

「おやっさんを待たせちゃ悪いんでね」


 エイムはハッとした。途中から加工所の店主のことをすっかり忘れていたのだ。彼は黙って、二人の会話が終わるのを待っているようだった。紳士である。


「で、どうだい? 直せそうかい?」

「……待ってな」


 店主は一言そういうと、チェーン・ソードを持って、カウンターの奥へと引っ込んでいった。

 奥から「ウィンウィン」とけたたましい機械音が響いてくる。それからはまるでオーケストラのように大小高低様々な音のセッションだったのだが、それを事細やかに表現しようとすると、1ページでは済まないため割愛させていただく。

 音が止み、しばらくすると、彼が新品同様になったチェーン・ソードを手に持って出てきた。ジョーはパチンと指を鳴らす。


「グッド! いい腕してるぜ。いくらだ?」


 店主はゆっくりとかぶりを振った。


「……タダでいい。バンカーを救ってくれた礼だ」

「そうかい? はっはっは! いやぁ、悪いねぇ」


 ジョーは上機嫌でチェーン・ソードを受け取る。店主はその細いが鋭い目を更に細めた。顔の皺も相まってもはやどこが目だかよくわからない。


「アンタに言ったんじゃない。ありがとよ、嬢ちゃん」


 そう言いながらエイムに向かって頭を下げた。エイムは驚きで思わず佇まいを直す。


「私?」


 そして、その表情は喜色満面といった様子に変わっていった、


「えっへっへ。どういたしまして」


 エイムはジョーの背中に肘でもたれかかりながら、フフンと鼻を鳴らす。


「ほら、『ヒモのジョー』さん。もっと私に感謝なさい」


 クソ、コイツ……! と、ジョーは思ったが、今の所グゥの音も出ない事実なので、何も言い返さなかった。彼は20代で、大人なのだ。おっさん呼ばわりされると怒る大人なのである。この程度の我慢はお茶の子さいさいだった。

 ジョーは思う。『ビッグ・ガン・ジョー』とも呼ばれた俺がこんなガキにいいようにされるとはな。笑えねぇ話だが……悪くねえ。

 思わず出た笑いをかみ殺すとエイムの肩を叩いた。


「相棒、確かに今まで世話になったが、これからは一味違う俺のデビューだ。コーマ・アームを手に入れたプロテクターの『凄さ』ってもんを教えてやる。ってわけで、おやっさん。『クリッピング・リスト』を出してくれ」


 ジョーがそういうと、店主はカウンターの下から紙の束を取り出した。これがジョーが加工所へ来た二つ目の目的である。



 ここで軽く説明をさせて頂きたい。

 『クリッピング・リスト』とはバンカー住人からの依頼書の束である。基本的に依頼書は依頼主・依頼内容・報酬の3つからなっており、おばぁちゃんの肩叩きや荷物運びなどお手伝いレベルのものがほとんどである。ただ、その中で、赤みがかった紙で作られているものがある。それは全てバンカー長が依頼主となっており、『レッド・リスト』と呼ばれている。内容は主にコーマ退治、危険地域での護衛や発掘、マリグナンシーの殲滅など『プロテクター向け』のものになっている。

 このクリッピング・リストは総合事務所と加工所に置かれているが、プロテクターは加工所の方を使うことが多いのでレッド・リストのほとんどはこちらに置かれている。コーマ・アームの調整・修理なんかの合間にでも眺めているのだろう。おあつらえ向きに加工所の窓際には古ぼけた机と椅子も置かれている。紅茶の一つでもあれば中々優雅なティータイムを過ごせそうだ。



 そう、ジョー達は当面の活動資金を稼ぐため、働きにきたのだ。

 ペラペラとジョーがレッド・リストのいくつかをめくる。その中の一つに目が留まった。

 『廃墟に住み着いたコーマの退治。中型(猫)の目撃情報有』

 ということだった。後は簡素な地図があるだけだ。

 ジョーはピンと紙を弾いてエイムにバチンとウィンクをした。


「これでタダのヒモじゃないってところをお見舞いしてやるぜ」


 そう言ってジョーは威勢よく加工所から出ていく。


「お手並み拝見ね」


 その後をエイムがゆっくりと追っていった。



 結局はヒモなのか……

 二人の背中を見送りながら加工所の店主は思った。

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