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3-2. 二人の出会い SIDE:エイム


***********************************

 一年前、ユヅル・ニシノの加工所。

 エイムのこの日の目覚めは最悪 ――例えば口からクソを垂れ流すエイリアンとディープキスでもかましたような―― とにかく最悪だった。


「成功だ、成功したんだ……」

「おい! しっかりしろ!」

「コアは、万物に、そのために……血にも肉にも……」


 なにせ、目覚めたとき、一番最初に目に入ったのが


「クソ! 駄目だ、もう……死ぬ前に教えろ! 俺の『ワン・ショット・キル』はどうした!?」

「頼む、どうか、あの子を……」


 父が男に向けた手がだらんと下がり、その瞳から生の光が失われていく。


 目に入ったのが、自分の父親が死ぬところだったからだ。


 死ぬ直前まで父親と話していた男と目が合う。不思議と恐怖は感じない。

 彼が父親を殺したのだろうか? とエイムは考えた。



 そうに違いない。

――違う。

 知らない。

――覚えている。

 わからない。

――理解している。



 エイムの混濁していた意識があまりにもクリアになっていく。彼女としては気分的に気絶でもして一旦仕切り直したいところだったが、体調がなんとも絶好調すぎて ――かつてないほどの万能感があった―― それを許してくれない。

 仕方ないので彼女は頭の中に流れ込んできた奔流のような情報を少しずつ整理していくことにした。

 ここで何が起きたのか。

 自分に何が起きたのか。



 目覚める前の記憶は強烈だった。

 遺跡に行ってその時に大型のコーマに遭遇し、なんと『両腕を食べられた』のだ。プロテクターでない自分が遺跡なんかに行ったのは、遺跡の調査がかなり進んで安全が確保 ――もちろん、大型のコーマが出現するまでの話だが―― されていたのと、体調を崩していけなくなった父親の代わりであった。

 当然、事故直後に私は気絶した。

 生きて帰れただけでミラクルだろう。


 それから何日経ったかはわからない。そして二つ目のミラクル。


「腕……ある」


 今の私には両腕がしっかりと揃っていた。違和感はない。前述の通り絶好調である。

 これは父親が与えてくれたものだ。生前にやっていた研究の賜物だろう。

 結果として私は父に助けられたのは間違いない。娘を思う気持ちの強さが奇跡を生んだのか、研究を『人体実験』で検証した狂気の産物なのか、今では確かめる術は無いが。


 だが、ミラクルはそう続かない。

 父親が私を『治療』もしくは『実験』した時、その負荷に機材の方が耐えられなくて大爆発。それに巻き込まれて父は死んでしまったのだ。

 これで大体の流れは整理できただろう。



「全く、こんなことならあのまま寝ておけばよかったぜ」


 私がここ数日の間でのあまりにもドラマチックな展開に感心していると、クソダサいテンガロンハットを被った男がやれやれとでも言うように首を振った。そして、無遠慮に私に近づいてくる。

 ただ、いきなり登場人物として出てきた、見知らぬコイツ。コイツだけがよくわからない。父親は事故死だ。研究に助手がいたなんて話も聞いたことがない。なら、彼は何者で、何でここにいるのだろう。


「おはよう、お嬢さん。早速で悪いけど、何があったか知ってる?」


 言動がいちいち癪に障る男 ――見た目は悪くないが、よく見れば軽薄そうな感じもする―― の無骨な手が私の肩に触れた瞬間、私の中で稲妻が走った。

 あぁ! 神様! そういうことだったんですね!

 神の存在なんて信じるような世の中じゃないけど、この時ばかりは思わず感謝してしまった。

 最後のミラクル。

 人生最高のドラマ、いや、ロマンチック。

 私はこの人と出会うために生き延びたんだ。


 最悪にファックで、最高にハッピーな運命の日。

***********************************


 あの事故前後で私は別人とも呼べるほどの変貌をしてしまった。

 髪は銀色に染まり、目の色は変わり、力はやばい、体重も倍以上。どうせなら胸の方も増量してくれればよかったのに肝心な所は元のままだ。

 それでも、お父さん。助けてくれて、ありがとう。


「……もしかして、酔ってる?」


 だって、今こうして大好きな人の隣で笑っていられるんだから。


 エイムは笑顔でジョーの顔を見つめた。



【二人の出会い SIDE:エイム 終わり】

次回予告!(担当:エイム)


なんとあの駄目旦那が働きだすと言い出した!

嘘でしょ!?これは絶対に裏がある……

予想通り、そこには謎の女の影が……?


次回、第4話 GIRL MEETS WOMAN


あなたのハート、狙い撃ち!


【超メモ】

・水と酒

 この世界では水は別に希少なものではない。なぜなら雨が普通に降るからだ。雨は非常に清潔で、そのままでも飲み水に出来るレベルだが、埃は混じっているので、一応浄水システムは通す。この浄水システムは文明崩壊時に使われたシェルターには必ず完備されている。

 もう一つ、シェルターに完備されていたものがある。それはアルコール飲料の製造システムである。過去の文明人はおそらく、『飲まなきゃやってられない』と強く思う事態に直面していたのだろう。

 また、遺跡からでも文明崩壊前に作られた酒がよく発掘される。発掘酒と呼ばれ、価値はそこそこ高い。

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