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2-2. 二人の出会い SIDE:ジョー



***********************************

 1年前。とあるバンカーのバー。


「ウチのバンカーを襲った大型のコーマを一人でやっちまうとは……流石『ビッグ・ガン・ジョー』!! 噂に違わぬ腕っぷし!」


 バーでは飲めや歌えやの大騒ぎである。その中心にいる人物こそ、


「はっはっはぁ!! そんなこと……あるかぁ!? やっぱりぃ!?」


 ジョーその人であった。


 ちなみに『コーマ』についての詳細はもうしばらく ――少し後の実物が出てくるまで―― 待ってほしい。とりあえず『コーマ』とは人類の敵であり、その『コーマ』を倒せるのが『コーマ・アーム』と呼ばれる特別な武器である、ということだけここでは覚えていて頂ければ今は十分であろう。


 ジョーは大きなジョッキを一気に傾け酒を煽る。


「はぁっ。ま、俺にかかればどんなデカブツだろうが」


 そして、酒をつぎ足しにきたとてもいい体をしているウェイトレスに向かって、指でバン! と打つ仕草をした。


「美人ちゃんだろうが……イチコロ、さ」

「軽い男に興味ないの、アタシ」


 ごっくんボディの彼女はフンと鼻で笑い、お尻をプリプリさせながら去っていく。瞬殺である。

 ジョーはヒュー! と口笛を吹いた。


「外しちまったぜ! はっはっは!」

「大型のコーマよりも強敵だな、ジョー! わははは!!」


 ジョーも一緒に飲んでいた男達も大いに盛り上がった。

 彼等が今しているのは祝勝会である。今までの話から想像はつくだろうが、ここのバンカーを襲い、被害もかなり出ていた『大型のコーマ』を偶然このバンカーを訪れていたジョーが退治したのである。

 男達の中の一人がジョーと肩を組む。


「『渡り』にしとくのはもったいねぇ! ここのプロテクターになってくれよ!」


 ジョーは大袈裟に肩を竦めてみせた。


「駄目駄目。俺にはエルドラド行って機械の体を手に入れるって夢があるからな!」

「エルドラド? 伝説の? そりゃいい! アンタなら行けるかもな!」

「そうだろう? 今時こんな夢持ってるのは俺くらいなもんさ! はっはっはっ!」

「ちげぇねぇ!!」


 再び男達が大笑いをした。



 ここで説明しなければなるまい!

 ジョーは『渡り』と言われる『プロテクター』である。『渡り』とは特定のバンカーに所属せずに様々なバンカーを転々としていることを意味しており、『プロテクター』とは『コーマ・アームを使える者』を意味している。ちなみに、プロテクターでありながらその力を悪用し ――いつの世も特別な力を持つとろくでもない使い方をする者が出てくるのは同じである―― 賞金首となった者、それが『マリグナンシー』である。

 コーマ・アームを扱える者は人類のごく一部だけであるが、その理由は定かではない。

 この力を使ってプロテクターは時にはマリグナンシーからバンカーを守り、時には危険なコーマを狩り、時には遺跡の発掘を行うのである。つまり、プロテクターは用心棒であり、ハンターであり、冒険者であるのだ!

 小さい男の子達の将来なりたい職業堂々のナンバー1 ――危険の高さ故、親達の子供にさせたくない職業も堂々のナンバー1―― である!

 そして『エルドラド』。それはそんな『プロテクター』の間に伝わる伝説の都のことである。『そこに行けば望む全てが叶う』と言われている。

 どうやらジョーはそのエルドラドを探して『渡り』をしており、そこで『機械の体を手に入れる』ことが目的のようだ。



 こうしてジョーがバーでクダを巻いていると、一人の男がふらりと現れた。すると周りの男達が顔をギョッとさせ、ジョーが引き留めるのも構わずに別のテーブルへと席を移してしまった。


「なんだい、アンタ?」


 ジョーが怪しげにその男の顔を睨み付ける。ジョーはこのバンカーに来てまだほとんど経っていない。バンカーの住人の顔などほとんど知らなかった。見た目は普通の ――少しやつれているように見える―― ただの優しげな男であった。


「ジョーさんですよね?」

「いかにも、渡り鳥のジョーとは俺のことよ」

「私、アナタのファンなんです」


 そういうと、怪しげな男は無遠慮にジョーの正面に座った。その顔には張り付いたような笑顔を浮かべている。


「お会いできて光栄です。しかも、あの暴れコーマすら倒してしまうとは。これは私からの驕りです。遠慮なくどうぞ」


 男はウェイターを呼び、酒を注文する。

 琥珀色の液体が入ったショットグラスがジョーの前に置かれた。高そうな酒である。


「悪いね! じゃ、遠慮なく」


 それを前にして、ジョーは喜々としてショットグラスを一気に煽った。

 焼ける喉! 芯から湧き上がる熱! ほどよくぼんやりする頭! いい酒である!


「くぅ! きくねぇ!!」

「お気に召したみたいでよかった」

「それで、何だっけ、サイン?」

「それも後で頂きたいですが……私、一度、あなたが使っているコーマ・アームを見せて頂きたくて。後ろにある布にまかれたソレがそうですか?」

「お、こっちの方の趣味? 通だね」


 何だか怪しげな雰囲気の男に対して、すっかり上機嫌になったジョーは特に疑問も持たず、少しふらつきながらコーマ・アームを取り出して見せた。完全に酔っ払いである。今なら何を要求しても好意的に解釈してやってくれるだろう。酒は飲んでも飲まれるなという言葉はジョーも知っているが、知っていても実践するのは ――特にこれは―― 難しい。


「これが、ご自慢の『ワン・ショット・キル』さ!」


 コーマ・アーム『ワン・ショット・キル』! それは巨大な砲身を持った銀色の銃らしきものであった。全長は椅子に座っているジョーと同程度ほどで、なまめかしい曲線が非常にセクシーである。


「素晴らしい! それで暴れコーマを倒したんですね!」


 男の賞賛にジョーは満足げだ。


「そう! 聞きたいか! 聞かせてやる!」


 追加の酒を頼んだ後、男は興味深そうに頷いた。



 酒を飲みながらジョーはこんこんと語り続けている。


「そうよ! そこで『ワン・ショット・キル』の出番ってわけさぁ!」


 男は相槌を打ちながら、ジョーのグラスに酒を注ぐ。あからさまに態度が適当になっているが、酒にやられたジョーは気づかない。


「なるほど。さぁどうぞどうぞ」

「おっとっと、はっはっはっ!」

「それで?」

「そこで俺は言ってやったわけよ!」


 飲んで、しゃべって、また飲む。これをどれだけ重ねただろうか。


「さぁ、どうぞどうぞ」

「おっとっと、はっはっはっ!」


 ジョーの意識が遠く、遠くまどろんでいく。


「どうぞどうぞ」

「うーん、でなぁ」

「どうぞ」


…………………


「ひょれでぇ……トドメぇ……このぉ……わん、しょっと、きるぅ……」


 ジョーの手が何もない空間を彷徨う。


「はれ……??」


 何度も確かめるが何もない。


「お連れさん、とっくに帰りましたよ」


 その様子を見かねてか、ウェイトレスをしていた女性の一人がジョーに声をかける。


「もうお店閉めますから、あなたもさっさと帰ってください」

「俺の銃は……?」

「何言ってんですか。『ユヅルさん』に頼んだんでしょ? 酔って持って帰れそうにないから、寝療所に持っていっておいてくれって」


 ジョーの酔いが一気に冷める。


「……野郎!!」


 俺のワン・ショット・キルを盗みやがった!!!

 ジョーの顔が珍しく怒りに歪んだ。明らかに自滅であるが、盗む方が悪いのは自明である!

 ジョーはウェイトレスに詰め寄ろうとしたが、彼は紳士なので代わりに机で突っ伏して寝ていたハゲ頭をぶったたいた。


「ほわ、かぁちゃん!!?」

「カーチャンじゃねぇ! 俺と一緒に最後まで飲んでたのはユヅルとかいう奴か!! どこのどいつだ!!」

「あ、あぁ、ジョーかよ、焦った……そうだよ、ユヅル・ニシノさん。このバンカーの加工技師やってる人よ」

「どこに住んでんだ!?」

「ここを出て、通りをまっすぐの突き当り。青い看板あるからすぐ」

「あんがとよ!」

「おい、でも今あそこは、って聞いちゃいねぇ」


 もうそこにはジョーは居なかった。場所だけ聞いて慌てて出ていったのだ。


「ほらあんたも帰った帰った」


 ウェイトレスが残った男をせっついた。



「あそこか!」


 ジョーは青い看板を見つけ、猛然と駆け寄る。そして烈火の怒りをこめて扉に手をかけた瞬間だった。

 大きな爆発音! 凄まじい衝撃! 吹き飛ばされるジョー! 無様に扉の下敷きになるジョー! 踏んだり蹴ったりだジョー!

 爆発の発信源はどうやらこのユヅル・ニシノの加工所の中である。一体何が起きたというのか。


「な、なんだぁ?」


 乗っている扉をどかし、顔だけ上げる。中からはもうもうと埃が立っているが、煙は無い。火事になっているわけではなさそうだ。

 ジョーはフラフラと立ち上がり、加工所の中を覗いた。中はぐちゃぐちゃになっている。爆弾でも投げ込まれたのだろうか。ジョーは慎重に中へと足を進めた。


「ひでぇもんだ……ん?」


 薄暗闇の中、目をこらす。

 するとそこにはあの怪しげな男が倒れていた! 体中は傷だらけで、腹部には大きな金属片が突き刺さっている。致命傷だ。流れ出る大量の血と蒼白の顔が男の死期の近さを物語っていた。


「おい! しっかろしろ!」


 動かすことも出来ず、ジョーは屈んで、男に対して呼びかける。

 しかし、男はうわごとを繰り返すだけでジョーの言葉など聞いていない様子だった。


「俺の『ワン・ショット・キル』はどうした!?」

「頼む、どうか、あの子を……」


 それが男の最後の言葉であった。


「あの子?」


 男の最後の言葉が気になったジョーは注意深く辺りを見回す。

 目に留まったのは床で寝転がっている一人の少女。

 それは不思議な光景であった。

 辺りが爆発によってぐちゃぐちゃになっている中、まるでその少女だけは後からそっと置かれたのように無傷であった。


 その少女こそ『エイム』である。

***********************************



 時は今に戻る。


「全く、酒ってのはドラマだね」


 ジョーは独り言を言い、グラスを傾け、中身を飲み干した。


【二人の出会い SIDE:ジョー 終わり】

次回予告!(担当:エイム)


お金を持って出て行ってしまった旦那の背を見送る私。

昔はこんな人じゃなかったのに……

私は枕をナミダで濡らしつつ出会った頃のことを思い出していた。


次回、第3話 二人の出会い SIDE:エイム


あなたのハート、狙い撃ち!!


【超メモ】

・フローターバイクとは

 一人用のバイク。無理すれば二人くらいは乗れる。動力はモーターであり電気で動く。姿はスクーターとゴムボートを足したような形をしている。走る時はちょっとだけ浮いて地面の上を滑るように移動できる。充電満タン時の連続航行距離は500km。走破性は高く、荒れ地だってへっちゃらだ! この世界の一般的な乗り物である。

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