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15-2.青空を駆ける流星

 ドォォン……

 天井の一部がはがれ落ち、大きな破片となって落ちる。クリティカル・ポイント。遺跡の限界は近い。


「あぁ、本当にやるのかい?」


 崩れ行く遺跡の中、ネムが不安を口にする。


「これが駄目なら、みんな仲良く死ぬだけさ。相棒、信じてるぜ」


 ジョーは目の前にいるエイムにウィンクする。


「任せて!」


 エイムは自信満々で頷いた。

 現在、三人は密着して、ミノタウロスの残骸の上へと立っていた。そして、ジョーの手にはワン・ショット・キル。その銃口は真上、つまり崩落間近の天井へと向けられている。

 エイムが語った『最高の作戦』、それは荒唐無稽かつ実現困難、そして、それしかないという代物であった。


*******************************


「えっへっへ。気づいちゃったんだけど、あの牛のコーマ。アレと私って『共鳴』してたのよね! 多分!」


 エイムが得意げに鼻を鳴らす。

 『共鳴』とは特定のコーマ・アームとレア・コーマのコアに起こる現象で、それが起こったコーマ・アームとレア・コーマを加工所に持っていくことでコーマ・アームをグレードアップさせることが可能なのである。


「だから、この場でパワーアップしちゃいましょ! 私ならイケる!」


 エイムは拳を振り上げ力説する。


「パワーアップしたワン・ショット・キルでここの天井を外まで消し飛ばす! その後、私が操るロボットでぴょーんと脱出! どう? 完璧でしょ!」


 エイムはフンスと鼻息を漏らした。


*******************************


 ジーザス・クライスト! これを作戦と言っていいものか!? エイムの語ったどれか一つでも出来なければそのままデッド・エンド。死に繋がる。これはスカイ・ハイ綱渡りどころではない、ただのノー・ゴム・バンジー!

 だが、本気だ。

 エイムの目も。ジョーの目も。ネムの……若干怪しいか? いや、ネムも覚悟を決めた目となる!

 三人はワン・ショット・キルを中心にトライアングルのように囲み、銃身を支えている! トリッガーはジョー! ミノタウロスから引き抜かれた緑色のコアはネムの右手にある!


「さぁ、いくわよ!」


 正面で銃身を背で支えるエイムが目を閉じ、集中! その銀色の髪がザワザワと揺らめきだした!

 シュルシュルシュル……

 ネムの右手のコアに、ワン・ショット・キルに、その艶やかな髪が触手のごとくからみついてゆく!


「エイムちゃん! 何度も思ったけど、アンタ怪物だよ! とびっきりイカしたね!」


 ネムがやけくそ気味に叫ぶ。


「タイミングは任せたぜ、相棒!」


 ジョーは手にかかったトリッガーに神経を集中させる。

 エイムは微塵も疑っていなかった。『自分ならできる』と。まるで息を吸って吐くように、やり方など意識しなくても勝手に体が動くのだ。何故自分にこんなことが可能なのか? そんな疑問すら彼女の頭には浮かばなかった。


「もっと、もっとよこしなさい……」


 エイムは唇をなめる。

 ミノタウロスの緑色コアが強く強く輝きだす。

 ワン・ショット・キルも呼応するように節々から光の粒子が溢れ出す!

 ウゥゥゥゥゥ!!

 唸り、そして振動! この巨銃に何が起ころうとしているのか!?


「もっと、もっと!」


 ウゥゥゥゥゥゥゥゥ!!

 おぉ、おぉ! 刮目して見よ! 光の粒子が巨銃に渦巻き、形を成していく!


「わかってるぜ、相棒。出来るさ、俺達ならな!」

「もう信じるしかないね。いっちょ派手にやろうかい!」


 ジョーとネムは何かを感じたのだろう。まるで問いかけに答えるように叫んだ。


 覚えているだろうか。

 コーマ・アームは『人の精神と直結する武器』であるということを。

 今、繋がっているのだ。『ワン・ショット・キル』を通じて三人の精神が。いや……もう一人、彼等の無事を祈る少女とも、きっと。


 ウゥゥゥゥゥゥゥゥ!!

 光の粒子は歪曲した巨大な二本の角を前に突き出したがごとく形成!


「今!」


 エイムの目が開く! その透き通るような青い瞳は爛々と輝いていた。


「「「いっけぇぇぇぇぇっっっ!!!!」」」


 三人の魂の咆哮と共に、トリッガーが引かれる!

 ブドゥゥゥゥゥゥゥゥムッッ!!!!

 グッド・ゴッド……ビッグ・グッド・ゴッド!! なんたる輝き! なんたる剛力! なんたる神々しさ! その一撃を言葉で表すなら『大噴火』!!

 部屋全体を覆わんとする極太レーザーはこの世の鬱憤全てを晴らすかのように軽々と遺跡を突き抜けて地表まで突破し、どこまでもどこまでも天へと伸びていくのだった。


 それはまるで青空を切り裂く流れ星のごとき幻想風景。



 シン・バンカーにて。


「すっげー!!」


 正義のプロテクターを目指す勇敢な少年、ショウが目を輝かせる。


「なんだよ、ありゃ!」


 シン・バンカーに所属するプロテクター、グラトンは愕然と空を見上げた。


「がっはっはぁ! こりゃ土産話が楽しみじゃのぉ!」


 同じくハン。目元の大きな古傷を歪め、肩を揺すりながら大いに笑った。



 エイムの友人であるヒビキ。彼女は指輪を握りしめ、何度もうなずいた。

 青空へと真っすぐ延びる一筋の光。

 それは、無事を祈る彼女に対してのエイムの答えのような気がしたからだ。

 「私は大丈夫!」「絶対帰る!」という力強い答え。


「待っているね、エイムちゃん」


 ヒビキは空を見上げ、にっこりと笑った。



「とんでもないねぇ……」


 ネムが大の字で仰向けになって呟く。右手に握られたコアは風化し、銀色の砂となって風に攫われていった。


「そうだな」


 ジョーも大の字で仰向けになって呟く。わざとらしく欠伸を一つし、眩しそうに目を細めた。

 彼等は見ているのは目一杯に広がる青空。差し込む太陽の光をその全身に浴びている。ぽかぽか陽気が疲れた体に染み渡る。

 ただ、ここは外ではない。


「まさかここまで丸ごと吹っ飛ばすとはね」

「崩れる心配もなくなって安心安心一安心ってな。俺としてはもう少しここで寝ときたいところだね」

「同感」


 彼等がいるのはミノタウロスと激闘を繰り広げた、その跡地。

 あの一撃は、天井に大穴を開けるどころではなく、彼等の頭上にあるもの全てを綺麗さっぱり吹っ飛ばした。もう急いで脱出する必要などなくなったのだ。

 だが。

 ウィィィーゴ!

 たどたどしい駆動音が響く。


「えっへっへ! さぁ、最後の脱出よ! ちょっとさっきの衝撃で動きが怪しくなってるけど!」


 エイムの元気いっぱいな声。ボロボロになったロボットが異音と駆動音を響かせながら二人に近づいてくる。どうやら彼女は最初のプランを変えるつもりは毛頭無いらしい。

 ネムが頭を抱える。


「アタシ、今からが今日で一番不安だよ」

「俺もだ」


 ジョーは苦笑いを隠すように、テンガロンハットを自分の顔へと被せた。



 …………。

 ……。

 果たして彼等は無事に遺跡を脱出できたのか。

 非常に気になるところではあるが、残念ながらこの物語は一旦ここで終わりとなる。

 だが、安心してほしい。

 彼等の冒険は終わらない。近い内にその軽口と剛腕を振るいながら戻ってくることだろう。


 ではその時まで……サラバだ!


【青空を駆ける流星 終わり】

もうちょっとだけ続きマス。

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