間話6.エイムとロボット
少し時間は戻って、エイムがスティングレイや四足マシン達を倒し、鉄梯子で下へ降りた時点のことである。第12話の直後くらい、と言った方がわかりやすいだろうか。
エイムは目の前の光景にその青い瞳を輝かせた。
「ほわぁー、すごいすごい!!」
そして大喜びで『それ』の周りをウロチョロする。エイムの目の前にあるもの、それは、拘束器具に繋がれたいくつかの大きな『二足ロボット』であった。新品のようにピカピカとまではいかずとも、十分まだ使えそうだ。どれだけの年数をここで過ごしてきたかは不明だが、旧文明の技術おそるべしといったところか。
「これこれ! お宝ときたらこうでなくっちゃ!」
エイムはロボットを猿のごとくヒョイヒョイ登っていく。そして、ハッチを無理やりこじ開けると、コックピットの中へと座り込んだ。年代物の埃がバサリと舞う。
「うぇ、ごほっごほっ!」
エイムは慌ててハッチを開放して、埃を外に出す。そして改めてコックピットの中を見回した。よくわからないレバーが四本。そして中央には何かたくさん配線のついた頭半分覆うくらいのデカいサングラスっぽいバイザー。
「うぅーワクワクするわね!」
エイムは躊躇なくバイザーを頭に装着する。だが何も起きない。目の前は真っ暗のままだ。エイムは首を傾げ、レバーを適当にガチャガチャしてみるが、特に何の変化もない。
おかしい。乗り物というのは大なり小なり操縦席で全ての行為ができるようになっているはず。電源すら入らないのは一体どういうことか。……電源?
「あぁ!」
エイムは手を叩く。そうか。電気が無いんだ。エイムは外に出てロボットを降りた。周りをもう一度注意深く見てみる。
すると、ロボットの足の付け根辺りから太いチューブが出ていることがわかった。それをグングンと辿ってみると……やはりか。途中でそのチューブは千切れ、中の配線がむき出しになっているではないか。
他のロボットも調べてみたが、全部同じ状態だ。これでは動かせるはずもない。
「そんなぁ」
エイムはがっくりと肩を落とす。ネムがいれば電気ショックバリバリで何とかなったかもしれないのに。そんな到底無理そうなことを考えながら。
「ネム?」
ふとエイムが思いつく。そしてニンマリといたずら小僧のような笑みを浮かべた。
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エイムは再び大きなバイザーを頭に装着する。
すると今度は「ハローワールド」の文字が目の前に浮かび上がった! 彼女は一体何をしたのだろうか。
「やったぁ! 為せば成るって奴ね!!」
エイムは両手……!? いや、左手が無い!? 喜ぶ様子のエイムの左腕の肘から先が無いのだ! 一体どこへ?
視点を外へと移そう……あった! ロボットの足の根本、電力供給チューブが刺さっていた場所に白い手がうっすら見えている……ワッツ!?
そう、これは数分前の出来事だった。
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「そういえばネムがコーマのコアってエネルギーパックにも使うって言ってたわね」
エイムは自分の腕を肘から先だけ切り離す。
「これも元を正せばコアなんだし、電気替わりにならないかしら?」
そう言って電力供給チューブを引っこ抜き、代わりに自分の腕を突っ込んだ。
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……ジーザス……無茶苦茶だ。無茶苦茶である! つまりミノタウロスと二足ロボットが戦っている間、ロボットの足の根本では死体のごとき白い手がチラチラブラブラしていたということか!? なんたるホラー! 何故それで動いてしまったのだ!?
いや、深く考えるはよそう。もう現実動いているものは仕方がない。諦めは心の養生である。
エイムは数分間もの間、バイザー越しに流れる文字をふむふむと読み進める。ほとんど意味はわからないが、こういうのは何となく出来てしまうように出来ているものだ。
『脳波同期完了。ハロー・レディ』
最後にその文字が映し出されると同時に右下にイルカのサポートAIが現れる。どうやらやりたいことを強く思えばこのAIがやり方を回答してくれるようだ。
「さぁ、行くわよ!」
エイムが唇をペロリとなめる。
AIが『普段通りの歩くイメージをしてネ』と吹き出しで出す。ちょっと前のめりになりすぎたせいで、AIが反応してしまったようだ。
エイムは少しウザく思いながらも、言われた通りの歩くイメージをする。
バキバキと拘束装置を破壊しながら、『二足ロボット』は発進したのだった。
【エイムとロボット 終わり】
【超メモ】
・コーマ・アームのエネルギー切れ
結論から言おう。そんなものは存在しない! コーマ・アームは装着者の精神が折れない限り、無限に稼働し続ける。素晴らしい!
具体的にほんの少しだけ解説しよう。コーマ・アームが起こす事象、例えば『放電』や『硬化』はコーマ・アームに備わった何らかの物理機構によって引き起こされるわけではない。その『結果』だけを現実に引き起こしているのだ。
例えば火を起こすときあなたならどうするだろうか? 簡単なのはライターのボタンでもカチッと押すことだろう。ライターはボタンを押すことで、可燃ガスを放出、同時に火打石で火花を送り、そのガスに火をつける。シンプルかつ洗練されたメカニズムである。
だがコーマ・アームはこの『可燃ガス』『火打石』にあたるものを必要とせずに『火をつける』ことだけ出来てしまう。だから極論にはなるが、コーマ・アームならば水中でも火を起こせる。目視できないほど一瞬の出来事になることはさておいて。
つまり、コーマ・アームが引き起こす事象は物理法則を完全無視したものであり、『魔法』と言っても過言ではない。そのため、モノ自体に事象の元となる『燃料』、『エネルギー機構』等が必要ないのだ。必要なのは『使用者の意志』だけ。とてもファンタジーな武器なのである。




