13-1.真実と鉄拳
前回のあらすじ!
エイムちゃんとネムさんが謎の触手に攫われ絶体絶命(?)! でも二人の機転(?)で見事にピンチ(?)を切り抜けます! ってさっきから何ですか(?)って! ピンチだったでしょう、二人とも! ぷんぷんですよ、ぷんぷん! え? ジョーさん? ジョーさんは……えぇっと。前回はあんまり出番がなかったというか。
コホン。ネムさんはそんなジョーさんと合流して先に進むと何やら妙な所に出たみたいです。エイムちゃんは別行動中に何かを発見したのかな? 綺麗な瞳を輝かせて嬉しそう。これまた一波乱の予感……!
以上、シンバンカーの看板娘、ヒビキがお送りしました。
物語も今回含めてあと3回。みんな頑張れ!
第13話 真実と鉄拳
ジョーとネムが出てきた大広間は今までとは雰囲気が大きく違っていた。
まず広さ! とにかく広い! ここにくる途中であった円形ホールより大きく、脇に設置された階段を使うことで、段々畑のように配置されている上の階層と下の階層に移動できる全三階層構造となっている。当然天井も驚くほど高く、今までの鬱屈とした様子から一転、とても開放的だ。
次になんといっても目を引くのは前方半分 ――二人が入ってきた扉から見える方向を前方とするなら―― の全面ガラス張りの意匠だ! ただし、ここは生憎の地中なので外は何も見えない。ここが空の元にあったのなら日光浴に最適であっただろう!
ジョー達は大広間の中ほどまで歩き出る。
プシュー。
音を立てて二人が入ってきた扉が閉まる。最早お決まりの挙動だ。そんなことは気にかけず、二人は辺りを注意深く見渡した。
中層、下層、どちらの床にも腰ほどの高さの妙な機械群がU字型に並べられている。そして、機械群の前には床固定式の椅子が、上には映像モニターが設置されていた。半分くらいの映像モニターは割れて壊れていたが、残りのモニターはまだ生きている。上層の様子はジョー達のいる場所からではわからなかった。
なるほど、モニターの発する光と壁面にまばらに配置された蛍光装置のおかげで、視界に支障はきたさないほどにはこの大広間は明るいようだ。瓦礫等は少なく、他の部屋に比べて保存状態は良好である。
「ここで終わり?」
ネムが呟く。そう、見える範囲では扉は彼等が入ってきた一つしか見当たらない。ジョーは首を振った。
「わからん。相棒もいなさそうだ」
「探しに戻るかい?」
ジョーは無精髭を摩りながら、しばし考える。
「いや、『ミイラ・ハンター、ゾンビになる』という先人の言葉もある。ここはどっしりと構えようぜ。それに」
彼は顎をしゃくって機械群を指した。
「あれを調べれば情報ついでに鬱陶しい『おもてなし』を止められるかもしれん」
*
二人は手分けしてこの妙な機械群が並んだ大部屋を調べ始めた。
下層をジョー。上層をネム。つまりジョーが下、ネムが上である。ジョーが下、ネムが上である。二回繰り返したことに特別深い理由はない。
まずはジョーの方から見てみよう。
ジョーは機械群の生きている映像モニターを片っ端からザッピングしていった。
「ビンゴ」
パチンと指を弾き、一つのモニターを指さす。そこには大きく『警戒・レッド・デストロイ・ナウ』と映し出されていた。これは今までジョー達を苦しめてきた『おもてなし』と称した殺戮セキュリティ・システムのことか。モニターの前の機械にはレッド・イエロー・ブルーの大きなボタンが整然と並んでいた。
クリック! ジョーは迷うことなくブルーのボタンを押下! すると、モニターからピロピロリンと気の抜けたアラートが鳴った。
『セキュリティ・アンロック。オ疲レ様デス』
抑揚は無いが流暢な合成音声と共に表示が『休憩・ブルー・ウォッチ・ナウ』へと切り替わる。殺戮おもてなしシステムが解除されたのだ!
そう、彼は決して適当にボタンを押したわけではない。古来からブルーは平和を象徴する色だといわれている。赤は危険、黄色は楽しい! これらを熟知した上での選択、正に慧眼! 楽しそうだからとイエローなぞを押した時にはよほど愉快でデンジャーな状況になっていたであろう! この男、見かけによらず博識である。
安全を確保したジョーはとりあえず後回しにしていた別のモニターへと戻る。
気になる映像がいくつもある。
ジョーははやる気持ちを抑え、それらを一つ一つ調べていった。
*
ネムの方へ視点を変えよう。
ネムは入口脇に設置された階段から上の階層へと上った。
「うわっ!!」
その瞬間思わず叫び、飛びのく。サンダーレオ・スティルは油断なく正面へと構えられ既に戦闘態勢だ! 何故か。階段を上り切った先、そこで彼女の目に真っ先に飛び込んできたものは、中央に鎮座する巨大な化け物だったからだ!
見上げるほどの巨躯! 眼前に構えられた巨躯に見合った大斧! 極めつけは人間の体に牛の頭を持ったその異形! 賢明な皆様ならご存知だろう。このミュータントの名は『ミノタウロス』! 遥か昔の神話に語り継がれる恐るべき迷宮の殺戮者である!
しばらく二者は睨みあう。そして、ネムはサンダーレオ・スティルを下した。
全く動く気配が無い。ただの鋼鉄の『像』のようだ。
「ビビらせんじゃないよ、全く」
いかなる理由でこんなものをこんな場所に鎮座させたのか。その悪趣味さにため息をつきつつ、ネムはその『ミノタウロス像』の脇を通り抜けた。
「こりゃぁ……」
ミノタウロス像の先、ネムは食い入るように一つの映像モニターを見つめていた。それは彼女の好奇心を大きく刺激すると共に、大きく落胆させた。
*
再びのジョーである。
彼もまた、一つの映像モニターを見ていた。そこにはキャビンアテンダントのような恰好をした成人女性が何やら解説をしているようだった。
『夢を実現するエルドラドへの架け橋。ユートピア号へようこそ! 高度にプログラムされた添乗マシンがあなたの空の旅を快適にサポート。ゆとりの工程とこだわり企画で一生の思い出を約束します。おっと、忘れてはならないのが悪質なテロイズムにも対応できる当艦自慢のセキュリティ……』
成人女性は様々な写真や動画を駆使しながら、整然と時には面白おかしくプレゼンテーションを続ける。しかし、気になるキーワードがてんこ盛りである。
『エルドラドへの架け橋』『ユートピア号』『空の旅』これらのワードから推察するに、恐らくここは……
「乗り物……この遺跡は人を運ぶための乗り物だったのか」
ジョーは呟く。
「空を飛ぶってマジかよ」
信じられない様子で動画を注視し続ける。ジョー達が生きるこの時代、既に飛行技術はロストテクノロジーに近い。その上、この巨大な鉄の塊が人を乗せて飛ぶというのだ。信じられないのも無理はないだろう。
「エルドラドに向かって……」
そう、この遺跡はエルドラドではない。ユートピア号という名の巨大飛行ビークル、その成れの果てだったのだ! ここは彼の夢を叶える場所ではなかった。その事実は彼をどれだけ落胆させただろうか。
「は」
彼は笑う。
「ははは……はーはっはっは!!」
右手で額を押さえながらの大笑いである。今までの苦労が徒労に終わってしまったことへの呆れ、自暴自棄、自虐の笑いだろうか? いや、違う。そうではない。彼の瞳はギラギラと好奇心に燃えている!
「マジか! マジであんのか、『エルドラド』!! しかも『夢を実現する』だぁ!? 伝説まんまじゃねぇか!」
ジョーは興奮して、ダンダン! と何度も機械に拳を叩きつける。
画面の中のキャビンアテンダントはさも当然のように『エルドラド』の存在を語っていた。旧文明時代、『エルドラド』とは人々にとってどのようなものであったのだろうか……それはわからない。
だがこれだけははっきりしている。
『エルドラド』は実在するのだ! この世のどこかに!
他に情報は? エルドラドの位置がわかるようなものは無いのか? ジョーは血走った目で辺りを見回す。
ガキィィィン!!
その時『上層』の方から大きく鈍い金属音が響いてきた。
続きはまた明日!




