8-2.一撃必殺の閃光!
「1」
ジョーはエイムの隣にいた。巨大な銃にマグナム銃を突き刺す。そう、『ワン・ショット・キル』とはマグナムのような本体とアタッチメントの巨大砲身からなるツーインワンのコーマ・アームなのだ!!
「完璧だぜ、相棒」
ジョーが笑う。
「当たり前よ」
エイムも笑った。
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「これからは、私があなたの『相棒』になってあげる」
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ジョーの血が滾る。ゲドーではないが、やはり手になじんだモンってのは
「いきりたつぜ」
夕陽をバックに銃口がゆらりとブラックレパードへと定まる。
「ありゃ、まさか!」
倒れながらもその様子を見ていたネムが驚きで目を丸くした。
*
構えられた巨銃が強く輝く。
「久々に行くぜ! 『ワン・ショット・キル』!!」
ジョーが吠え、トリッガーを引き、ワン・ショット・キルが猛る!
括目して見よ、これぞビッグショット!
目もくらむほどの閃光が塊となって放たれ、地面を抉りながらブラックレパードへと向かう! あまりの威力にジョーが被っていたテンガロンハットが後方に吹っ飛ぶ!
しかし、油断はできない。動きを止めていたブラックレパードの目には既に光が!
「ガァァ!!」
咆哮と共にプリズム壁を多重作成、黒き獣は完全なる守りの態勢で迎え撃つ!
ワン・ショット・キルが放ったエネルギー弾とプリズム壁が衝突する!
プリズム壁が派手に砕ける! エネルギー弾がなんなく貫く!
貫くエネルギー! 砕けるプリズム!
砕ける! 貫く! 貫く! 砕ける! ブラックレパードの鉄壁の防御か、ジョーのビッグショットか!? どうなる、果たしてどちらが勝つ!?
「グオオオオオオォォォォォ!!」
咆哮。そして……おぉ、何と、何という。
見たまえ、黒き獣を白き閃光が飲み込んでゆく。
「カウント、0。いい夢見なよ」
ジョーは夕陽を背にワン・ショット・キルを担ぎ、己の少々乱れた長髪 ――黒く、ウェーブがかかっている―― を整えた。
同時に、崩れ落ちるようにブラックレパードが倒れた。その姿は左前足から左後ろ足にかけて丸々消滅している。ワン・ショット・キル。その名に恥じぬ恐るべき威力である。
グッド・ゴッド! 正に、圧倒!
「上出来」
エイムは地面に落ちたテンガロンハットをジョーに向かって蹴り上げる。ジョーはそれを手に取り、頭に乗せた。
「足癖が悪いぜ、相棒」
「生憎、手が無くてね」
二人は笑う。長かった戦いに遂に決着がついたのだ。
*
動けなくなったブラックパンサーからネムがコアをちぎり取る。漆黒の獣の目の輝きは失われてゆき、そして、機能を完全に停止させた。
「な、なんだい、これ」
そこでネムが違和感に気づく。コアを握っていたサンダーレオが小刻みに、しかしはっきりとわかるほどに震えているのだ。
ジョーが自身の無精髭を撫でながら、おぉ、と感嘆の声を上げた。
「珍しい。『共鳴』だな」
「共鳴? これが?」
ネムが目を丸くする。エイムが首を傾げた。
「何それ?」
「レアコーマのコアってのはコーマ・アームのベースになるんだが、それ以外にもう一つ使い道があってな。コーマ・アームのアップグレード、つまり既存の物の大幅強化、進化っつても良い。それが出来る」
「ふーん。で、キョーメイってのとの関係は?」
「アップグレードの前提条件。レアコーマのコアなら何でもかんでもアップグレードにつながるってわけじゃない。コーマ・アームと相性のいいコアじゃなきゃ出来ない、つまり、コアにも好き嫌いがあるってこった」
「レアコーマ自体が珍しいからね。アタシも初めて見たよ」
ネムも茫然と、しかし、魅入るように己の手元にあるピンク色のコアを見つめていた。
共鳴について説明を……するのはやめておこう。もうほぼ全てをジョーとネムが語ってしまったからである。
「コーマ・アームにするよりも役立ちそうだ。よかったな、ネム」
「い、いいのかい!?」
ジョーはパチンと指を弾いた。
「ま、一杯おごってくれれば十分だ。あとは……約束のキッスかな」
ムチュっとジョーの唇が気持ち悪く動く。ウィンクも相まって、誠に気持ち悪い。
「はぁ!?」
エイムが目を吊り上げる。
「そんなんいらないから! これで借りを返したってことで!」
エイムがジョーのケツにケリを入れる。かなり強めだ!
「ら、乱暴はよせ!」
「うっさい! さっさと私の手返せ!」
「久々だからもうちょい……」
「駄目!」
「あーはっはっ! 本当にアンタ達……最っ高だよ!」
夕焼けが辺りを染める中、三人の笑い声が響いた。
【一撃必殺の閃光! 終わり】
次回予告!(担当:エイム)
遂に黒豹マスクを下し、初勝利を手に入れた私!
養成所のみんなと今夜は祝勝会よ!
でも、みなが浮かれる中、旦那は仕事仲間のはずの女と何か親しげ……嘘でしょ?
次回 第9話 酒と本音と男と女
あなたのハート、狙い撃ち!
【超メモ】
・コーマ・アームの二つ持ち
結論から言うと、プロテクターでコーマ・アームを二つ以上持っているものはほとんどいない。まず、コーマ・アーム自体が決してお手軽に手に入る代物ではない、ということと、同一人物が二つ使うより、二つを二人で使った方が戦力は大きいからである。
そしてなにより、コーマ・アームは基本的に『二つ以上同時に扱うことが出来ない』。前述した通り、コーマ・アームは使用者の精神と直結する武器である。二つ以上だと、情報が混線して『特性』を上手く発揮させることが出来なくなってしまうのだ。そのため、二つ以上を持つと戦う時に使う物以外はとりあえず体から離さなくては ――身に着けていても全く意識がいかないというなら別に体から離す必要はないが、普通は不可能である―― ならない。とても面倒! もちろん、ワン・ショット・キルのように二つで一つのコーマ・アームは話が別である。