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7-2.決戦! ブラックレパード


 一方、ブラックレパードによって手ひどい一撃を食らったエイムはぐちゃぐちゃになったキャンプキットの中で大の字に寝転がり、空を見ていた。


「やってくれるじゃない。あのクソ猫」


 そして、独り言を呟く。ジョーの言う通り、エイムは生きていた。しかも悪態をつくぐらいには元気なようだ。

 額は割れ、一筋の血が流れている。その血が口元まで到達すると、エイムは舌で舐めとった。

 血の味。と当然の感想をエイムは持つ。

 直撃を食らった脇腹を摩る。とっさの『メタルスキン』で防御したものの、ダメージは小さくない。だけど動けないほどじゃない。

 打った頭も血が出ている以外は特に問題なさそう。

 エイムは自分のコンディションを隅から隅まで丁寧にチェックする。一見するとその様子は冷静そのものに見える。

 だがしかし、そうではない。そうではないのだ。はらわたが煮えくり返るほど、エイムの怒りは頂点に達していた。頭の中はどうすればブラックレパードを気分爽快にボコボコに出来るか、それしか考えていないのだ! おっかないことこの上ない。

 エイムは先ほどまでの攻防を思い浮かべる。

 自分の攻撃が全く通用しなかった、というわけではない。ちょっとへこませたし。なら、ヒット&アウェイで攻め続ければいつかは勝てるか。

 否定。

 気持ち良くない。断然却下。それにダメージのある体では攻撃を避け続けるのは難しい。

 最初から答えなど決まっていた。


「やだなぁ」


 エイムがげんなりと呟く。

 アレはちょっとみっともないから人前ではあまりしたくない。

 だけど、気持ちよくぶっ潰すにはこれしか考えられない。

 エイムはペッと血の混じった唾を吐いた。



「サンダーレオ!」


 ネムの放ったイカヅチが猫型を撃つ!


「そらよ」


 ジョーが巻き取った猫型を地面に叩きつける!


「くそっ、キリが無いよ!」


 ネムは吐き捨てるように言い、肩で息をする。彼女の言う通り、いくら倒してもブラックレパードが一吠えするだけで新しい敵が追加されてしまうのだ。

 明らかに時間を稼がれている。回復の時間を。ネムは歯ぎしりをした。ジョーはあぁ言ったものの、エイムが起き上る気配はない。やはりやられてしまったとしか思えない。今しかない、ブラックレパードにダメージがある今しか。


「おらぁ!」


 襲い掛かってきた猫型に再びイカヅチを撃つ! 心なしか……いや、明らかに彼女のサンダーレオが放つイカヅチの威力は下がっていた。

 コーマ・アームはその特性を使うとき、スイッチなどを使用するわけではない。必要なものは『意志』。つまり、コーマ・アームは使用者の精神と直結している武器なのである!

 装備している者が精神的に疲弊すれば、その威力・精度は著しくダウンしてしまうのだ。

 ネムは明らかに疲れていた。疲れの正体は、焦り! ブラックレパードがダメージを受けてる絶好の機会になにも出来ないもどかしさ! この機を逃すと自分ではもうどうしようもないという諦め! 彼女は心のどこかで負けを意識し始めてしまったのだ!

 ジョーの方はといえば、余裕の表情は未だ崩れていないが、その体中から汗がダバダバと流れ出ている。これでも折れない精神力は見事だが、どこかで肉体の限界に達してしまうことは明白であった。


「ぐっ」

「ネム!」


 そしてついに、逃れられぬ時がきてしまった。一瞬の隙をつかれ、ネムが猫型に押し倒されてしまう! ジョーは!? 駄目だ、別の個体を相手にしているため助けに入ることは不可能!


「サンダーレオ! くそぉ……」


 ネムは叫ぶが、サンダーレオからイカヅチが放たれることはない。彼女の心が先に折れてしまった。もう無駄だと諦めてしまったのだ。


「気をしっかり持て!」


 ジョーが叫ぶがその声はネムの心に届かない。ぞっとするほど冷たい牙がネムの首筋へとあてがわれる。この状態からの逆転の手は皆無。


 ジョー。悪い、もう疲れたんだ。

 大口叩いてこの体たらく。すまない、ハン。

 本当にごめん、エイムちゃん。チャンス、生かせなかった。


 ネムは心の中で謝りながら静かに目を閉じた。



「お嬢ちゃん、ネム……!」

 様子を見ていたハンが体を引きずり、戦いの場に戻ろうとする。しかし、動かない。足も、手も、心も、何もかも。一度切れた糸はすぐには戻らない。ハンは自分の老いというものを初めて憎く感じた。悔しさのあまり、地面に拳を突き立てる。

「何? あれは……」

 その時、ハンはネムに向かって散歩でもするかのようにトコトコと歩いていく人影を見た。



「ギルルォ!!??」


 ネムは驚愕で目を見開いた。自分の体の自由を奪っていた猫型の重さ、首筋の冷たい感覚が悲鳴と共にふっと消えてなくなったのだ。


「あぁ、よく寝た」


 すぐ側には首に手を当て、ゴキリと鳴らす人物。


「なんか蹴っ飛ばした気がするけど、気のせいね」


 その人物の名はエイム! エイム・ニシノ! 鋼鉄の両腕を持つとんでもない美少女!


「エイムちゃん! 無事だったんだね!」


 ネムが歓喜の声を上げ、思わず飛び起きて情熱的に抱きついた。羨ましい!


「ちょっと! 『イヤミ』なモノを当ててくるの、やめてくれない?」

「あ、ご、ごめん」


 ネムはぱっと離れる。

 エイムは咳払いをすると、ネム、ハン、そしてブラックレパードの順にゆっくりと指をさしていった。


「アンタ達、運がいいわね。『私達』の本気、見せてあげる」


 エイムの言葉にジョーがニヤリと笑う。


「待ちくたびれたぜ、相棒」



【決戦! ブラックレパード 終わり】

次回予告!(担当:エイム)


黒豹マスクの女に大苦戦の私!

観客までもが全て敵に回り、私の心を容赦なくへし折る!

誰か、誰でもいい、私を応援して……え、あの声は、アンタ!?


次回 第8話 一撃必殺の閃光!


あなたのハート、狙い撃ち!


【超メモ】

・レアコーマ

 前回コーマは基本的にでかければでかいほど強いと説明したが、この『レアコーマ』は例外である。

 レアコーマは全て『特殊能力』を持っており、その能力如何では大きさの序列をいとも簡単に崩してしまうのだ。ちなみに今回戦っているブラックレパードの特殊能力は『プリズム壁作成』である。実体を持つ攻撃にはほとんど効果が無いが、ネムのイカヅチ攻撃などの非実体攻撃にはかなりの耐久性があるようだ。(しかも、実体攻撃に対してはコーマ・アームすら砕くエイムの一撃に耐える持ち前の硬さがあるため、かなり厄介といえる)

 だが、このレアコーマは倒せればそのリターンも大きい。なんとレアコーマのコアからはコーマ・アームを造ることが可能だからだ。果たして、ジョー達は無事ブラックレパードを倒すことができるのか。そして倒した暁にはどのような力を得るのか。乞うご期待である。

 ちなみに会おうと思っても中々会えるものではない。基本的に人間の活動範囲にあまり姿を現さないためである。そのため、『レア』と呼ばれるのだ。

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