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6-1.黒き獣

前回のあらすじ!


はぁぁん! エイムちゃんワイルドすぎるよぉ! かっこいいー!

そしてなんと驚愕の事実! エイムちゃんの両腕はコーマ・アームらしいのです。それで素手でコーマ・アームを折ったり、コーマを握りつぶしたりできたんだね。すごい! でも何かそれだけじゃ説明できないこともしていたような……気のせいかな?

そして、謎の女性の正体はプロテクターのネム・ビットさんでした。私もたまにお世話になっていて、この方もかっこいい人です。それに持ち前の美貌でファンの男性、すっごい多いんですよ!

無事お仕事を終えた三人が帰ってきての第6話です!


以上、恋する乙女ヒビキがお送りしました。

私のことが気になる方は間話1を読んでね!

第6話 黒き獣


 シン・バンカーに戻ったエイム達を出迎えたものを果たして予想が出来ただろうか。

 それはバンカーの入り口で倒れる傷だらけの男であった! 服はボロボロに切り裂かれ、うつ伏せに倒れたままピクリとも動いていない。砂にまみれた背中から、かなりの時間こうして荒野の風にさらされていたことがわかる。

 三者三様で驚き戸惑う中、まず行動を起こしたのはネムである。バイクから降り、男へと駆け寄った。息があるのを冷静に確認すると、抱き起して頬を叩く。


「グラトン! 一体何があったってんだい!?」


 その様子を見てジョーが顔をしかめる。さしものエイムも心配そうだ。


「結構やばそうだな。人を呼んでくる」

「私も!」

「頼んだよ」


 ジョー達は慌ただしくバンカーの中へとフローターバイクを発信させた。

 そこで傷だらけの男、グラトンがようやく目を覚ます。しかし、意識を保つのがやっとといった様子でその目は虚ろだ。


「ネム……よかった、無事だったんだな」

「無事というか、もう終わってたというか、そんなことよりアンタの方だよ。酷い怪我じゃないか」


 グラトンが苦しそうに呻く。呼吸の仕方に違和感がある。どこか折れているのかもしれない。


「オレよりもハンを、ハンを助けてくれ……オレを逃がすためにあのジジィ……」

「ハン? どういうことだい?」

「遺跡でお前と別れた後、見つけたんだ……入口を」

「なんだって!?」

「でも、そこは、あの恐ろしいコーマのナワバリだったんだ……」


 グラトンがネムの健康的な腕を掴む。その力は弱弱しい。しかし、確かな熱量があった。


「頼む。ハンはまだあそこに残って戦っているはずだ……」


 息が荒くなっていく。もう喋るのも辛そうだ。ネムが彼の手を握る。


「わかった。わかったからもう喋るんじゃない!」


 ジョー達がバンカーの住人を何人か引きつれ、戻ってきた。


「人呼んできたよ!」

「おい、こっちだ。早く!」


 グラトンは涙を浮かべネムにもう一度訴える。


「ハンを、ハンを助けてくれ。ふがいない、俺の、代わりに」


 そう言ってグラトンの腕は力なくすべり落ちた。


「くっ、グラトン……」


 ネムが地面にグラトンをそっと横たえる。ジョーが慌ててグラトンの顔を覗き込む。


「まさか!」

「いや、気絶しただけだよ」

「まぎらわしい!」

「知り合いみたいだったけど」


 エイムが聞く。ネムは一息ついた後、答えた。


「こいつはグラトン。シン・バンカーのプロテクターさ。仕事を二、三回一緒にやったことがあってね」

「随分少ないな。仲悪いのか?」

「ジョー。アタシもアンタ達と一緒で『渡り』なのさ」


 『渡り』とは特定バンカーに所属せず、様々なバンカーを転々とするプロテクターのことである。彼女もまた、ジョー達と同じく夢を追い求める旅人なのだろうか?

 バンカーの人達が大慌てでグラトンを搬送していく中、ネムがすっと立ち上がった。


「すまないね。バーの件はまた今度だ。今からアタシはハンの奴を助けに行く!」


 ジョーは肩を竦める。


「何言ってんだ。さっと終わらしちまえば、ボトルを開けるのだってわけないさ」


 なんという軽口か! その言葉にネムも怒りを表情に滲ませる。


「馬鹿言うな! 軽い仕事みたいにいうんじゃないよ!」

「軽いさ。俺達三人ならな」


 ジョーがパチンと指を弾いた。憎らしい男である。


「いきなり借りを返すチャンスね。間が良くて助かるわ」


 エイムは嬉しそうにゴキゴキと手を鳴らす。

 ジョーとエイム、彼らは決して根っからの善人ではない。だが、目の前で困っている人を見過ごすほど冷徹でもない。それが少しでも気に入った者であるなら尚更だ。もう一度言う。彼らは決して善人ではない! しかし、『いい奴等』なのである!


「アンタ達……」


 ネムはグッと拳を握りしめた。


「後悔しても知らないよ!」

「後悔? 聞いたことあるか?」

「さぁ? それにこんな面白そうなこと、見逃すなってのが無理な話!」


 ネムは笑みを浮かべる。やばそうなことになってるってのに、何だかワクワクしてきたじゃないか。


「全力でトばして行くよ!」


 彼女はバイクに乗り込むと、グリップを思いっきり回した。



 遺跡入り口から数10mほど離れた場所。そこで10数体の猫型コーマを一人で相手取る男がいる。

 その男こそハン。『ハン・マーブル』である。歴戦の戦士を思わせる目元についた大きな古傷と顔中の深い皺が特徴だ。しかし、体は逞しく、未だ一線級であることは明白であった。


「ぐぅ、これまでか」


 そんなハンがうなり、ヒザをつく。自身のコーマ・アーム『リボルシブアンブレラ』は油断なく敵に向いているものの、それを支える太い腕はカタカタと揺れている。

 それもそのはずだ。彼はなんと、ここで3時間以上も戦っていたのだ! 肉体の疲労はとっくにピークを迎え、気を抜けばすぐにでも気絶してしまうほどまで消耗していた。


「グルルォ!!」


 一匹の猫型が襲い掛かってくる。ハンは気力を振り絞り、それを撃退せんとする。ただ、もう気持ちに体がついていかない。

 ここまでか。ハンは諦め、視線を落とす。


「サンダーレオ!」

「ギィ!?」


 聞き覚えのある声で、聞き覚えのある言葉だった。バチンと何かが弾け、来るべき痛みは来なかった。


「どうしたんだい? ハンともあろう男がもうへばっちまったのかい?」


 その言葉に、ハンは目を見開き、そして思わず口元が緩んだ。

 イカヅチ纏う白銀のコーマ・アーム。健康的なナイスバディ。それを薄着で惜しげもなく披露するサービス精神がありながら、性格は男よりも男らしい。そして、実力も一級品の生意気な小娘。


「ネムか!」


 九死に一生を得るとはこのことか! 自分を助けた孫ほどに歳の離れた頼もしい背中にハンは思わず見惚れる。決してやましい気持ちはない!


「疲れたなら、あとはアタシ達に任せて下がってな!」

「達?」


 そう、彼を助けにきたのはネムだけではない! ハン達に迫る二つの影!


「ネム、先行しすぎだ!」

「やっぱりバイク苦手~」


 慎重に停車し、バイクを下りてきたのは、ジョーとエイムである!

 ハンの横に二人が並び立つ。


「よぉ、じぃさん。ポックリ逝っちまう前に会えて何よりだ」

「よーし、暴れるわよー!」

「……くくっ」


 ハンが笑う。

 ハンからすれば「誰? コイツ等」である。しかも、ムキムキなジョーは置いといて、片方は戦力にならなそうな華奢な美少女なのだ。さらにさらに! 何故か美少女の方がかなりのやる気だ。

 わけがわからない。わからなすぎて笑うしかない。

 だが、どうやらここが死場ではなくなったらしい。

 ハンは足に力を込め、立ち上がる。そして、リボルシブアンブレラを2回3回と振り回した。

 若者ばかりにいいかっこはさせてはおけぬ。ハンの瞳がギラギラと燃え上がる。


「舐めるなよ、若造ども! 『ハン・スコール・ザ・サン』と呼ばれたワシの力、その目にしかと焼き付けろ!」


 余りある気力の充実が肉体を突き動かす! 精神が肉体を超えた瞬間である! グレイト。グレイト、ハン!

 ジョーがため息をつく。


「意外と元気でよかった。もう帰っていい?」


 腰抜け発言である! 10数体もの猫型コーマに囲まれている現状に気後れしてしまったのか!?

 エイムが意地悪そうにジョーをつっつく。


「後悔なんて知らないんじゃなかったっけ?」

「昼飯の時間でね」


 ちなみに昼食の時間はとっくに終わっている。


「私は楽しくなってきたけど!」


 しかし、そんな中でエイムは呑気に屈伸なんかを始めた。

 ジョーも口ではあぁ言っているが、特に悲観している様子は無い。

 気後れではなく、救出対象が急にハッスルし始めたから、ちょっと面倒になっただけのようだ。

 ジョーは気を取り直すと、パチンと指を弾いた。


「ま、食前の運動には丁度いい。準備はいいか、相棒!」

「もちろん!」


 ジョーはチェーンソードを構え、エイムもファイティングポーズを取る。


「来るよ!」


 ネムの言葉を合図にしたように、猫型コーマ達は一斉に襲いかかってきた。



「こんなとこで密集してたら戦いづらくてしょうがない! 別れるぞ!」


 ジョーが叫ぶ。


「アタシもそう思ってたとこさ!」


 ネムがサンダーレオで猫型を突き刺す! が、弾いたくらいで致命傷には至っていない。

 チッとネムが舌打ちをした。

 サンダーレオのイカヅチは強力だが、爪自身は直接コーマを切り裂くほどの鋭さはない。それに加えてネムの腕力が並みのプロテクターより一歩劣るのも非常に辛いところだ。


「アンタ等が近すぎてぶっ放せやしない!」

「なら、ワシが道を開く。ゆくぞネム!」

 

 ハンが三人の前に立ち、歌舞伎のごとく大仰にリボルシブアンブレラを振り回す。

 そして、前方に先端を向け、ピタッと止めた。


「出力全開!」


 雄叫びと共にリボルシブアンブレラが『開く』。開いた骨組みの間は何やら空間が歪み、ゆらめいている。その様子は、その名の通り、まさに『傘』であった。


「突貫! ぬぅおぉぉぉッ!!』

「おい、じぃさん!」


 そして、なんてことだ! ジョーが呼び止める間もなく、あろうことにハンは猫型が密集する地帯へと突進していったのだ! 当然、錯乱したかのごとく飛び出してきた老いぼれの獲物に猫型達が集中して襲い掛かる! このままでは骨の髄までしゃぶられ、あっという間に白骨死体一丁上がりだ!

 己の身を犠牲にした特攻なのか。いや、そうではない! そのような悲壮な決意を込めた男の目ではない!

 ネムがジョーの肩を軽く叩き、ハンの後を追った。


「大丈夫さ。まぁ見てな!」


 アンビリーバブル! 括目して見よ!

 ハンを引き裂こうと振り下げられた、鋼鉄の爪の向きが明後日の方向へと捻じ曲げられる。突進してきた猫型が、いつの間にか大地へと頭を打ち付ける。代わる代わる飛びかかる猫型コーマ、その全てをことごとくハンは弾き返す! 一体何が起こっているのか!?



 それでは説明をさせて頂こう!

 これが、ハンの持つ『リボルシブアンブレラ』の力である!

 『リボルシブアンブレラ』は傘状のコーマ・アームとなる。その特性は『斥力発生』! 斥力とは反発しあう力! 難しいことは考えず近づくものを弾き飛ばすと認識していただければよい。ただ、リボルシブアンブレラの斥力場はまさしく傘のような形で展開されているため、真反対に弾くわけではないので扱いは難しいところだ。

 攻撃能力はあまり無いが、防御に非常に優れたコーマ・アームである。そうでなければ、3時間もの間、一人で多数の猫型コーマを相手になど出来なかったであろう! グレイト、ハン!



 まるでモーゼの海割りである! ハンの作った道を通り、ネムも包囲網を突破する。

 ジョー達は感嘆の声を漏らす。


「やるねぇ」

「気合い入ってる! こっちも負けてらんない!」


 ハンの力で相手の陣形は千々に乱れている! さぁ、反撃の時である。


***

注意:

寝て起きて確認したら、文の勢いが無さすぎて全然楽しくなかったヨ...

6/9修正シマシタ

***


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