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5-2.登場! ネム・ビット!

バトル3 謎の女 VS 猫型コーマ


 こちらは他の二人とは一転して、猫型コーマの猛攻を躱し続けるという展開になっていた。攻め手が無いのだろうか。


「ハイハイ、鬼さん。こっちこっち」


 バク転、側転、バク宙回避! なんという身軽さか! 彼女の体にはかすり傷一つついていない!

 躱す、躱す! ひたすら躱す! 猫型の攻撃は彼女の黒髪の一本にすら届かない!

 これは攻め手が無いのではない。ただ楽しんでいるだけなのは明らかだ!


「やっぱりコーマ退治はいい運動になるね」


 汗をきらめかせ、女がにこやかに言う。言われる方としてはたまったものではないだろう。猫型にしてみればこれは命のやり取りなのだ!

 遠くでコーマの断末魔が響く。


「おや、あっちは決着がついたみたいだね」

「ギアッ!」


 女は足にかみついてきた猫型をジャンプで踏みつけ、さらに空中へと高く舞い上がる!


「それじゃ、カッコ良くトドメといくかい」


 空中ですっと右手のコーマ・アームを前に出した。それはバチバチと帯電をしている。


「ゴー! サンダーレオ!」


 目の錯覚か。そこに現れたのは光り輝く白光の獅子!! いや、違う! 強力なイカヅチが周囲に走ったのだ!

 空中、しかも背中からそんなものを打たれては、逃げ場などどこにもない!


「グルルォ!!??」


 そのイカヅチに貫かれ、猫型は断末魔の悲鳴を上げた。



 さぁ、説明をさせて頂こう!

 彼女の右手に装着された『サンダーレオ』は銀色に光り輝く爪状のコーマ・アームである。その特性は『放電』! バリバリっと扇状に電気を放出するぞ! その射程は最大で3m程だ! 上手くヒットさせれば、インド象の命すら奪うことが出来るほど強力な代物である。

 それを1m程の猫型コーマが受ければ、結論はお分かりだろう。



 倒れ伏す猫型を背に、彼女は猫型コーマも顔負けの華麗な着地を決める。

 スタイリッシュでクールな彼女の完全勝利だ。



 戦いを終えた3人が集まる。

 ジョーが謎の女に向かって手を差し出した。


「礼を言うぜ。俺はジョー」

「ネム。ネム・ビット。キミは?」


 ネムと名乗った女はジョーの手を握りながら、エイムの方を向く。


「エイム・ニシノ」


 エイムはブスっとしながら答えた。ネムはからっと笑う。


「よろしくね! しかし、いやぁ、流石シン・バンカーの救世主。助けに入るまでもなかったかな?」


 ネムはエイムの肩をポンポンと叩く。それをエイムは鬱陶しそうに払った。


「バンカーで話を聞いてきたってわけね」


 エイムが敵意満々といった様子を見せている。しかし安心してほしい! 別に不穏な空気をネムに感じ取ってのことではないのだ! エイムはいつもこうなのである。初対面の女性……いや、初対面のボインな女性には、『何故か』野生動物ばりの警戒と威嚇を行うのだ! ジョーにとってはいつものことなので特に気にもしていなかった!


「そうそう。バンカーが襲われたって話を聞いたもんだから、慌てて帰ってみりゃもう片がついてるって話じゃないか。それで『モンじぃ』に話を聞いて、恩人の顔を見に来たってわけ」

「モンじぃ?」


 二人が首を傾げる。その様子が面白かったのか、ネムは笑いながら答えた。


「加工所のおっさんだよ。あの髭の」


 あぁ、あの髭か。ジョーは頷いた。

 ネムは首を振って、驚いたといわんばかりに目をひん剥いた。


「ほんっっと、エイムちゃん強いんだね。聞いた時は耳を疑ったよ。素手でマリグナンシーをボコった美少女がいるなんてね。しかも、想像より数段美人さんだし! それでいてコーマの攻撃もものともしない、コーマを握り潰す、実際目の当たりにしても信じられないことだらけだよ。一体全体どうなってんだい? ただの怪力ってわけじゃないんだろ?」


 早口でそうまくし立てた後、ネムは慌てて付け加えた。


「あっと、話したくないならいいんだけどね」


 エイムは腰に手を当て、ため息をつく。


「別に構わないわよ。私は両腕自体がコーマ・アームなの。事故で手を失って、その代わり」


 エイムはそう言ってネムに腕を見せた。確かによく観察してみればうっすらと関節部などに線が走っているのが確認できる。ただ、本当によくみないとわからないほどだが。

 そう、エイムが言うように彼女の両腕はコーマ・アームそのものなのである。鋼鉄の両腕を持つ少女、それがエイムなのだ。チェーン・ソードを折ったのも、コーマを握りつぶしたのも、この鋼鉄の両腕あっての芸当である。

 ネムはそれをまじまじと見つめて、大きく頷いた。


「はぁー。義手とか義足代わりにコーマ・アームをくっつけてる奴は見たことあるけど、『義手状』のコーマ・アームってのは初めて見たよ。ぱっと見ただけじゃ全然わかんないね」


 感嘆の声を上げるネムに対して、エイムはつんとそっぽを向いた。ネムは不安そうな目線をジョーに送る。


「なんか、嫌われちゃった?」


 ジョーは肩を竦めた。


「気にしないでくれ。気まぐれ屋でね」


 そして、顎に手を当て、ネムの方を見やる。


「しかし、女のプロテクターとは珍しいな」

「今ここでは男のプロテクターの方が少数派だよ、なんてね」

「はっはっは。確かにそうだ!」

「ま、よく言われるよ」


 ジョーは慌てて首を振った。


「詮索する気はないさ。少し驚いただけだ。気に障ったなら謝る」

「ぜんぜん。事実だしね」


 ジョーはバチンとウィンクし、指を鳴らす。


「助かる。これから口説こうって時に嫌われたんじゃ話にならないからな」


 ネムはしばらくキョトンとした後、大笑いをした。


「アンタも大概面白いね!」

「助けられた礼もある。一杯奢るぜ?」

「なかなか魅力的な誘いだよ。ま、エイムちゃんも一緒ならいいかな」

「アイツもぉ?」


 ジョーはがっくりと肩を落とした。明確に『口説く』と言っているのに、この態度。ほぼ脈無しである。

 ジョーにとってはこれもいつものことだったので、すぐに気を取り直す。


「あぁ、そうだ。聞きたいことがあったんだ」

「なんだい?」

「見つかった遺跡、『エルドラド』に関わるもんだって本当かい?」


 テンガロンハットの奥の瞳はギラギラと輝いていた。


【登場! ネム・ビット! 終わり】

次回予告!(担当:エイム)


あの女は仕事仲間で、とんだ早とちり! 私ってばおっちょこちょいなんだから!

え? 何この名刺……? プロレスのスカウトぉ!?

このダンディなおじさまがプロモーター? それなら、やってもいいかも……


次回、第6話 黒き獣


あなたのハート、狙い撃ち!



【超メモ】

・女プロテクター

 この世界において、女のプロテクターはとにかく珍しい。何故なら女性という『人を産み、育てる』ことが出来る存在 ――ここでの『育てる』とは育児全般のことを指しているのではなく、赤ん坊に与える食料、つまり母乳が出ることを指してる。カルチ(培養)品での子育ては病気のリスクが格段に高いのだ―― はとても貴重で、バンカーの中でも女性の地位はかなり高い。そんな確固たる地位を持つ女性が、適性があるからといって己の命をかけるようなプロテクターの仕事をする必要は、多くの場合無いのである。逆を言えば、それでもプロテクターをやっているのならば、何者をも犠牲にしてでも成し遂げたい何かがあるのだろう。

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