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4-2.GIRL MEETS WOMAN

 フローターバイクをしばらく駆り、二人は指定された廃墟にやってきた。ちなみにフローターバイクは操作が簡単なため、エイムも操縦できる。当然のことながら、免許などは不要である。


「この辺りのはずだが」


 ジョーはバイクから降りて、油断なく辺りを見回す。


「もうちょっと奥じゃない?」


 エイムの言葉に地面を調べていたジョーが頷く。


「この辺りはまだ『ただの荒れ地』だ。住み着いてるってんだから、なにかしらの変化は見えるはずだ」


 ジョーはゴーグルを首元に下げる。その眼差しは先ほどまでのだらけた様子は微塵もない、真剣そのものだ。プロフェッショナルの雰囲気を醸し出している。


「行くか」


 ジョーは崩れ落ちた建物跡が密集する方へ歩き出した。エイムも後ろをちょこちょこと付いて行く。


「コーマがいるところは必ず草木が茂っている、だっけ?」

「よく覚えてたな」


 ジョーは辺りを伺いながら慎重に歩いているようだった。そして、腕を上げて、エイムを止めた。


「砂の感じも変わる。湿っていて固まるんだ」


 ジョーはおもむろに地面の砂を毟り、ぎゅっと握りしめる。


「こんな風にな。近いぞ」


 握りしめられた砂はジョーが握った形をある程度残した後、ボロリと崩れた。エイムがよくよく周りを見ると、ひび割れた廃墟の壁がびっしりと苔むしていることに気づく。その周りにはまばらに草が生えていた。

 コツリ、と音がした。

 視界の端に一つの影が走る。

 それは体長40cmはあろうかという、まるで大きなクモであった。八本の足、赤く光る複眼、大きな膨らみのある腹。クモとしての特徴をそれだけ持ちながら、『まるで』と評した理由はただ一つ。それは銀色に輝くメタリックなボディであったからだ!

 クモのようなものはカチッカチッと前足を鳴らす! するとそれに応えるようにまた一体、また一体と廃墟のいたる所から同じモノが現れる!


「下がってな、相棒」

「本当に大丈夫?」

「鬼に金棒、プロテクターにコーマ・アーム!」


 ジョーはマントをうしろに払う。その腰には加工所で修理した『チェーン・ソード』が巻き付いていた。手首に巻いた装着具を押し当てると、吸い付くように合体し、ハラリとほどけて鞭となる。この間わずか1秒!


「まぁ、見てな」


ジョーはニヤリと笑った。



 ここで説明をさせて頂こう!

 これが、これこそが『コーマ』である! ただし、コーマとはこの『金属のクモ』のことを指しているわけではない。世界全土にはびこる『金属生命体』、その総称がコーマなのである。姿形は何らかの動物を模していることが多い。出生も生態もほとんどが謎に包まれているが、わかっていることもある。

 それは、人類の天敵であるということだ! 人間を見るととにかく殺しにかかってくる。これがコーマ全てに共通する特徴である! なんと恐ろしいことか!

 見た目通りに非常にタフで心臓部にある『コア』と呼ばれる部分が破壊されたり、取られたりしない限り、機能を完全に停止させることはない。

 そして、何度も言っている通り、このコーマを倒せる特別な武器。それがジョーが持つ『チェーン・ソード』をはじめとした『コーマ・アーム』である! とは言ってもコーマ・アームでしかコーマは倒せないか、というと必ずしもそうでもない。コーマの持つ金属の体を破壊できる切れ味・火力・質量さえあれば、手段はなんでもよいのである。その手段のほとんどをコーマ・アームに頼っているのが現状。それだけのことだ。



「カッモーン。まとめて明日の昼飯にしてやるぜ」


 ジョーがくいっと手で挑発する。応じるように金属クモが飛びかかってきた!


「イキがいいねぇ!」


 ジョーが鞭をふるう! クモの一体はそれによって撃ち落された。いやそれだけではない! その鞭の先端はクモの体に巻きつくような形で『固まって』いた!


「ギュッギィ!?」


 撃ち落されたクモはカリカリとその鞭を取ろうと引っ掻くが離れることはない。

 そう、コーマ・アームは普通の武器ではない。それぞれに特別で強力な『特性』を持つ、恐ろしい兵器なのだ!

 ジョーはクモを鞭の先端に取り付けたまま振り回す! 簡易的な鋼鉄のフレイル! こんなものを食らってはひとたまりもない。次々と金属クモ達は蹴散らされていく!

 こんなことが可能なのは『チェーン・ソード』の特性にある。その特性は『硬化』! 自身の硬軟をてっぺんからつま先まで自由自在に操るのだ!


「やっるー」


 ヒュウと口笛をエイムが吹く。

 三体残った金属クモは最後の抵抗と言わんばかりに一斉に襲い掛かってくる!

 ジョーが四肢がもげてぐったりとしたクモ ――何度も叩きつけられてかなり悲惨な様相を呈していた―― を放り捨てると、チェーン・ソードは固く一直線に『剣』の形態を取る! ゲドーが見せた『ご立派』だ!


「いい子だ」


 一閃! 一体が切り捨てられる! 同時に一体は蹴っ飛ばし宙へと舞い上がる! さらに身を捻りながら、金属クモの攻撃を躱しつつ抜け様にもう一体を袈裟斬りだ!

 宙から最後の金属クモが落ちてくる。それを待ち構えていたチェーン・ソードが迎え、憐れ串刺しとなった。

 その辺の廃墟跡に腰かけていたエイムが拍手を送る。


「すごいすごーい。中折れ棒も中々使えそうね」

「使えないコーマ・アームなんて存在しない。ようはテクニックさ、お嬢さん」


 ジョーは串刺しになっていた金属クモを払って捨てると、得意げにチェーン・ソードを肩に担いだ。

 喜びも束の間、じゃり、と足音がする。先ほどまでの金属クモとは明らかに違う、重量感のある足音だ。ジョーは油断なくチェーン・ソードを構えなおした。


「グルルル……」


 低い唸りを上げながら現れたのは四足歩行の金属の獣……


「本命の登場かい」


 体長1mはあろうという、猫型のコーマであった。


「さぁ、お仕置きの時間だ子猫ちゃ……ん!?」


 ジョーの笑顔が引きつる。


「おいおいおい、まてまてまて!」


 その数は2……3、いや4体!! 先ほどまで6体以上の金属クモを一度に相手にしていたジョーも思わず慌てた! 体調40cm程度の金属クモはコーマの中でも『小型』に分類され、今ジョーの目の前にいる猫型は1m。これは『中型』に位置するサイズである。小型と中型では、その脅威度は段違い! 例えるならチワワとゴールデンレトリバーくらい違うのだ!

 1匹が先陣をきるようにジョーへと駆け出す! 一度にこなかったのは僥倖か!


「ちっ!」


 大きく舌打ちし、ジョーは手元に隠していたスイッチを入れる。

 バァン!

 激しい炸裂音! 一体何事か。それに対してジョーの目前に迫っていた猫型コーマの動きも一瞬固まる。

 その隙を逃すジョーではない。猫型の背中をチェーン・ソードが貫いた!

 エイムは見ていた。ジョーがスイッチを押した瞬間に、串刺しになっていた一匹の金属クモの残骸が爆裂したのを。エイムは感心したように声を上げた。


「はー、そんな小細工いつの間に」

「基本的に4足型は音に敏感だ。覚えておくといい」


 ジョーはチェーン・ソードを引き抜いた。ジョーが使ったのはコアと接触するとコーマの全身をショートさせ爆発を引き起こす『ショックバン』と呼ばれる爆弾だ。小型くらいにしか大きな効果が無く、コアに直接触れる必要がある、完全に機能停止した相手には効果がないなど使い勝手はあまりよくない。それなのにお値段は少しお高めである。

 これに警戒したのか、残りの3体は同時に、そして慎重にジョーを取り囲むように移動を始めた。


「さぁて」


 ジョーは一息つく。そして腕をばっと上げた。


「出番だぜ! 相棒!」


 エイムは呆れたように肩を竦める。


「素直に「切り札無くなったから助けて」って言ったらどう?」


 ジョーは心の中で苦笑いをする。まさにその通りだったからだ。猫型は通常群れでの行動はしない。1体だけだと思い込んで対策を怠っていた。慣れていない武器では3体を同時に相手にするのは骨が折れる。


「はっはっはっ。真のジョーカーは相棒に決まってるだろ?」

「よく言う」


 エイムは立ち上がると、腕をコキコキと鳴らしながらジョーの横に立った。


「ま、そろそろ見てるだけじゃ飽きてきたからね」


 これで3対2。

 いや、そうではなさそうだ。

 何かを察知したのか、3体の猫型が一斉に振り向く。すると、ヒィーンと甲高い音をさせながらフローターバイクがこちらに向かってくるのが見えた!

 バイクは若干ドリフト気味に土埃を上げながら停車する! そこには長いマントを羽織った謎の人物が乗っていた!


「何やらてこずってるようじゃないか」


 その人物はバイクから降りると、バッとマントを翻す。

 そこから出てきたのはデカメロン! ピーチヒップのナイスバディ!!

 いや、真に見るべきはその右手に装着された爪状のコーマ・アームか!


「手を貸すよ」


 ナイスボディな謎の女は不敵に笑みを浮かべた。


【GIRL MEETS WOMAN 終わり】

次回予告!(担当:エイム)


アンタ、その女誰なのさ!

私の怒りがピークに達した時、パートで鍛えたボディがうなりを上げる!

決めろ、必殺! アイアンクロー!


次回、第5話 登場! ネム・ビット!


あなたのハート、狙い撃ち!



【超メモ】

・チェーン・ソード

 鞭と剣の形態を取るコーマ・アーム。鞭状態で大体3m弱。剣状態で1.2mほど。ただし、剣は鞭と同じ長さまでなら必要に応じて伸ばすことはできる。伸ばすと刃としては使い物にはならないため、突きくらいでしか使えない。そういう意味では槍でもある。

 使うときは腕に巻いた装着具に取り付けるため、両手はフリーになっている。ジョーの場合、使わないときはベルトのように腰に巻いているようだ。

 特性は『硬化』。特性を使うのは本人の『意志』に沿っており、特にスイッチなどは存在しない。これは他のものも御多分に漏れず、コーマ・アームは人の精神と直結する武器であることを示している。

 硬化した部位はただのコーマなら簡単に切り裂くほどの切れ味・硬さを誇る。そんなものをエイムは素手で真っ二つにへし折ったわけである。おっかない。

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