第二話 不運って
場面切り替えが唐突でわかりにくい、とのご指摘がありましたので一行目を追加しました。
ご指摘ありがとうございます。 2018.4.2
時は転生前、信仰神との相談時まで遡る。
「いっそのこと、他の種族の土地に転生させるか」
「というと?」
「お主の事は他の神々も気にかけておるじゃろうから、人間の町に転生させた場合常に監視されることになるじゃろう」
「ふむふむ」
「それだと直ぐにボロが出るかもしれん」
「ふむふむ」
「ならいっその事、他種族の土地で育ってある程度強くなってからヒューマン族の土地に戻るというのはどうじゃ?」
「何かいいことあるんですか?」
「目を付けられるまでに時間を稼げる。そして、稼いだ時間で強さを身に付けられる。強い魔物を味方に付けたり、良い装備を揃えるとかじゃな。その後ならば人間の町に戻って活躍しても不自然じゃなかろう? 余り魔法に頼らぬ戦い方も覚えるじゃろうしな」
まー、言ってる事は分かるけど。
「そんなに目立っちゃまずいんですか?」
「生まれたての赤子が神をも凌ぐ魔力を持ってると知られてみい。赤子の身で毎日暗殺者と戦いながら生きていきたいか?」
「いや、それは勘弁してほしいですけど。神様が暗殺とかするんですか?」
「さすがに直接はせんじゃろうが、自分の民族に神託を送るくらいはするじゃろうよ。どこそこに生まれた赤子は将来わが民族を打ち倒す危険な存在じゃーとかな」
「はー。そういうもんですか」
「どうする? お主がどうしてもイケメン王子に生まれたいというなら叶えてやらんでもないが、覚悟だけはしておけよ」
「う、そんな言い方されたら……でも他の種族の土地に転生して生きていけるんですか? そこでいきなり殺されるってことは?」
「ないとは言えんが」
「あるのかよ! その計画破綻してるだろ!」
王宮で暗殺者に襲われるのと、敵国で農民に殺されるのとそんな違いあるのか? むしろ兵隊がいる分王宮のがマシじゃね?
このじいさんボケてんのか? という不審な目でじっと見つめる。
「落ち着け。判ったから落ち着け。そうじゃな、比較的ヒューマン族とうまくやっておる種族の元に、赤子ではなく自由に行動できるくらいの年齢で、それなりの加護が受けられるように条件設定をしてだな」
「他所の神様の所でそんな込み入ったことして逆にばれません?」
「うーん、そうすると……」
大丈夫かこのおっさん?
という流れで、ヒューマン族のエリアの中で戦争奴隷を積んだあの馬車の中に、5歳児の姿で転生させられたんだよね。
なのでこの奴隷商人に落ち度はない(キッパリ!)
神様に目を付けられた時点で諦めてもらうしか……自分に返ってくるなこれ。
ま、まあそう酷い目に合わせるわけじゃあないよ。ちょっと脅かしてお金を置いてってもらうだけ……勇者の仕業じゃないよな。
今はただの子供だからいいか。
「それじゃあ、奴隷商人さんは誘拐する気はなかったと言う事なんですね?」
「そうだよ、まったくそんな気はないよ。事故、そう事故なんだこれは!」
「ふむ」
ちょっとタメを作って考えているふりをする。
「その言葉信じてもいいです」
「そ、そうか。ありがとうよ」
見る見る奴隷商人の顔が明るくなる。
「とは言っても」
「え?」
途端に奴隷商人の顔色が変わる。面白いなこれ。
「ドーガスさんに僕を売ろうとしたのは事実ですし」
「あう、それは……」
「このあと元の村の近くに連れ帰って貰えたとして」
「それは約束する。すぐにとって返して送り届けるから」
黙って奴隷商人をじっと見つめる。
「え? 何かおかしなこと言ったかな?」
「もし、父が殺されていたら」
「え? ええ!」
「その子供を連れ歩いていたあなたが無関係ですと言って通用すると思います?」
「それは……」
「それで放免するような役人はいないと思うんですよね」
奴隷商人の顔が真っ青を通り越して白くなってくる。
「良くて財産没収の上、犯罪奴隷」
「いや、ちょっと待って。本当に俺は何も知らなかったんだ」
「それを役人に信じさせられます?」
「……。どうしたらいいんだ……」
効いてる効いてる。
神様に説得のスキルを付けてもらっただけの事は有るな。
「一つ提案があるんですが」
「提案?」
「今更。元の場所に戻っても父は既に死んでいるかもしれないし、生きていても同じ場所にいるとは思えません」
「そ、そうか。君を探して移動している可能性があるな」
うん。生きてることにしたいよね。
「ええ。そうなると、知り合いのいない場所で僕一人生きていけるかと言えば難しいですよね?」
「む、むむむ」
「そこで提案なのですが。この村で僕が生きていけるように手配して貰えないですか?」
「この村で?」
「ええ。契約奴隷として」
「契約奴隷? なんでまた?」
「この村に僕が住めるようにです。ヒューマン族のしかも子供の僕が勝手に住み着くわけにはいかないでしょう? それと」
「それと?」
「養育費として大銀貨30枚をいただけますか?」
「大銀貨30枚?」
「ええ。形の上では契約奴隷で、実際には家賃とか食費代をお支払いする居候という事でお願いしたいんです」
「なるほど」
「月に銀貨5枚として1年間で60枚。5年分で300枚という計算です」
「そ、それで今回の件は」
「無かったことに」
「判った! それで手を打たせてくれ」
その場で村長の許可を得て大銀貨30枚を受け取る。悪いね。
「ドーガスさん」
「うん?」
突然話を振られて面食らうドーガス。
「いかがでしょう。僕を家に置いてもらえませんか?」
「うちに? なんでまた?」
「縁といいますか。僕を買ってもらうところでしたし」
「いやぁ、うちには空き部屋も無いし。余分な食い扶持も」
「毎年、大銀貨6枚をお支払いします」
「判ったよ。うちへおいで」
突然の女性の声に振り替えるとそこには恰幅のいい女ドワーフがいた。
お願い
・この展開は不自然
・これは理屈に合わない
・この設定は無茶
・誤字脱字
等々ありましたらご指摘いただけるとありがたいです。
ご指摘いただいた点をすべて修正できるとは限りませんので
その点ご了承ください。