第一話 奴隷商人って
奴隷商人を追い込む前に主人公の心象を追加しました。
ご指摘ありがとうございます。 2018.4.2
「目が覚めたかな」
突然聞こえた声に反射的に目を開くと……真っ暗だった。
「少し違うな」
「いきなりの事で気持ちの整理ができていないだろうが、君たちはこれから奴隷として他国で生きていくことになる」
「はあ」
王子や英雄からいきなり奴隷かよ。
「納得はできないだろうが、これもまた人生というものだ。諦めておとなしく暮らした方が結局楽になるぞ」
「あんたは?」
「俺か? 俺はしがない奴隷商だ。これから君たちを売りに行くところだ」
「なるほど」
「物分かりがいいな」
「楽に生きていきたいんでね」
「賢い選択だよ」
それから数回粗末な食事が与えられ、いい加減馬車の旅に飽きてきたころようやく馬車から降りることができた。強制的にだが。
「うー。馬車の中も寒かったけど、外は更に寒いな」
足腰のコリをほぐしていると奴隷商が皆を集めて話を始めた。
「いいか、お前たちのために忠告する。この村で買われるように努力しろ。ここはそれほど悪い村じゃねえ。この後回るオーガの村に比べれば天国みたいなもんだ」
「オーガ!」
悲鳴交じりの声が聞こえる。
「ああ、オーガの村じゃあ働きの悪い奴隷はシチューの具になっちまうそうだ。この村のドワーフはそんなことはしねえ。……多分な。わかったら自分がいかに役に立つか、買って貰えるような口説き文句を考えるんだな。それじゃあ、村長の所に行ってくるからその間に考えておくんだぞ。あまり時間はないからな」
なかなか賢い奴だ。この後オーガの村に行くと言われれば、ここの方がいいかと諦めるだろうし、いかに自分をアピールするかを考えさせておけば騒ぎを起こしたりしないという訳だ。大体オーガはヒューマンを喰わないだろう。喰わないよな?
「何もできない」
「うん?」
隣に座り込んでいた女の子が泣きそうな声で呟く。
「あたし出来ることないよ。畑仕事もしたことないし」
ふむ。多分同い年くらいの子だな。手助けしておくか。
「お母さんのお手伝いは?」
「お皿の用意と後片付けくらい……」
「あと、掃除と薪拾いくらい言っとけば大丈夫だよ」
5歳くらいの子にそこまで過大な期待はしないだろう。
あたりを見渡すと、数人の大人と子供が頭を抱えてぶつぶつ呟いている。俺とこの子が最年少かな。多分安いんだろうから裕福じゃない家に買われるだろう。
「兎くらいにしておくか」
「お待たせしました。ヒューマン族奴隷の販売を始めます。買いたい奴隷がいたら値段を言って下さい。一番高い値段を付けた方にお売りします。では最初にこの子です」
商人が俺の腕を引っ張って中央に引き出す。
最初ってことは一番安いってことか。
まあ、力仕事とか無理そうだし評価は低いだろうな。
「何が出来るか言ってみな」
「薪拾いかな。運が良ければ薬草も拾ってきます。もっと運が良ければ兎を捕ってきます」
くすくすと笑い声が聞こえてきた。
なかなかうまいことを言う。嘘は言っていないな。もっと運が良ければ猪も拾ってくるかもしれんと。
好評なようで何よりだ。
本当に労働力を必要としている者は小さな子供など買わない。
よほど金がない者以外は。
「銀貨5枚」
ぼそっと呟くような声がした方を見ると、みすぼらしい格好をした一人のドワーフがいた。
「ドーガスか」
「あんな小さい子を買って何をさせるやら」
「兎を拾ってこさせるんじゃろ」
小バカにしたような笑い声が湧き上がる。多分貧乏な家なんだろうな。
奴隷を購入することで生産性を上げたいが大人の奴隷を買えるほどの金もないといったところだろう。
俺の目的に丁度いい。
「他にいませんか? ではドーガスさんに銀貨5枚でお売りします。お支払いは後でまとめてお願いします。それでは次に」
さっきの女の子が同じく銀貨5枚でドーガスに買われて、その他の奴隷達も次々に買い手がついていった。
「さて、買い手が決まったところで奴隷契約を結びますね。書類に書かれている内容を主人と奴隷両方が確認したら書類の上に片手を置いて下さい。契約魔法をかけますから。それじゃあまずドーガスさんから」
奴隷商人の促すまま書類に目を通す。
普通の5歳児がこれ読めるのか?
奴隷は生命の危険に直結しない限り命令に従うとか、主人は食事など生命維持に必要な保護を与えるとか書かれている。
さてと、茶番を始めますか。奴隷商人にとっては傍迷惑なだけだけど、これも生きるためなんだよ。
「ここ違ってるよ」
「うん?」
「僕はトランジット村の住民じゃないよ」
「え? 何を言ってるんだ」
「旅の行商人の子供だもの」
ドーガスの目つきが変わる。
「おい、どういうことだ! 戦争奴隷じゃないのか?」
「え、いやそんなはずは。お前ら、この子は村の子だよな?」
動揺した奴隷商人は自分が連れてきた奴隷たちを問い詰めるが、皆一様に首を振る。
「見たことねえ子供だな」
「そ、そんな」
「おじさんが僕を誘拐したってことだよね?」
「誘拐?」
村人の間に動揺が広がる。
「お前、誘拐した子供を俺に売りつけようとしたのか!」
ドーガスが怒りで顔を赤くする。
「いや、まさかそんな。何かの間違いです!」
さて、追い込むか。
「この村の人たちは誘拐の仲間じゃないってこと?」
「あ、当たり前だ。そんなことするものか。おい、お前どういうつもりだ! この村を巻き込んで儂らを犯罪奴隷にするつもりか!」
村長と思しき男が奴隷商人の胸ぐらをつかんで問い詰める。
「誤解です! 絶対そんなことありませんから。お前ら本当にこの子を知らないのか? 嘘をついたら酷い目にあわすぞ!」
いくら問い詰めても奴隷たちは首を振るばかり。
そりゃそうだろう、俺がこの世界に初めて現れたのはあの馬車の中なんだから。
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